第28話 家人格

「なぁ イエジンカクって知ってるか?」


 イエジンか、知ってるぞ」


「違う。家に人格があるってこと」


「そんなこと あるか」


「あるんだよ。見たんだ」



僕は残業でクタクタに疲れて帰った昨晩、間違いなく見てしまった。大通りから2本横路地に入った角、漆喰塗りの外壁にアスファルトシングルのこ茶れた屋根。


「俺の見間違いか?」

何度も目を擦る。疲れがたまっているせいだろう。


3度見してやっと気付いた。違和感に。


「やっぱり、2階外壁にはめられた大きな窓枠の2つの上に間違いなく、まゆげがついている」

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それ以来、仕事中も就寝中も食事ちゅうもあれが想像したくてたまらない。


「口はおちょぼ口それともセクシーなラメ系、はたまたナチュラルプルンプルン系…ああ、また家人格を考えてしまった」


「それは典型的なHHSですね」精神科医は冷静に告げる。



帰って医学事典で調べる。「home human syndrome」


な病気ある訳ないさ」友人はうそぶく。



次の日彼も、恋人の家の家人格に悩まされることになり、友と僕はホームレスになったのは言うまでもない。そんなことイエナイ。



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