第4夜・おとな

「おーる、?」

「リヒト、俺は此処だぜ。勇者様が来たからにはもう大丈夫!

ぜーったいに生きて返すぜ!…なんちて♪

勿論、ちゃんとあのウツボを討伐してな!」

自分より少し大きな身体に優しく包まれ、リヒトは長い間味わってこなかった優しいぬくもりを感じる。それをリヒトがオールに抱きしめられていると理解するには、少し時間がかかった。




(最後に母さんに抱きしめてもらったのは、いつだっけな…?

暖かい………)

オールと記憶の温もりを感じてより強くオールに抱き付くリヒト。

荷馬車に乗ってすぐは「おい、寄るなよガキ!!」「うるせーなお前の運転が下手なだけだろ!」などと二人して喧嘩腰でいた。人間は、自分の身に危険が迫ると、自分の事しか考えることができず、周りを蹴落としてでも生き残ろうとする。


そう、聞いてきた。


そんな場面を、何度も見てきた。

人形の様に大人しく家にいた頃にも、地位の争いなどで、大人同士の蹴落とし合いをよく見ていた。




まずは弱者から。





オールからして、この場の弱者は荷馬車を引く馬かリヒトだ。

馬は気が動転していない限りは殺す必要はない。

オールが牙を剥くのは、普通ならリヒトに向けて。




しかし、オールはリヒトを助けにきた。まだ幼いリヒトにとっては、それが不思議で仕方なかった。

「なんで………?おとな、なのに……。」

思ったままの疑問を口にすると、オールはへらっと笑った。

「大人?大人かぁ……。リヒトからしたら、俺は大人なんだな。

俺も、お前くらいの時、15歳を超えた人は…、んーや、年上の人みんな、大人に見えてたなぁ…♪

でもな、リヒト。お前もこの歳になってみろ、まだまだ子供みたいなもんさ。」

「オールも、子供なの…か………?」

オールの言葉を聞き、リヒトは眉間にしわを寄せる。国によって違いはあるものの、成人として扱われるのは、15歳からだ。リヒトにしてみれば、14歳も15歳も大人で、オールが最近成人したとしても、大人には変わりない。そのため、リヒトにはオールの言ったことが理解できなかった。

(15歳を超えているのにまだ子供……?

オールは何が言いたいんだよ…??)

「まぁまぁ、今は分からなくてもいいって。

考えなくていーよ、

いつかは、そんな事考えなくても、あの時こう言いたかったのか!!って、納得できる日が来るよ。」




キシャァァァアアーーーッッ




そんな擬音が似合う甲高い鳴き声を轟かせ、サバクウツボはその大きな尾びれを砂漠の地面に叩きつけた。また砂埃が舞うも、はじめより被害は少ない。






「さて、話はコレを狩ってからだ!!」

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