ハロウィン Lv.99
夕暮れ時の住宅街。塀に隠れた4人の子供が、こそこそと集まっていた。
その4人の服装は特徴的だ。
全身を狼の風貌に包んでいるのは、ジャック。毛むくじゃらなその衣装は、とても動きづらそうに見える。
やたら肌を露出させ、黒いバトルスーツを身に纏うはジル。見た通り、肌寒そうだ。
魔女のようなローブとジャック・オ・ランタンのマスクを被り、杖を手にしているのは、ティニー。カボチャのマスクがミステリアスな雰囲気を醸し出している。
血だらけのシャツに、いささかダメージを負いすぎたジーパンを履いたビル。4人の中で、まだ庶民性をすくい取れそうな人間だった。
「これより、TOT作戦を開始する」狼姿のジャックが淡々と言った。
「ラジャ」他の3人が短く呼応する。
ジャックは扉に近づいて、インターホンを押した。
チャイムが鳴り、そして扉が開いた。
「どちら様ですか?」半分だけ体を見せた中年の男性が恭しく尋ねた。
「トリック・オア・トリート!」4人が一斉に叫んだ。
そしてジャックが続ける。
「お菓子をくれないと……いたずらするぞ!」低く、無邪気に狼姿のジャックは唸った。
すると、男性は困ったような顔を見せ、頭を掻きながら答える。
「分かったよ。ちょっと待っててね」扉が閉じた。
しばらくして、扉が開いた。
「ほら、これあげる」男性は中腰になってジャックたちの目線の高さを揃えて言った。
ジャックはそれを受け取る。そして他の3人もそれをじっと見た。
——せんべいだった。
「男よ。菓子はこれだけかの?」魔女姿のティニーが身を乗り出して問う。
「え、あうん。ごめんね。僕お菓子はあんまり食べなくて」男は申し訳なさそうな口調で答える。
「もういいわ。イタズラしちゃいましょ。ジャック。いいわよね?」ピチピチな黒スーツを着たジルがため息交じりに言った。
「ああ。総員——
男性は、なにやら微笑ましそうな表情をしていたが、ジャックの合図の直後、その顔は文字通り真っ白になった。
「そりゃああああ!」
ビルがクリームパイを男の顔面にぶん投げたのだ。
顔面蒼白ならぬ顔面純白になった男性は「ッ!?」と驚愕した声を漏らした。
そして、その間隙も許さぬといわんばかりに素早い動作で、ジルはジャックが手にしていたせんべいを奪い取り、水切りのように男性の額めがけて投射した。
男性はパイで真っ白になった顔面に、ツノのようにせんべいを生やした。そして思わず、腰を抜かしてその場に崩れてしまう。
ジルは扉が閉じる前にドアノブをつかんで、そして回し蹴りで扉を思い切り壁にめり込ませた。
「——秘儀、『パンプキンパンチ』!」ジャックは、どこからか取り出したのよくわからないカボチャを両手で持って大ジャンプ。それを全体重を載せて勢いよく振り落とした。
「ぐはっ!」パイが直撃した顔面に、さらにカボチャがのしかかった。
カエルが潰されたような声を男性は出した。
そして最後に、魔女姿のティニーが男性に近寄り、ジャックがぶつけたカボチャを男性にかぶせた。そのカボチャもジャック・オ・ランタンで、ティニーと同じものだった。
「いたずら完了、じゃの」にっこりと笑い、ティニーはさらに開いた目の部分に、ペロペロキャンディをぶっ刺した。「うおぉぉ!」という悶絶した声がカボチャの奥から響く。
「な、なぁ……ひとつ聞いてもいいかい?」カボチャの顔をした男性は4人に尋ねた。
「なんだい?」ジャックが言った。
「どうして、お菓子がほしいのに、そんなにお菓子を僕に投げつけるんだ……」
「いたずらだからさ」
「ああ……おかしい」
※ ※ ※ ※ ※
【解説】
ちょっとオヤジギャグすぎましたかね?
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