第29夜・勝利









何も見えない。

真っ白。

まず色すらもわからない。本当に白いの?今、わたくしが見ている景色は、何なの…?




「カグラ!カグラ!見えるか!!!?」


「……だれ…?」


「オールだよッ!しっかりしろよ!

リヒトっ、」


「うるさいなぁ、できる範囲だから文句言うなよ、?」


二人の声。

わたくしが手を下そうとした二人の少年。


「ほら、カグラ。取り敢えず飲め。」


そう心配そうに声を掛けてくれた後、リヒトは液体の入ったコップを差し出し、中身を飲むよう促される。

色は水と同じで、匂いも特になし。

得体の知れないモノを口にするなんて普段はしたくないけれど、

今は取り敢えず飲んだ方がいいだろう。


「……?


マズ…ッ…くない?…水だ。」


「おぉ、うまくいった。俺の魔法、【癒しの杯フェアリーズ・オアシス】だよ。普段は不味いんだけど…、

今回は【影隠しマジシャン】と合わせて使ってみたぞ。初めてだけどうまくいくとは…天才かもな。」


「身体、楽になったんじゃねーか?どうだ?

リヒトの魔法だから、すぐ効くぞ!

……………多分!」


戯け始めた二人を見て、笑顔が溢れてしまう。

そういえば……わたくし、負けたの?勝ったの?


「あぁ、因みに。お前、勝ったぞ。」


オールの言葉に安堵する気持ちが一番だけれど、御館様を心配する気持ちも少しだけ混じっている。


「安心しろ。マコト・ヤツルギは存命さ。今は気を失ってる。

次代領主兼団長はお前だけど、みんながお前を心配してるんだ。」


「それは…………わたくしの実力の不足を…、よね…。」


「違うって!オレも領民のみんなもさ、お前が弱いだなんて一度も思ったことねーぜ!

そうじゃなくてな。えーと、なんだっけ。ルキが言ってたの……」


オールが弁明しようとしているけれど、言葉が出てこないらしい。

ルキが言うならば……

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