第14夜・空へ

ひゅっ、と喉が嫌な音を奏でる。特に自分の身を脅かす危機は起きていないのに、


“本能”が、


“記憶”が、


“神楽”が、






これから起こることを酷く嫌悪している。



嫌だ


嫌だ


嫌だ


嫌だ


嫌だ








やめてくれ


もう……、

お願いだから…




【何でもするから】そう言おうとした途端、身体が宙に浮いた。


「よく頑張ったな!」

「状況は全く理解できねーけど…、なんで、なんて聞いちゃダメなんだよな。」

「荷馬車の分だって、許せよ〜」




声の主は、二人の少年だった。


二人とも、神楽が手に掛けようとした者だった。

一人には突然攻撃を仕掛けた。神楽も当時何をしたのかよくわかっていなかったが、きっと彼もよくわからなかっただろう。突然“神”の話をされた上に、命を脅かされたのだから。



もう一人は、神楽が手に掛けようとした上に大切であろう物を奪おうとした者だ。

神楽にだって大切なものはある。

家族のみんなや桃からのお下がりの髪飾り。失くしたくないものがたくさんある。それを奪おうとした。




そんな二人が、自分と、その大切な人を連れて空を飛んでいた。

いつの間にか、神楽の目からは大粒の涙が溢れていた。


「……本当に…、お人好し…っ、

わたくし……っ、あなたたちから奪おうとしたのに…!」

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