第17話 宇宙の果てで抱きしめたい

「抱き〆たい…」


つまらない宇宙空間ではたった1曲の癒しの音楽。何度も何度も口ずさみ、昔を懐かしむ。あの娘の輪郭が思い起こされる。果てしない追憶の日々。至極の時の連続。もうCDプレーヤーもメディアプレーヤーも壊れて聞けない。



「君を見爪めていたい♪」また、口ずさんでしまった。


無重力の空間、この世、いやこの音間で一番美しい爪を切り、君に捧げる。大気圏は突破できないが、きっと君の心の奥底に塵ばめられる爪。



「アメアガル」


小窓から宇宙雨が降っている。歩く君の姿が見える。そっと傘を差し出すが、君は濡れたまま。遂に君が傘の枝を持った時、アメはあがった。


アガッテしまったパイロットの僕は、未だにこの発射台から発車できないでいる。

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