第8夜・八剱騎士団戯曲【中編】

「おやすみっつっても、さっき殺されそーになってたんだ、

眠れるかよ。オール、気を付けよう。」

「ああ、当然だ。」

おやすみ、と神楽に言っておきながら、二人は装備を外す事なく布団の上に座っていた。

「リヒト、お前は寝ててもいーぞ。子供は寝ねぇと大きくなれねぇからさ。」

「よ、余計なお世話……

!!!」

オールはからかいで言ったつもりだった。

本人の意に反してなぜか寂しそうな顔をしていたオールに気付き、リヒトは言い返すことができなかった。


“子供は寝ないと大きくなれない”


それは、オールが自分に言い聞かせるような声色で呟いた一言だ。

他に何も言ってこない辺り、恐らく無意識だろう。














一方で、神楽と誠は…

「神楽。

あの子に現れている“イラー”の侵食は?」

「…見当たりませんでした。言動や人格、目線全てに。」

「ハァ!?お前は小さな兆候でも見逃さないのが仕事だろーがぁ!

それなのにガキ一匹の侵食すら見つけられねえのか!?」

誠は感情の勢いに任せて神楽に暴言・暴力を浴びせる。

一方神楽は、無抵抗なまま、ただ殴られるだけ。ただ罵倒されるだけ。

「そして謝罪の一つもできない!

今言っても無駄だぞ〜〜!

俺が謝罪を求めたからなあ!!!

神楽ァ、お前が謝罪する時は、俺が求める前に言うんだろ!」

「………ぁ……う……」

誠の罵声に耐えかねた神楽が謝罪の代わりに土下座をする。そして、それを見た誠は、怒りを収めて溜息を吐く。

「ハァ……、もういいよ、神楽。土下座しなくていい。お前は少しの間閉じ込めておくから。出てきたらどうなるか……わかるよな?」

神楽は必死に頷き、素早く部屋へ向かう。


そして、神楽が部屋に入ったのを確認した八剱は、部屋に鍵を掛けた。しかし、神楽は抵抗どころか驚きもせず、当たり前の様に部屋の中で大人しくしている。

(わたくしが悪いのだから。御館様は悪くない。わたくしが何もできないから、ここで落ち着いて反省しなくては。反省して、できるだけ賢くなって、御機嫌を損ねないように。

早く指示を頂ける様に。)





(でも……)


部屋に入り数時間、時刻は凡そ午後11時。

神楽はふと思った。

(御館様の仰る‘作戦’は本当に正しいのかしら…?

もしもそんな事をしたら…、沢山の犠牲者が出る…。八剱騎士団集落のみんなは、わたくしの家族なのに………。御館様の家族なのに………。

家族の犠牲を許す騎士団が、普通なのかしら…?わたくしが、変なだけ?


家族______大切な人がいなくなるのが嫌だと思うのは、いけないこと………?

騎士団で叶えなくちゃいけないことは、家族よりも大切なこと?)

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