第22夜・走馬灯

一撃を食らった。それも、手加減されていた。それなのに、全身が痛い。

燃えるように熱い。


魔法は使っていなかった。だって、魔法道具はないし、口は動いていない。指も多分動いていない。

それな、ば何故、こんなに痛いのか、熱いのか。


「………ぁ。」





わからない。



神楽の思考は、そこに追いつくことができなかった。







「かーぐら。

また傷だらけねえ。手当てするから、こっちにおいで。」


(………姉……様…?)


神楽の脳内には、今は亡き“桃 八剱”の声が響いていた。

鍛錬や狩り、物作りに自分より年下の子たちの世話。幼き神楽が負う傷の原因がそれらだ。

桃は、神楽が


同い年の男の子と喧嘩しても、


獲物を追った先の岩にぶつかっても、


誠の命に逆らったとしても、


木の枝に引っ掛けても、


小さい子の爪で引っ掻かれても______



どんな傷を負って帰ってきても、理由を訊かずにただ、優しい声と笑顔で手当てをしてくれた。


一方で_________

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