第28夜・八剱誠

当時の八剱騎士団の団長であり、八剱領領主の一人息子。

それが誠・八剱マコト・ヤツルギだった。母親は物心つく前に他界し、横暴で自分勝手な父親の教育を受けて成長した。

父親の影響を受けてか、父親と同等かそれ以上の横暴さと理不尽さ、そして父親を凌ぐ剣術、武術、体術の腕前。引退したも同然の当時の団長は、指揮官として団長の椅子に座り続けた。出来もしない事を団員に強要し、それが失敗に終われば団員を理不尽な刑罰で裁いた。

勿論、マコトも対象となっていた。


ある日、また理不尽な要求に応えられず、いた時。

遂に嫌になっては、座って説教をした父親を正面から刺殺した。



遺体の処理から部屋の掃除まで、片付けはほぼ一人で行い、領主、及び団長の交替を、理由と共に何一つ包み隠さず公にした。

誰も批判しなかったし、賞賛もしなかった。賞賛するにはあまりにも残酷な交替の仕方だし、批判すればマコトの機嫌を損ねてしまう恐れがあるので、誰も何も言わなかった。

ただただ困った様に拍手をするだけだった。












マコトが団長となって数年。

身元不明の少女を団で引き取った。そしてその症状には【桃】という名を与えた。

そしてまた、姓を与えた。【八剱】だ。さほど年は離れていなかったが、自分の娘の様にモモを育てた。育てると同時に、彼女に恐怖を植え付けた。

少しの失敗で罵り、少しの反抗で暴力を振るった。

数年後、マコトはモモを完璧に支配した。

モモはマコトを恐れてはペコペコと頭を下げ、オドオドとマコトの機嫌を伺っては媚を売った。

正直、その態度がマコトは気に食わなかったが、従順ならそれでいいと、そう思って何もしなかった。



モモを支配してまた数年後。

身寄りのない7歳の少女を引き取った。モモと違い、名は有った。

紅坂 神楽あかさか かぐら

名を聞いた瞬間、マコトはカグラへの殺意を抱いた。何せ、カグラの家名は【紅坂】。八剱の遥か上を行く血の持ち主達だったからだ。

ただ、他の奴らも見ていたし、空気に飲まれて殺し損なった。

モモが死んで丁度、カグラも戦いに参加できる年になった。


そこからマコトの作戦は始まった。

ひたすら暴力を振るい、馬鹿、間抜け、能無しと罵る。それだけでカグラの自信は完全に削がれ、カグラの実力は半分かそれ以下まで落とされた。




今まで、そんな風にして、彼は人を踏みにじって来たのだ。

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