第27話 金ネェー

ある大富豪は自宅の床下配管点検口から毎夜、密かなうめき声みたいなのを聞く。

なぜ、気付くのかというと、毎朝、彼の家のトイレの配管が凍結してしまうから。

寒い冬でもないのに、気温もプラス気温なのになぜか水道が凍ってしまう。


「金ネェーーーー」


やはり点検口の奥の方から聞こえてくる。


彼は水道管を温める電熱ヒーター片手に、もう一方の手でLEDライトを声の方向に向かって照らす。


「金ねぇーーーー」



「俺はもってるぞ^」


「ねぇーーーー」


その現象は32年間も続いた。



すっかり大富豪も貧乏になってしまった。



「金ねぇ」


相変わらず、床下から聞こえる。


「働くしかねぇだろーーーー」


初めて聞いた続きだ。



勇気を出して、床下の更に奥に行ってみる。



「金ねぇーーー、金ねぇーーーー働くしかねぇだろう」



大富豪になる前の、若き日に録音したカセットテープがオートリバースで鳴り響いていた。


ラジカセ


カネカセ


セカセカ


ハタラケ

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