第6夜・騎士集落

「…!ぉ、御館様…!」

「よしよし、神楽にはまた仕置きが必要だね。

こーんな貧相なガキも殺せないんだから。俺は“イラー”の回収を命じた。

でもお前は、器との長期戦闘をしていた。

おわかりだね?」

「………はい…。」

神楽と呼ばれたその少女は、“御館様”を前に跪く。

「君たち。」

「「…………」」

「そこの君たちだよ。俺達の集落に来ないか?

神楽の相手をしてくれたお礼に。」

男は神楽を立ち上がらせると、人の良さそうな笑顔で二人に話しかけた。「平穏」の空気を纏って。

「さっきまで俺らを殺そうとしてた奴らの集落に行けるかよ。大人じゃなくてもわかる話だ。」

警戒して男から少し距離を取るオールとリヒト。男に肩を抱かれた神楽は不安そうに顔を上げた。

「ぉ、御館、様………。わたくし、も……殺されそうになった相手に…、着いて、行くことは、できません…………。

御館様の、命に………危機が訪れるかも…、しれない、から…………。」

「馬鹿が!お前如きに心配されるほどやわじゃねーんだよ、俺は!!!!

お前みたいなクズに!指図される筋合いもねーんだよ!!!」

神楽の小さな発言をも見逃さず、男はその一言で突然怒り出した。

拳を何度も神楽に振りかざしては、神楽を八つ当たりの道具に使っている様だった。神楽も、それを受け入れたかのように黙って殴られ続けていた。

「わ、わかった!

行くから…、行くから、その子に暴力を振るうのはやめてほしい。」

何度も神楽へ振り下ろされる力にぞっとしたオールは、慌ててそう言った。横のリヒトも、慌てて首を縦に振る。

「ああ、そう?じゃあ、行こうか。自己紹介は歩きながらだね。」

その言葉を聞いた途端、男はあっさりと機嫌を良くして、さっさと神楽の手首を掴んで歩き出す。小柄な神楽の歩幅と、大柄な男の歩幅は一切一致しておらず、神楽はほぼ男に引き摺られる形で男に着いて歩き出した。

「な、なあ。その子…もう少しゆっくり歩いてやれよ…?辛そうだぞ…?」

そんな神楽を心配したリヒトが遠慮がちに男に声をかけた。

「はぁ?神楽は俺の子だよ?他人の君が、簡単に俺の子のことを決めないでくれるかな?」

“俺の子”ということを強調して、男はリヒトの提案を却下した。

“俺の子”と男は言ったが、男の子供と言うには、神楽と男の年齢は、見る限りあまり離れてはいない。そこに違和感を覚えるも、二人は言葉にせずに呑み込んだ。

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