第3話 図書館の地下での訓練

 階段を下りて地下一階に到着をすると、そこには看板で魔法練習所と書かれていた。愛理は練習所ってどんな感じなんだろうと想像していると、バッティングセンターのように一人ずつの場所が用意してあり、様々な用途やシチュエーションに対応が出来るようであった。


 その階層は壁が白色で、とても広い大きな部屋であった。一人ずつの部屋の広さは横長の縦十メートル横幅五メートルの部屋が十個ほどあった。愛理はその中の空いている一つに入る。すると、愛理の立った横に地面から勢いよく小型タッチパネルが出現した。それに驚いた愛理だが、そのタッチパネルには様々なシチュエーションが記されていた。愛理はその中の一つである案山子を選択した。


「どこでも見る案山子みたいね……」


 愛理が選択した案山子は、奥の壁が開いて出現した。愛理の手前一メートルで止まった案山子は、その場で何も動かずにいる。


「動かない案山子を選択したから、動かないのね」


 愛理は案山子に先ほど覚えた魔法をしようと考えていた。どれだけ危険かわからないし、実践で自分が使用できるかもわからないからである。


「よし! 始めましょうか!」


 意気込んで覚えた魔法名を口にする。


「ライトソード!」


 そう言葉を発すると、自身の右手に周囲から光が集まっているのが理解できた。しかし、数秒経過しても光が固定化しなかった。


 愛理はなぜライトソードが発動したのに剣が発現しなかったのか考えることにした。なぜ発現しなかったのか愛理はそれを考えていると、魔法を発現する時にイメージが出来ていないと思った。


「私のライトソードのイメージか……私のイメージ……」


 愛理は、ライトソードのイメージを右手から伸びる光の剣と決めた。右手首から白色の五十センチほどの長さまである剣をイメージした。すると、五回目に挑戦したところでやっと形になってきていた。愛理はもっともっとと集中するも、途中で集中力が切れてしまって集めていた光が拡散してしまう。


「はぁ……はぁ……疲れた……でも、なんとか形にはなってきた!」


 愛理はその場に座って、魔力の消耗が激しいのか辛そうにしていた。


「連続で何発もするのは身体が堪えるわ……でも、新しい魔法を使えるのは嬉しい!」


 愛理はもらった魔法書のことを考えて、より多くの魔法を覚えて使えるようにしていこうと考える。そして、数分休憩した後に再度ライトソードの修得に勤しんだ。 さらに五回ほど挑戦をしていると、やっと光の剣の形を留めることに成功をした。愛理はその場でやったと喜ぶと、目の前にいる案山子目掛けて試し切りをしてみようと考えた。


 愛理は発現したライトソードを案山子めがけて振るうと、案山子の身体を切り裂くどころか、物理的に衝突しただけであった。


「ぶつかっただけ!? 切り裂けなかった!?」


 愛理は何でなのかと思って、ライトソードを刃を恐る恐る左手の指で触ってみた。 すると、指先が切れるどころか刃が潰れていて鈍器のようであった。


「何なのこれ!? 刃が潰れてる!?」


愛理は一度魔法を解除した。魔法書を開いてライトソードの欄を見ると、光の剣と書かれていて魔法書の一ページ目に魔法は想像力と精神力が大切だと書いてあった。


「想像はしたけど、まだ光の剣を完成させる精神力が足りないのね」


 愛理は刃が潰れていた理由を突き止めたので、もう一度再挑戦することにした。愛理は意識を集中させて、剣を想像しながらライトソードと言葉を発する。すると先程とは違って光が集まる速度が速くなり、愛理は順調に行ってると感じた。


「いい感じ! いい感じ! これなら、ライトソードを完璧に扱えるようになる!」


 愛理は髪を激しく揺らしながら、歓喜しているようである。そして、ライトソードを右手に発現させると、改めて案山子を切りつける。すると、案山子の切りつけた左肩が切れた。それを見た愛理はやったと喜んで、その場で何度かジャンプをした。


「ライトソードの次はライトシールドね!」


 愛理は次は防御魔法のライトシールドを習得しようと決めた。先程と同じ要領で、自信が思うたての姿を想像していく。手盾タイプの長方盾を想像して、左手に持つ形にした。光が集まり、愛理の左手に手盾の長方盾が発現し、こちらはライトソードで苦労した経験が活きて、すぐに形になった。


「やった! こっちがすぐにできた! この盾があれば多少は戦えるようになるかな?」


 愛理はやったと笑顔で飛び跳ねていると、この階層の放送で利用時間の終了のお知らせと声が聞こえた。愛理はそろそろ自分の番が終わるのかと悲しそうな顔をするも、また来ればいいかと切り替えて地上に上がっていく。


 地上に出ると既に日が落ち始めていた。愛理は駅に向かってとりあえず今日は帰ろうと考えていた。魔力を使いすぎたし、精神的に疲労が溜まっていたからである。


「今日は充実した一日だったなぁ……新しい魔法も覚えられたし、魔法書に書かれていたこと通りだった。 なら、学校で教わっていたことは何だったんだろう……」


 愛理はそんなことを考えながら帰宅をして、奏とじゃれ合いながら晩御飯を食べて寝た。翌日には、再度図書館に赴いて魔法書を開いていた。


「今日はもっと精度よく扱えるようになろう! それに武器もどうしようか、考えないと!」


 愛理はライトソードとライトシールドの精度と発現速度の上昇を目指そうと考えていた。昨日と同じ地下の場所で、魔法書を開きながら考えていた。もし戦闘になった時に魔法の発動に集中し過ぎていて、敵に襲われていたら意味がないと考えていた。 愛理はタッチパネルを操作して、案山子の初級戦闘モードを選択した。


 初級戦闘モードでは、案山子は規則的な動きしかしないので、すぐに攻撃に慣れると書いてある。愛理はその初級の案山子の動きを避けたり防いだりしながら、ライトソードを発現していく。最初は案山子の動きについて行けずに魔法を発動することが出来なかったが、規則的な動きをしているので次第に対応出来るようになっていた。


「右! 足払い! 左フック!」


 愛理は案山子がすぐ攻撃パターンを覚えてしまっていたので、次はどんな態勢でも魔法を発動出来るように工夫をしていた。


「戦闘ではどんな態勢でも発動できるようにして、攻撃を出来るようにしよう!」


 愛理は決めると、案山子の戦闘を中級に設定し直した。中級ではスピードや攻撃の種類が増えて格闘技も使ってくるようであった。愛理は初めは何度か攻撃を受けて地面に倒れてしまうも、すぐに起き上がって案山子にライトソードを当てようと攻撃を畳み掛ける。


 腹部や頭部に打撃を受けるも、愛理は気合を入れてライトソードを案山子に振るった。すると、案山子の腹部を切り裂いて案山子の動きが止まった。


「やった! 中級をクリアした!」


 愛理が喜んでいると、奥から案山子が現れて頬を殴られた。


「終わったはずじゃないの……」


 そのまま地面に倒れて気絶をしてしまう。館内放送で利用期限が終了だとのアナウンスをしても、愛理が上がってこないので職員が何人かで愛理のもとに向かうと、地面に倒れて気絶をしている愛理を発見した。

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