第3話 ピザ
俺は岸本泰斗。お笑い好きな24歳。最近めちゃくちゃ面白いことがあったんですよ。いやぁびっくりしたあれは。まぁ簡単に言うと、ダチのマーシーとホラーゲームしてたら、突然マーシーがビビッてる演技をし始めた。俺はなんかのドッキリだと思ったけど乗ろうかどうしようか迷ってたらなんか変な男が家に入ってきてマジで一触即発状態だった。なんかでもよく見たら、マーシーの兄貴に似てたからまたドッキリ説浮上してたけどな。でもマーシーの演技もだんだん引くほど迫真になってきたからこれはガチだと思って一応聞いてたら、なんかお互い自分の家って主張し始めてなんか面白かった。どう考えてもマーシーが住んでんだからマーシーの家じゃんって思ってたけど、なんかマーシーも最初は強気に出てたけどだんだん弱気になり始めて、マーシー曰くなんかマーシーにしかわからないような物の配置をその男が知ってるらしく、確かにマーシーが着てる寝巻を一発で寝巻って判断したのは、すげーって思ったけど俺はそんなことよりも、早く頼んでたピザが届かないかなぁなんて思ってた。
すると家のインターホンが部屋中に鳴り響いた。多分ピザ屋だとは思ったけど、一応人の家だし家主が出るのが当然だと思ったから放置してた。でもよくよく考えたら今ここの家主誰だかわかってない状態だったって思った俺は、「あのー。この家がどっちのか知らないけど、どちらかインターホン出てもらえますか?」って言ったけど全然反応しないどころか、男がマーシーの名前を尋ね始めたから仕方なしに俺がインターホン出たらやっぱりピザ屋だったから、俺がピザを受け取った。家主でもないのに。
「とりあえずピザ来たんでお宅も食べていったらどうですか?」と俺が言うと、マーシーがすごい顔で俺の腕を引き寄せた。
「お前何考えてんだよ。よくわかんないやつとピザなんか食えるかよ。」マーシーはかなり大きなひそひそ声で言った。
「でも腹減ったしだからって目の前でピザ食うなんて結構罪じゃね?」だが、マーシーは全然納得していない様子だった。
「それにもし俺らになんかするならとっくにしてるだろうし、よくわからないなら話し合うしかないっしょ?」そう言ってやっとマーシーも納得したみたいだった。
「もしよかったら、ピザでも。それでいろいろ話し合いましょ。」マーシーが俺の言葉を奪うと、男はちょっと戸惑った表情でうなずいた。
俺はとりあえず早くピザが食べたかったから、テーブルを片付けていい香りのするピザの箱をテーブルの上に乗せた。そのころマーシーは男の座る場所を作っていた。なにせマーシーの家は何にもないし客もそんなに来ないから人が一人増えるだけでだいぶ大騒ぎ案件だった。
どうにか座るところを座ると、俺はピザの箱を開けた。箱に閉じ込められていた湯気とチーズや具材、調味料の香りが絶妙に絡み合い、最高のハーモニー状態で俺の鼻に入ってきた。俺はこの瞬間の為に生きてきたとか思っていると口の中の唾液が増えた感じがした。
「もう食うよ。」俺はマーシーからの許可を得る前にピザに手を出していた。
「まず、お名前は?」マーシーはそんなことも気にせず、男に質問していた。
「平越時哉です。」男はおそるおそる答えた。するとなんか二人の間でおかしな沈黙が流れた。すると何かに気が付いたようにマーシーが平ちゃん声をかけた。
「遠慮なく食べてくださいね。じゃないと全部こいつに食われちゃうんで。」マーシーがそういうと、平ちゃんは「じゃあ、頂きます。」って言いながら緑のやつを一切れ手に取った。
「それなんだっけ?」
「お前が頼んだマルゲリータだけど?」マーシーのいつも通りの突っ込みが来ると、平ちゃんが急に笑い出した。
「仲よさそうですね。なんかお笑いのコンビみたいだし。」俺とマーシーはお互いの目を見合わせた。確かに面白いとは思うけど、マーシーの突っ込みは語彙力が乏しいんだよなぁ、なんて思っていたらなんか平ちゃんとマーシーの間でかなり話が進んでいた。
どうやら話によると、平ちゃんの家とマーシーの家の間取りどころか、家具の配置から何まで全く一緒らしく、なんなら服も散らかり方まで全く一緒なんて言うから本当に不思議な話だ。しかも、お互いフリーターっていうんだからなおさらすごいよね。
でももちろん違うところもあった。なんか平ちゃんは、本当の親に育てられていないらしい。俺はちょっとかわいそうって思っちゃったけどマーシーの話を聞くと、一概にそうとは言えないのかもな。そこに関しては、平ちゃんも黒歴史感出てなかったしな。
そんなは話をしていたら、ピザも1ホール全部なくなってたしゲームでもするかみたいな話になった。平ちゃんも歳が近いからそういう話ができるしやっぱり仲良くなるためには、ゲームは必需品だからな。でも、マーシーの家と同じインテリアなら持っているゲームも一緒のはず。そしたら俺絶対ぼろまけじゃん。俺はそんなことを思いながら三人でやるゲームを考えていた。
「これは?」マーシーはやっぱりパーティーゲームの鉄板のベルサスフロンティアを出してきた。もちろん俺は大賛成した。しかし平ちゃんは少し浮かない顔をしていた。
「どうした?こういう系嫌いな感じ?」それかまさか知らない?なんて思っていたら
「それってバルサスフロンティアのこと?」と平ちゃんが首を傾げ、難しい顔をしながら言ってきた。その問いに対して、逆に俺とマーシーが首を傾げた。
「いやベルサスフロンティアだよ。ほら。」マーシーはそう言いながら平ちゃんにゲームのパッケージを見せた。平ちゃんは不思議そうにパッケージを眺めた。
「とりあえずやってみようよ。」俺のこの一言がこの後俺の運命がどん底に落ちる瞬間でもあった。なんと平ちゃんは、ベルサスフロンティアのプロであった。俺はマーシーどころか誰にも負けたことがないのが唯一の虜だったのに。
「あの時とりあえずやってみようだなんて言わなきゃよかったな。」マーシーが笑いながら、悔しそうにしている俺にわざわざ言ってきた。
「バタフライエフェクト的に言えば他の世界では俺が勝ってる未来もあったのかな?」
「いや、少なくともやる選択肢を取った時点でお前の運命は負けの未来しかなかったな。」マーシーはなんて薄情な男なんだ。
そんなこんな話をしていたら、いい時間になってきた。
「もしよかったら今日泊まっていきます?」マーシーが少し気を使って宿泊を勧めた。
「って言っても寝る場所なんてないでしょ?」平ちゃんがそう言うとマーシーは吹き出すように笑った。
「そっか。ここの裏事情はよく知ってるのか。」確かにマーシーの家で泊まると毎回床で寝かされるから最近は俺も終電で帰るようにしていた。
「でもじゃあ今日はどこで寝るの?」
「一応宛はあるから大丈夫。それにちょっと行きたいところもあるし。」平ちゃんはそう言うと荷物を持って家を出て行った。なんか平ちゃんって誰かに似てんだよなぁ。
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