第57話 とまりません
「哀しみがとまらない」「愛が止まらない」「涙がとまらない」「どうしてどうしてあなたはわたしを泊めてくれない」の…
わたしは彼とのLINEを書いては消し、書いては打ち消し、書いては二重線で見え消しして送信することはない。居間ではありえない話をおじいちゃんがしている。
「この前、目の前の車がエンストしてるのを見たんじゃ。しかも、駐車場内でだぞ。何回も何回もエンストじゃ」
「おじいちゃん、それは最近の車はアイドリングストップ機能が着いていて…」弟は懸命に説明するがおじいちゃんは納得しない。
わたしも今ではありえない彼の言葉をずっと考え続けている。
「ぼくは一人暮らししているけど、君とはとまれない」LINEではなく、はっきりと口頭で聞いた。彼の口から。彼の部屋には何回も通っているし、食事も何回も一緒にしている。もう愛は深まっているのに…
「とまらないったら、とまならないんだ」
彼とのドライブデートの最中、彼は叫ぶ。
「そこのPボタン押してみたら?」
「どこ、どこっていうか、サイドブレーキはどこなんだ!!!」
ついに車は止まる、彼はマニュアル人間だったので、パーキングやブレーキングの革新技術を知らなかった。わたしは、やさしく説明しながら思い切りハンドル切って言ってみる。
「この車なら、とまってもいい?」
「とまれるかも」
その夜、彼とわたしはスピンした。
スピン オフ…続く
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