第33夜・肩書き

「…俺は、国の様子が見たい。」

「国の様子?文化見学でもするつもりなの、?

…白の国で有名な魔生物って確か、雪山に生息するのだったわよね。」

リヒトは頷く。そして、初めに一言、ごめんと謝った。

「この際言っとこうと思ったんだけど。俺…さ、家名が“ガルシア”なんだ。リヒト・ガルシア。黙っておいていきなり言って、ごめん。」

「“ガルシア”…ってなんだ?」

「しっ、知らないのッ!?“ガルシア”は…、白の国の王族の家名よッ!!」

焦る神楽と反対に、オールはぽかんとしている。リヒトはやっぱり、と戸惑っては、二人を交互に見る。

「なーんだ!王子(?)か!王子じゃん!肩書きなだけで、リヒトはリヒトだろ?別に隠してなくてもよかったぞー?」

「えっ。」

「お前が王子だってわかったところで、まず、オレはお前を暗殺しようとしてるヤツじゃねーから、殺さないだろ?

次に、態度変えても意味ねーからな。」

「…意味?」

神楽もリヒトも首をかしげるばかりだ。

「今、オレね。金が足りてねーの。領主とかに頭下げてへこへこしてれば給料が出るってんなら、頭下げて基本はなんでもするよ。ってコト。

まぁ、それは置いておいて。

オレが街をぶらつくしがない冒険者。

カグラは旅する騎士。

リヒトは王子。

ほら、肩書きは沢山。自由だぜ!」

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