考察

 よく注意して聞いてほしい。これは非常に観念的で哲学的な話だ。

 主題は美しさという概念についてである。

 果たして『美しさ』とはいったいなんなのだろう。

 この宇宙に美しさという概念を理解できる生物は人間しかいない。

 一方でその概念を的確に説明できる人間は存在しないという事実について私はたびたび想いをはせる。

 はたしてその概念を、言葉の概略を簡潔に説明できる人間はこの世に存在できるのだろうか。たったひとりでも存在できるならいまこの瞬間私の前に連れてきて、すぐさま説明してほしい。

 この世のどんな音楽家も、建築学者も、詩人も、印象派画家も、写実主義者も、超現実主義者も、自然哲学者に物理学者さえもがたったひとつの美しさという幻想を追い求める。

 ではあらためて『美しさ』とはなんだろう。

 もし人間が美しさという概念を産んだのであれば、己で生み出した概念を説明できなければおかしいのではないか。だがそれを明確に説明できる人間はいない。存在しない。

 いったい『美しさ』とはなんなのだろう。

 私は、そう人に作られた電子の知能で考える。

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