第7夜・八剱騎士団戯曲【前編】

「そう言えば、自己紹介がまだだね。

俺は八剱騎士団の団長、マコト 八剱ヤツルギ。宜しくね。君たちは?」

今までの話を大きく逸らしては微笑み、唐突に自己紹介を始めた誠は、まさに自分勝手だ。

「俺はオール。」

「オレはリヒト。」

リヒトは嫌悪感を剥き出しにして名前を名乗るも、誠の貼り付けられたような笑みは消えることなく、

「そうかい。一つ、聞いてほしいんだけど。」

とまた自分勝手に話を進める。つまり、リヒトの威嚇のようなものは効果がないようだった。

「俺たちは最初、オール、君を殺す気ではなかったんだよ。命令だって、『生け捕りにしろ』だったし。でも君が抵抗するから、仕方なかったんだ。」

「は?お前何言ってんの?オレらに攻撃仕掛けて、信じられるとでも?それに、抵抗って抵抗はしてねーだろ?」

オールは誠の話を興味がなさそうに聞いているが、リヒトはその言い訳に噛みついた。しかし、誠はそんなリヒトを無視して話続ける。

「まあまあ、聞いてくれよ。

俺たちはね、“イラー”を手の内に入れたかっただけなのさ。神楽は弱いから…軽く暴れられたら、怪我をしてしまうしね。大事な子供が怪我をするのは、親として悲しいからね。」

自分の行為を棚に上げ、誠は言い訳を並べ続ける。謝る気は毛頭ないらしい。

その言い訳から全く曇った感情モノは読み取れず、今までの行動全てに悪気がないらしいぶん、性質タチが悪い。


誠は何かを思い出したのか、はっとする。

「おっと。用事があったんだった。話はここまでね。神楽、客人を案内しろ。俺は先に行ってるから。」

そして、神楽に案内を任せ、誠はさっさとどこかへ行ってしまった。

「はい、御館様。」













巨大な集落の核とも言えるほど大きな屋敷に、二人は案内された。

「ここです、寝泊まりしてくださっても構いませんし…、一日だけ休息していってくださっても構いませんわ…。

わたくしとしては、なのですけれどね。

本日は御館様のご機嫌が宜しい様ですので……、

でも。逆鱗に触れる様な事はしないでくださいね。」

「ありがとう。

えーっと、、名前………」

オールがそう首を傾げると、神楽は遠慮がちに微笑んだ。

「神楽…。カグラ・ヤツルギよ。」

「案内ありがとな、カグラ。

また何かあれば頼むな!」

にかっとオールが笑うと、神楽は目を逸らしながら、

「貴方…、わたくし、自分から貴方のお名前は聞いていないの。

お名前を教えてくださる?」

と言った。

「あー。俺か、ごめんごめん。

俺はオール。オール・キャンベル。あのガキがリヒト。家名は知らねぇ。」

オールがそう言うと、神楽は驚く。

「え………?一緒に旅をしているのに、家名を知らないの?」

「ああ。だって俺たち、ほんの数時間前に会ったばっかだし。…さっきのクエストが初めての共闘だったし。」

当然のように言われたが、ほんの数時間前に会った相手とすぐに打ち解けて、共闘できる自信が、神楽にはなかった。

そんな自分と比べたら、オールは凄い奴だ。


信じられない、という気持ちと共に、神楽はオールへ尊敬の意を抱いた。






「あ……、話をしていたら、暗くなってしまいましたわね。つい、話し込んでしまって…。ごめんなさい。

では…、おやすみなさい。少し物音がするでしょうけれど、安心していいですわよ。」

「あ、おやすみ。」

「……オヤスミ…。」

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