シュヴァルリ(Chevalerie) ―姫騎士物語―
04-016.砂上の楼閣。 "A"Gruppe und "C"Gruppe, Wettbewerb im Mêlée. "zu praktizieren"
04-016.砂上の楼閣。 "A"Gruppe und "C"Gruppe, Wettbewerb im Mêlée. "zu praktizieren"
『試合開始一分前です。各競技者は用意をしてください』
学園生アナウンサーの屋外放送が流れる。
両陣営の
耳を澄ませば「UMA参上!プクスwww」「風評被害です!」と聞こえて来るのだが。
そんな状況でも競技開始のカウントダウンアラームは鳴り始める。
ラスト四秒、ピ、ピ、ピ、ポーンとスタートを告げる電子音が響く。
「さあ、はりきっていこう! ソラー!」
何とも気の抜けたネタっぽい台詞の姫騎士さん。ソラー、と皆が合いの手を入れているので完全に何かのネタであろう。
しかし、間抜けな
ティナは
クラウディア、エルフリーデが率いる二部隊は、立てる音など気にせず一気に小川を飛び越えマップ左側へ移動する。それ以降は、相手に相対して死角を造りながら直線移動する方法へ切り替えて侵攻する。その動きは森林戦を熟知している
「状況開始!」
グウィンの合図で、Bチームの面々は作戦行動に入った。
まず、ルーが合図と共にスルリと陰へ姿を消した。今回、ルーは森林移動用の特注製ブーツを履いている。靴底が柔らかくフラットなゴム製で、エッジも無く全体的に曲面で構成されている。ルーの歩法ならば走ったとしても自然に存在する音程度しか発生しない代物だ。
シルヴィア率いる
チェスター率いる
グウィン率いる
森へ消えたルーは、自分が有利に立ち回れる地点を幾つか目星を付ける。
「(おー。
そこは膝丈ほどのシダ植物が多く茂り、木の生える間隔がある程度開いている見通しの良い場所と言える。およそ隠れるには向いていないだろうと、誰もが口を揃えて否定する空間。
だがルーは、それが最適だと言ってのけた。そして、気が付けば見通しの良い筈の空間へ、その痕跡も残さず消えた。
「(思った通りです。コソコソ動きも広く出来るトコです。それに草が計算通り相手の陰になって見付からんのです)」
一見すると
「(ヤヴェエです。姫姉さまのチーム、展開が異様に早いです)」
「(クラウディアさんは当然ですが、あのエルフリーデってヒトも森の戦い方を知ってやがります。こりゃグウィン達がスタコラサッサに徹さないと総崩れになるです。まぁ、ルーがコソコソ削るのは変わらんです)」
クラウディアはカレンベルク一族であるため、
エルフリーデは所属するプロチームで森林での戦い方を学んでいる。それも世界で指折り数える
ティナが指揮官として誘った人員は、あらゆるマップに対応出来る技術を持っている前提で選んでいる。いかなる事態に直面しても憂慮の必要すらないのだ。
「‼」
ルーは潜んでいた位置から瞬間的に身体を捻り、一呼吸後には随分と離れたところに移動していた。
元いた場所には一本の矢が刺さっている。地面に接触したためホログラムが消えてゆくところであった。
「(ヒヤリハットです!
潜伏技術を一段階上げ、ルーは更に森へ溶け込んだ。
「う~ん、逃げられたっポイ的~。モリゾーやるな~」
「ウルスラ、
獲物を逃して残念顔のウルスラにエルフリーデが問いかける。行軍途中にいきなり隣で弓を射られれば、何ごとかと聞きたくなるのも仕方がないかと。
そのウルスラは辺り一面シダ植物で覆われた場所を指差し、「そこの隙間でモゾモゾしてた的~」などと
「何処に⁉ まるでそノ痕跡がナいワよ!」
ヴリティカが言うように、草木が揺れるでもなく何かが動く音がした訳でも無い。無論、気配など微塵にも感じることも無く。むしろ、人の隠れる場所があるのか疑問を口にするような地形だ。
ウルスラが指を広げて「このくらいの隙間が空いてる的なとこ~」と表すそのサイズがコイン程度の大きさとくれば、
右斜め後方でエルフリーデの部隊と段差を付けて横隊で行軍していたクラウディア達も、ウルスラが指し示した場所に人が居たなど信じられない様子である。その一人であるリゼットが唐突に声を上げた。
「え⁉ ウソ! 脚を斬られてるの!」
自らの
足元を斬るなど、通常では一度きりの伏兵である。何故ならば、伏したまま攻撃する技術を持つ
だが、最初から伏した状態で戦うことを前提にした技術ならば、攻撃後の対処も折り込まれているのは当然であろう。
それは、
だが、潜伏の他に移動速度と言うカードをエルフリーデ達六名に早い段階で
だからルーは。
その
音もなく現れる
――自身の技能を競技のルールに落とし込むこと。
それが、ルーの雇い主であるブラウンシュヴァイク=カレンベルク家から課せられた最初の仕事だ。
ここ暫くは、実戦と競技の違いに翻弄されながらもティナ達に稽古で揉まれ、身体に覚え込ませる鍛錬を繰り返した。
そして、試合の数こそ少ないが
一方、囮として川沿いを進むグウィン達の周辺は薄気味悪いほど静かであった。
「(チッ! まるで相手の気配がしねえ)」
グウィンはアーチ橋へ近付くにつれ、この橋を有効に使うことは想像以上に難しいことだと判った。もう一つの橋も思ったより粗末で、この二つの橋は難易度が非常に高くなるよう構成をされていた。
後少しでアーチ橋に届く距離まで来た時、予想外の静けさを不気味に感じる。
敵の動きが全く見えない。こちらが橋を囮に使うことを読まれたとしても静かすぎる。
しかし、幾らなんでもこの場所を完全に捨てられるのだろうかと、グウィンは首を捻る。
「グウィン……」
マリーが小声でグウィンの名を呼ぶ。そこには今の状況に対する不安が滲んでいた。
「ああ、マリー。オレ達は一杯食わされ……なっ!」
横目でマリーとアイコンタクトをとりながら、同じように小声で答えたグウィン。
しかし、視界の隅に先程まで存在しなかった影が一つ。
突然そこに現れていた。
「……っ⁉」
「っひぅ」
息を呑むグウィンとマリー。
アーチ橋の一番高い中央部分。その欄干の上に何時現れたのかティナが佇んでいる。視線をグウィン達に向けてさえもいない。
ただ、そこに居る。
――だのにアレは近付くことすら危険であると、心の奥底から警鐘が鳴り響く。
「戻るぞ、マリー」
「了解」
小声で遣り取りするグウィン達の行動は早かった。ティナが追って来ることは無いと踏み、堂々と
ティナは走り去るグウィンの姿が見えなくなると音もなく垂直に跳ね上がり、頭上に生い茂る木の中へ消えていった。
「肝が冷えたぜ……。ただ立ってるだけでコッチの動きを押さえられるたぁ思わんかった」
「……
第三試合が始まるまでの休息時間。要注意人物のお
――姫姉さまか
聞いた時には技量の差を埋めることが難しい相手だから、とグウィン達は認識していたが、言葉の意味がまるで違っていたことを痛感する。
自分が知っている
「うぉっ!」
「うそ……」
橋から少しでも早く遠のくために逃走していたグウィンとマリーは、その存在に気付く。
いや、意図的に気付かされた。
それは、ほんの瞬きの間に現れた。川の対岸に黒尽くめの
何をすることもなく、只々、瞳だけがグウィン達を追っていた。
その視線から逃れるように、グウィン達は脱兎の如く森へ逃げ込んだ。
「……冷汗が止まらねぇ。完全に見抜かれてるな」
「橋の向こう側を使う気がないのはバレてるってことね……」
「ああ。たった二人に
グウィン達Bチームは第二試合が待機時間だったことで、第一試合でAチームが森林戦をどのように戦ったのかを細かく分析して来た。
その中でも想定外の立ち回りを披露したティナと
それは、グウィンに一つの疑念を抱かせる。何せ相手は、集団戦を得意とするクラウディアとエルフリーデも抱えているのだ。先の平地マップ化した森林戦は
「
「なら、私達も早く陣のポイントに急がないと」
「ああ。移動の経路と前面はオレが見るから、後ろの警戒は頼むぜ」
逆三角形の頂点に部隊を分散させ、相互で攻撃と防御のフォローをする陣を採用したグウィンであるが、この陣形で本当に良かったのかと心の隅を
――もし、Aチームのメンバーが分析以上の動きを見せたのならば。
――察知出来ない相手二人を考慮して用意していた糊代も足りているのか。
不安材料が次から次へと持ち上がって来る。
だが、もう動き始めたのだ。今更、陣形の変更など論外であるし、むしろ最適な方法を見つけたとて、それを行使すれば後手に回るのは必須だろうと判断する。
双方のチームを比べて引き算すれば、どうしてもこちら側がマイナスになる。
現状、シルヴィアとルーがチームの攻撃リソースと言っても良い。この二人が可能な限り相手を削れるよう、場合によってはグウィン、もしくはチェスターの部隊を死に駒として隙を造ることも必要なのでは?と、グウィンはその考えを頭の隅に取っておいた。
チェスター率いる
「進軍停止」
まだ自分達の部隊はマップ三分の一ほどしか進めていない。だが、相手は既に半分を超えていることを目にした。
しかし、互いの距離を考えれば、現地点を
再びチェスターはハンドサインのみで指示を伝える。
――この場で陣形が整うまで敵をやり過ごす、と。
グウィン達が囮として後方から現れ相手が食い付けば、二部隊で後ろから虚を突き、陣形を崩せるだろう。こちらの陣形は、相手を取り囲みつつ持久戦へ持ち込むことに長けている。チェスター達は息を潜ませ、時が来るのをじっと待つ。
――だが、それは甘かった。
「なんで?」
ミーナが驚愕の混じった言葉をポツリと漏らす。その瞳は左腕から生えている矢を見つめている。
その声に前方を警戒しながら視線を向けたチェスターとスラヴェナは、自分達の居場所を捉えられていたことを知る。彼等は木立と生い茂るシダ植物の隙間――ほんの数センチも無い――から敵の様子を伺っていたのだ。まだ二十メートルは離れたところから、その隙間を縫って見付けられるなど想定外であった。
「あ!」
今度はスラヴェナが小さく声を上げる。その肩口には矢が生えていた。
「全員退避!」
チェスターが小声で即座に指示を出し、
試合開始直前にルーがこぼした「
当然、
「見つけた的~」
気の抜けた一言とは裏腹に、ウルスラは既に矢を
今回のマップでは、彼女が狩りで使う狩猟用短弓と同じ仕様だ。三十メートル先を着弾点とするように弦のテンションを調整している。
その逃走に合わせ、ほぼ平行となる右側の位置に動きがあることをクラウディアは
「二時方向にシルヴィア発見。そのまま潜伏って、ここで⁉」
「あ~、やっぱ三連射だと速度遅くなる的~。で、ソッチもかなりイヤラシイ立ち回り~」
想定外は、ウルスラの射撃に合わせて攻撃を仕掛けて来た
始まりはヴリティカの一言だった。
「ぬっ! ここで足を斬ってキますカ」
ウルスラが三射目を放つ瞬間、木立の裏側を陣取っていたヴリティカは、何処かの
そしてヴリティカの目前には何時現れたかも知られず、
その場所も厭らしい。ウルスラからの援護は、間にエルフリーデを挟んで射線が通らない位置だ。クラウディアが率いるもう一つの部隊も駆け付けるには僅かに距離がある。辿り着くまでの数瞬があれば、ルーはまた潜伏してしまうだろう。
だから、クラウディアは援護ではなく、ルーがどのように立ち回るのか、何処へ消えるのか見極めることに決めた。
まさかルーが正対するとは思っていなかったヴリティカだが、これはある意味チャンスであると判断する。
世界中から達人と称されている
現に、両脚で大地を掴むのと変わらない速度の連撃をルーに浴びせている。しかし僅かに威力と精度が落ちているのは
スルリスルリと連撃を躱していくルー。軸足が使えないことで、パタの攻撃到達距離が僅かに短くなっていることを読んでいるのだろう。
ヴリティカが秒の間に繰り出した、四度の回転する連撃は全て避けられた。五撃目は背の体軸を整え肩甲骨を下から右上に円を描くように稼働させ、螺旋の力を乗せた一撃。連撃は、この一撃を
ルーは避けなかった。
いや、むしろこの一撃を待っていたのだろう。
ヴリティカが放つ螺旋の攻撃は、ルーの
その瞬間にルーは右手の
しかし、
ルーは、
その瞬間、陰へ溶けるように再び姿を消した。
「やラれた。見事」
ティナから注意を受けていたルーの小手。ヴリティカは、たとえ受け止められても次撃が可能なように速度だけの連撃で牽制した。それをルーは、全てギリギリ当たらない距離で回避してきた。そして、本命の威力が乗った攻撃を繰り出した時、ここぞとばかりに剣を絡め捕られた。裏をかかれたヴリティカはルーを称賛すれども渋い面持ちだ。
「
「そして、まんまと逃げられたの」
クラウディアは冷静に分析するが、依然、見えない敵の脅威があることは変わらない。こちらが攻勢に出た瞬間を狙ってくる選択肢まで増やされた。しかし、ルーが小手をどのように使うのか知ることが出来た。
彼女達の部隊は、ルーの離脱タイミングを注視していたが、
「それでも
ポツリとクラウディアがこぼす。
「敵の配置ね。両翼へ並行に展開、たぶん姿が見えない
エルフリーデが捕捉する。指揮官として練度を積んでいる彼女達は、敵の僅かな動きから
「悪くないけど、正規チームじゃないって前提だとね」
クラウディアは苦笑いをしながら受け応えた。
「あー、なるほど。だから先生役なのね」
「全く。結局ティナは全試合読み切ったわね。カレンベルク本家筋はコレがあるから恐ろしいわ」
カレンベルク本家の血筋は「読む」ことに長けている。
千五百年の歴史を持つカレンベルク一族は、地方豪族だった時代から多岐にその手を広げ、国々の経済基盤へ食い込んだ。その原動力は
その本家筋のティナが、この試合を「授業」と言った。
この段になって、言葉の全貌が見えたエルフリーデとクラウディアは呆れ顔である。そして、何をすべきか彼女達は直ぐに理解するだけの経験がある。
「それじゃ、やることは決まりね」
「そうね。予定通り
「いいわね、それ。そうしましょう」
今回、戦局を大きく動かす時は、一番遠距離から包囲網を敷く
エルフリーデとクラウディアは、これからの行動指針を小声でメンバーに伝えていく。
その時、直ぐに戦術を切り替えるために。
ルーは、
それは等しく獲物であるからだ。
先程、敵陣のど真ん中に飛び込んだルーだが、それは全て計算ずくの行動であった。敵の配置と行動範囲、目的を達成するまでの時間配分、退路の確保までを組み立てた上で立ち回りをしている。だが、彼女にとっては初歩の初歩として当たり前に習い覚えた技術だ。
実戦を前提とした暗殺術に対抗する
二秒弱の攻防は、その答えが垣間見える一幕であった。
「(アブネーです。カレーのヒト、片脚だけでシルヴィア姉さんクラスの攻撃力出しやがったです。手から生えた剣で
次の攻撃ポイントを目指して地面を這うようにコソコソと移動するルー。相手の動きから二部隊で運用していることを見て取ったルーは、
「(とりあえず両方の部隊に
ルーがカサカサと擬音が付きそうな動きで、緊急避難用に確保していた退避ルートへ高速移動する。あっと言う間にその場から消え去り、移動経路の特定すら難しい位置へ潜伏した。
「あら、逃走技術はさすがですね。もう何処にいるか判らなくなりました」
木の上から姫騎士さんが呟く。ルーを補足したので射程まで移動し、今まさに上から強襲するところであった。
「そろそろ
静寂が戻る。
最初から誰も居らず、何もなかったかのように。
「おいおい、スタート位置まで戻ってきちまったぜ……」
「私達、逃げすぎ?」
――
現状、追われはしなかったが、ティナや
だが――。
その思考自体が大きなミスだと言うことに、グウィンは気が付いていなかった。
グウィン達は、味方に最速で合流するため、身を隠すのを最小限にしながら襲撃の警戒に比重を置いて移動を開始する。
何せ、開始線近くまで戻って来てしまっているのだ。視界に敵なり味方なりが入るまでは、この速度重視のペースを維持する。
「クソッ、味方が何処に潜んでるか見当たんねぇ。こりゃ陣形どころか合流も厳しいかもな」
「敵の姿も見当たらないなんて……。一体何が起こってるの……」
グウィンとマリーがマップ四分の一付近まで辿り着いた時、余りの静けさから思わず言葉を口にした。今ここで本当に試合が行われているのか、誰もが疑問を抱くほどに何の動きも見て取れない。
「(チッ、戦闘どころか人の動く気配すりゃねぇ。この雰囲気やべえんじゃねーか?)」
木立からそっと顔を出し、辺りを伺っていたグウィンがそう思った瞬間、風を斬る音を纏いながら、タンッ、と矢が隠れている木立に突き刺さった。
木立の根元にずり落ちるように姿を隠したグウィンは、足元のシダ植物を隠れ蓑に葉の隙間から辺りを伺う。突然の攻撃に、マリーも慌てて草の陰に転がり隠れている。
「(アブネェ! どこからだ? 矢の出所が割り出せねぇ。距離が掴めねぇのはキツイな)」
だが、グウィンにとってはある意味僥倖であった。飛来した矢の音はこの静けさではよく響く。仲間がグウィン達の到着に気付いてくれた可能性が高い。ならば潜伏している場所が近ければ、ハンドサインなりで居場所を伝えて来るだろう。
案の定、チェスター達の
シルヴィア率いる
両方の班はグウィン達と十数メートル離れた位置で潜伏している。これならばと、陣形の起動開始を伝えるハンドサインを送った。
グウィンは身をもって判った。チームメンバーが全方位から完全に潜んでいたのは、あの恐ろしい精度で飛来する弓の
つまり、敵にこちらの位置を掴まれている可能性が非常に高い。それは、当初予定していた潜伏からの強襲を防げると言うことだ。
そこまで有利になる
しかし、グウィンが射撃を一度貰った以降は、再び静寂に包まれ動き出す素振りすらない。
グウィンは思考を巡らすが、相手の思惑が見えてこない。只々、冷汗ばかりが流れるのであった。
だが、その膠着状態を産み出しているのはグウィン達自身が招いた結果であった。
「射程外だけど見事牽制出来た的~。リーゼントに刺さったらオモシロかった的なのに~」
「ウルスラ……。その絵面は笑えるけど、頭部狙いは一発退場貰うでしょうが。まぁ、これで相手も最後の面子が着いたって判ったでしょ」
「エルフリーデ、そっちから見てシルヴィアはどう?
「シルヴィア達の動きも無いわよ。クラウディアから見た部隊も同じってことは、指揮が
Bチームは、さすがに新入生主体のチームであるだけに欠点が多いことは
グウィン達もティナ達と同様に、チームを組んで連携や戦術を携えて参戦している。その鍛錬期間が二週間だったとは言え、試合当日にランダム編成されたチームが相手ならば問題なく戦えることは実証済みだ。しかし、予めチームを組んで戦術を練って参加して来た相手に対しては足りなかった。分散させた各部隊の応用力が欠けていたのだ。
Aチームにティナを含め指揮官が三名もいるのは、複数編成した際に各部隊を率いる指揮官へ作戦行動を任せるためだ。全体の方針さえ決まっていれば、状況により最適な行動を指揮官が導き出す。
それは、即席で組んだチームを実運用レベルへ押し上げるための答えである。
今のBチームは、指揮を
もし、クラウディア達が同じ状況に置かれたならば、膠着状態になること自体を許さない。相手に戦術を察せられたと判断した瞬間には、直ぐに戦術を切り替え部隊が有利となるように立ち回る。
「おー、
潜伏場所の自然物に空いている数センチにも満たない僅かな隙間から、三十メートル以上離れた状況を正確に索敵するウルスラ。彼女にとっては狩猟時の兎や鳥と違い、幾ら身を潜めようが人ほどの大きさならば良く目立つ部類なのだ。
ウルスラの報告で部隊が戦闘態勢に入る。
後はタイミングを待つだけだ。
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