【閑話】特別編:三人娘が武術のアレやコレやを簡単に語らせられる回 ~その1~

今回は趣向を変えて三人娘に本編では冗長になるので省略されている武術や身体運用なんかの話を紹介して貰うってカンジです。

内容的には「第0章 設定や四方山話とか」のカテゴリに入るんだけど「第1章」直後の配置になっちゃうので、その先の章のお話に関連するネタが出るのは良くないかな、と。

だから敢てこの「閑章」に放り込みます。

あ、地の文も勝手に会話に参入したりするんで要注意です。



【【はじめに】】

前フリとして本編について大前提の話です。

このお話のテーマについては「第0章」でもチョロッと書いてますが、それを補足すると「有り得るかもしれない未来」と「実在の武術をなるべく精緻に表現する」となります。

それと、私がお話を書く時の根底には「どう生きるか」と言うことを共通テーマとして据え置いてます。

だから登場人物達はそれぞれのバックボーンを持っていて、生き方の思想もみんな違います。

剣戟アクションを謳ってますので、彼女達の日常生活など余分なものと思われるかもしれません。しかし、彼女達を育むのは他愛もない日常生活です。それが戦いの場に立つ原動力だと思っています。故に彼女達を形作る日常描画にも力を入れています。

更に、「有り得るかもしれない未来」なので、多く地名や建造物、お店なども実在するものが良く登場します。

雑学盛り込んで無駄に精緻なところまで描画していますが、わざとです。

あくまで現代の延長線上にあるリアルな世界として位置付けているので、日本人のイメージするヨーロッパ世界として描いてません。

そして、武術も基本的に実在するものを取り入れています。お話の都合上、見映えの良い様に組み替えたり、捉え方を変えたり、創作などもありますが、実物からアレンジしたものです。

なので、それぞれの武術に理合が存在します。

そう言ったところを踏まえてお話を垂れ流します。



【【三人娘の武術話】】

Grüß Gottこんにちは、この物語の主人公、フロレンティーナ・フォン・ブラウンシュヴァイク=カレンベルクです。」

大家好コンニチハヨ! みんな大好きチェン 透花トゥファヨ! 今日はメタいセリフも制限なしヨ!」

「こんにちは。宇留野うるの 京姫みやこです。花花ファファ、既に台詞がメタいぞ。」

「これから武術の話をしますが、私達三人の目を通して見た武術になりますので、流派の違いや思想などから間違った話が出ることもありますので予めご了承ください。」

「その間違いは敢て訂正しないらしいぞ? いいのかな、それ…。」

「ワタシ達の認識でハナシ組み立てるからって聞いたヨ。むしろナンでも知ってた方がウソ臭いヨ。」

「見ただけで全て判る真田さん現象が起こりますからね。人生経験が足りない私達の発言である方が曖昧でごまかし易いんじゃないですか?」

「胡麻化すの前提なのか…。それもどうかと…。」


****ケース1)京姫みやこ****

「え? こんな入り方なのか? 私が最初!? 無茶振りし過ぎじゃないか?」

京姫ジンヂェンが慌てふためくリアクションを喜んでるヤツの陰謀ヨ、タブン。」

「私は生贄か…。しかし、いったい何を話せばいいんだか…。」

「まぁまぁ。とりあえず京姫みやこの流派とかを紹介すれば良いんではないですか?」

「それでいいのだろうか…。私が修めるのは『宇留野御神楽流』といって天真正新當流の流れを汲む家伝の流派だ。天真正新當流の槍術に神事を伴った技法が別で追加されていると言ったカンジかな。」

「宗教技が入ってるでいいカ? 少林拳みたいヨ?」

「うーん、ちょっと違うかな。文献は殆ど残ってないけど、祭事の技が元って一文があったよ。どうも特別な役割を拝命してたみたいだけど口伝だから正否はなんとも。」

「文献ですか?」

「そう。7世紀頃に残された書簡だけど、保存状態が悪くて殆どが虫食いなんだ…。」

宇留野うるの家は古くから続く由緒ある家系なんですね。」

「一応、1400年くらい前には神薙かんなぎとして家が興されてたらしい祭司の家系だよ。武家としての興りは700年くらい前からかな。」

「あら、ウチの家系が1500年ちょっとですから、同じくらい長く続いてるんですね。」

「二人とも。ハナシ違う方にいってるヨ?」

「あ。」「あら。」


****ケース2)花花ファファ****

「この流れは強引ヨ…。まあイイヨ。ワタシは陳家太極拳ちんかたいきょくけん新架式大架式を中心に修めてるヨ。」

「中心に、ですか?」

「違う流派も修めてるってことか?」

「そうヨ。中国武術は軸になる流派の技を補うコト、他の流派を併習するの普通ヨ。ワタシは裏の技と劈掛掌、形意拳、八卦掌、八極拳、少林拳ネ。」

「随分たくさんと修得してたんですね…。異なる技術が打ち消し合ったりしませんか?」

「相性よかたり根本的な理合が近いもの選ぶヨ。それに他の流派は必要なとこ中心ヨ。」

「それなら補うところだけ流派に取り入れた方が早いんじゃないか?」

「そう言った流派もあるけど結局、併習してるヨ。なんで取り込み違くて併習するのか師父シーフーに聞いたけど自分で答えに辿り着け言われたヨ。」

「で、辿り着けたのか?」

「うーん。難しいヨ。技の理合いが近くても思想とそこに至った経緯が違うくて混ざらないするためと思ってるヨ。」

「正解には至らず、と言ったところですか。」

「拝師した内弟子なると一般に教えない秘伝の技法教わるヨ。だから他流は併習になる考えるヨ。多分、学生には影響ないヨ。」

「学生? それはどういったものなんだ?」

「一般で教える技の練習生ヨ。月謝払って習い事くる人と同じヨ。」

「弟子と明確に区別されてるんですね。それも面白い制度です。」


****ケース3)ティナ****

「私はドイツ式武術、Waldヴァルトmenschenメンシェンの戦闘術、あとカレンベルクが伝える秘技ですね。」

「ティナは理合いの違う武術を大師ダーシーレベルで修得してるトコがオドロキヨ。」

「確かに。あの身体運用と精神丸々切り替える特技がないと修得は不可能な組み合わせなんだろうな。」

橘子みかんKampf格闘panzerung装甲のこと)着たトキのぴょんぴょんステップは截拳道ジークンドーみたいヨ。」

「ジークンドー? ブルース・リーが創設したって言う? 言われてみれば似てるような。」

「見た目だけヨ。技の理合が全く異なるヨ。アレは力出せる大地探す動きヨ。」

「あの回転を伴った歩法も類を見ないな。」

「身体を部分単位で制御してるヨ。部分単位でけい出すの同じだから予想外の動き出来るヨ。」

「いえ、技能を使う当人以外に理解されてることが怖いのですが…。まぁ、あの運用は身体構造をクリアしてないと使うと自滅しますから。」

「え”!? 純粋に鍛錬で学べる技能じゃないのか。」

「必須になるのは筋肉よりも腱の強靭さと柔軟性です。それと骨の強度。それが基準値を超えないと学んでも身体が壊れます。」

「修めても誰もが使える訳ではないんだな。」

京姫みやこの神事の技と同じですよ。修めても本当の能力を出せる方は一握りでしょう?」


****ケース4)マグダレナ****

「ここにイナイ人の話題になたヨ!」

「え、これって私達が語れることなのか?」

「…主観を話すしかないですね、これは。実際、直接戦った花花ファファが良く判ってると思いますが。」

「そうネ。マグダレナのスペイン式武術、たぶん他と違うヨ。」

「またいきなり爆弾発言だな。して、その根拠は?」

「あの棒立ちからの身体運用は中国武術に似ているヨ。」

「そうなんですか? うーん、どこが似ているか全く判らないんですが…。」

「大地の力と体重の使い方が似てるヨ。まず突きを出しながら後ろ脚で蹴って、前脚着地してから後ろ脚と前脚で剣に体重乗せてるよ。だから剣速が後から伸びるヨ。」

「へー。あの戦い辛い歩法とは別に刺突の技能も独自路線なんですね。」

「ちゃんと足から腰、背中通して力を伝達してるよ。西洋武術では珍しい運用よ。」

「今度、戦う時があったらどういったものなのか楽しみだな。」


****ケース5)小乃花このか****

「今度は小乃花このかか…。私が知っているのは、南伊賀の伊賀流で主に破壊工作とか暗殺とか計略なんかが得意な陰忍の技を持つ竊盗しのびってところかな。」

「あと、信州蕎麦でしたっけ? それに目がないと。お蕎麦の食べ方も独特でしたが。」

「あれは日本人でも食通くらいしかやらないんじゃないか? 一般に知られてない食べ方だし。」

「ワタシ! ソバ食べてナイヨ! ずるいヨ! 今度連れてけヨ!」

「子供か!」

「はいはい、良い子にしてたらみんなで行きましょうね。」

「先生か!」

「ハイ!先生! 小乃花シァォナイファの技は忍者の技カ! ドロンする?」

「先生が答えるのも勉強になりませんから京姫みやこさん、復習のつもりで答えてください。」

「回りくどい丸投げだな…。ドロンはイメージ違うぞ。投擲で気を反らせてその間に姿を消すそうだ。忍びの技と言うが、武器術、体術の他に隠形や斥候術、工作術、諜報術、暗殺術、生存術が主に組み込まれているらしい。」

「隠密とは違うんでしたっけ?」

「あっちは幕府が組織した情報収集を目的とした集団だよ。今風に言えばスパイだな。」

「忍者はスパイ違うカ? 悪徳商人を斬り捨てたりしてたヨ。」

「それはこの間見た日本の時代劇でしょう?」

「まぁ、暗殺もするからあながち間違いとは言い切れないけど、基本は下級武士だ。小乃花このかの特徴はあの隠形と精神安定化かな。普段の生活レベルで浸透しているのは凄い。」

「戦い方も隠形と身体の影に剣を隠して何時攻撃されたか判らないミステリアスな戦法ですね。」

「騎士剣と真っ向から撃ち合ったら刀は折れる確率が高いからな。だから自分の隠形も使ったヒットアンドアウェイ戦法になったんだと思う。」

「あの相手から消える技ヨ。視線のコントロールと呼吸の読みと意識の反らせ方が上手いヨ。」

「実は小乃花このかの投擲が一番厄介だよ。投擲に必要な特定のモーションを剣の動作や身体の動作にこっそり含ませて来るから。」

「予め注意してても気付いた時には手裏剣が飛んで来る、と。」

「そういうことだな。」

「お~! NINJYA健在ヨ!」

「NINJYA言うと怒られますよ…。」


****ケース6)テレージア****

「ドリル来たヨ! 派手ヨ! 黄色いヨ ! 肌色ヨ! あれパンツちがくてエロいヒモヨ!」

「真っ先に見た目の特徴でツッコミましたね。履いてない同士の京姫みやこは如何ですか。」

「正直、初めて当たった大型騎士剣相手だったけど、一般的な大型騎士剣の技を使ってなかったことが驚きだったよ。」

「そうですね。彼女、あの大剣で普通にドイツ式武術の技を使いますからね。」

「履いてないはスルーカ…。ドリルも身体運用が中国武術よりヨ。」

「あれもそうなのか?」

「ドリルは脚から腰、背中、肩、腕を連動一致させて力を取り出してるよ。けいの運用と一緒ヨ。大地掴む力も震脚並ヨ。だから筋肉モリモリじゃないヨ。」

「確かに彼女は普通よりは手脚が太い、と言うよりムッチリとエロス方向の身体つきですものね。」

「テレージアは背筋力が200kgを超えてると聞いたけど、鍛えてるにしても身体はなだらかだし腹筋も割れてないしな。」

「仙骨と広背筋、それと肩甲骨を効率よく使ってるからヨ。大地の力も上手く乗せてるヨ。」

「うーん、そうすると4kgを超える彼女の得物大剣は純粋に腕で支えてる訳ではないのか?」

「そうヨ。剣の重さ、身体通して腰で持ってるヨ。でなきゃアンなの振り回せないヨ。」

「やっぱり人間の身体運用は不思議ですね。」


****ケース7)ヘリヤ****

「まだ続くのか…。」

「ヘリヤが出てきましたから、そろそろお終いではないですか?」

「ぶっちゃけヘリヤの身体運用は参考にならないヨ。修行しても誰も真似できないヨ。」

「一応、ドイツ式武術ですよね、ヘリヤは。それも騎士剣両手剣の技を片手で扱いますし。」

三昧無我の境地の領域でも普段と変わらず対応されたしな。」

「そうですね。ゾーン状態だろうが身体のリミッターを外そうがそれを普通に上回って来ますから厄介です。」

「アレは単純に人が出せる力を超えてるヨ。身体の限界以上の力を平然と出してくるヨ。それで平気なのがもうオカシイヨ。普通は身体壊れて即入院ネ。」

「もう既に参考にならないのが良く判るな…。」

「レアとか特殊個体じゃないでしょうか、ヘリヤは。」

「なんだか話がゲームめいて来たな…。」

「あながち違う言い切れないネ。身体運用で引きだした力を潜在能力だけで軽く上回るヨ。それに身体の部分部分で力を引き出せるみたいヨ。」

「チーターです! 運営会社! すぐに調査を!」

「ほんとにゲームみたいなオチになったな…。」


****ケース8「って、もういいヨ!」

「既に私達三人よりも話の数が多くなってますし。」

「ああ、お腹一杯だよ。この話題はもういいんじゃないか。」


チッ


「ダレヨ! 舌打ちしたのは!」

「まるで漫画の枠線外から聞こえてきました!」

「どちらかと言うとページ下の欄外だな。」



【【身体運用と力の関係】】

「次のカテゴリーは身体の使い方ですか。確かに武術家には必須の話ですね。」

「そうは言っても何処から何処まで話すかだな。流派が違うとまた異なるものだし。」

「基本話せばいい思うヨ? 深い話は流れで出すか決めればいいヨ。」

「それもそうだな。じゃあ私から。『宇留野御神楽流』は、脱力と肩関節の使い方と腰を入れて姿勢を造るのが基本だな。」

「あら、私の流派も似てますね。関節は全て使いますが、腰は回すと言う表現です。」

「ワタシのトコもそうヨ。仙骨を開くのと肩甲骨の使い方と脱力ヨ。人が身体使うの研究すれば似た運用なるヨ。」


仙骨とは背骨と骨盤を支える腰の中心になる骨のことを言う。


「ナンか聞こえたヨ…。」

「無視でいいんじゃないか?」

「そうですね。所詮、欄外ですし。」

「それじゃ、京姫ジンヂェンとこの身体の使い方を語るがいいヨ。」

「何目線なのかイマイチ判らない振りですね…。」

「はぁ…。じゃあ簡単にウチの話をするよ。腰を入れると姿勢が伸びて踏み込みの力が乗るんだ。肩が柔らかく使える様になればその力が肩を通して腕に乗る。この時、脱力せずに力むと力は逃げる。」

「力の連動ですね。腰の使い方はキュッと前に出すカンジですか?」

「ああ。槍だろうが刀だろうが力で振ると威力は出ない。腰を入れないと刃先に力が乗らないんだ。」

「やっぱり、腰の使い方と力の伝達方法は共通点が多いですね。」

器使うは理合があるヨ。だから正しい形を技として伝わるヨ。」

「そういうことだな。素人に刀を振らすと、刃筋の立て方を知らないのと、腕の力で振ってしまうから刀を曲げたり折ったりするんだ。」


刀の構造は「刃から峰」へ垂直方向に強度がある。「峰から刃」ではないことに注意。玉鋼の心鉄芯がねが炭素含有量が低い鉄であるため柔らかく衝撃を吸収するが、それを覆う皮鉄かわがねは炭素が多い鋳鉄なので遡行性が低く、硬いが脆い。

刃の反りが形成される際に皮鉄かわがね部分が湾曲して引っ張られ、更に刃を付けるため砥ぐ。非常に鋭利だが、金属同士で撃ち合えばすぐに刃は欠け、力の加わり方次第では折れる。

刀身の長さが長い程、下手な扱いをすれば梃子の力が大きく働いて直ぐ折れる。


「また勝手に入ってきましたね…。」

「ティナの身体運用もオモシロイヨ。身体の部品単位でけいだせる普通ないヨ。」

「部品って…。花花ファファ、その表現はどうかと思うぞ?」

「気にしない気にしないヨ。ティナは関節とそこに繋がる筋肉の回転で局所的に力の連動一致させてるヨ。だから大地の力使わなくても重心変えてある程度の力産むヨ。」

「あっていますが、そこまで分析されるとは思いませんでした…。」

「指でも同じこと出来ると見てるヨ。橘子みかんKampf格闘panzerung装甲)と青ピカリ(Mithril聖銀 Rüstung装甲)は手甲ガントレット違くて革手袋ヨ。指とてのひら使う技持ってるヨ、絶対。」

「いえ、ホント、そこまで分析されるとは思いませんでした!」

「6月祭で回転の技受けたから良く判たヨ。」

「…あれで判るものなのか?」

「中国武術深く学ぶは研究大事ヨ。他の流派が身体運用どうしてるか分析するヨ。ただ手を添えられただけで斃す技とかあるから身体の使い方良く見るヨ。」

「手を添えるって寸勁すんけいでしたっけ? 前にスイカを爆散させた技は。」

寸勁すんけいあてるけど、あれと違うヨ。ワタシの発勁はっけい、普通の人使えない技よ。」

「じゃあ、普通に接触から斃せる技があるんだな…。そもそもけいってどういう原理なんだ?」

「一番簡単なのは身体の動き一致させて大地の力と自分の体重を触れてるところから伝えるヨ。」

「体重を伝える、ですか? んー、あ!そう言うことですか。重心移動で重さを伝えるんですね。」

「そうヨ。たとえば相手に手を当ながら仙骨と背中と肩甲骨を一致させるヨ。重心移動で脚から大地の反発を拾って一気に手の先に通すヨ。だから体重と同じ打撃が瞬間的に伝播するヨ。」

「6月祭で最期に花花ファファから受けたゼロ距離の技、花花ファファの体重と比べられない打撃が来たんですが…。」

「あれは震脚で大地の反発をたくさん取り入れたネ。ホンとならエロスーツ着てても吹き飛ぶヨ。その威力消したティナがオカシイヨ。」


ウルスラ命名「エロスーツ」。ティナが伝手で手に入れた軍用の衝撃吸収インナー。厚さ2mmで伸ばす様に着用し肌に密着するため、身体のラインがそのまま浮き出る。胸の突起なども良く判るため、日本などではスレのコメントが伸びた。


「エロスーツって…。日本人って…。しかし、手を添えた状態から吹き飛ばす程の威力が出せるのか。まるで体当たりだな。」

「それ間違てないヨ。中国拳法、手技でも体重乗せてるから体当たりと同じ理合が多いヨ。」

「ゼロ距離で体当たりか。純粋に筋力依存じゃないところも怖いな。」

「筋肉は套路タオルーの鍛錬で理合に合わせた必要な分が自然と付くヨ。多過ぎても良くないヨ。」

「ウチもそんなカンジですね。腕立て伏せとか腹筋とかは、下手すると技の運用を邪魔する筋力がついてバランス崩れますから。」

「そう言えば私も走り込みはするけど一般的な身体を鍛える方法は一切しないな。」

「トレーニングルームも基礎が足りない初心者のや、ボディラインを調整するエイルくらいしか使ってませんものね。」

「筋肉あると力は出るけど、造った筋肉だとそれが適切に理合で運用に組み込めるか大事ヨ。」

「テレージアがいい例ですね。4kgを超える得物大剣柄頭ポメルだけ掴んで巻きを弾く突きを出すなんて力業だけでは叶いませんから。」

「ウェイトトレーニングもしてないって言ってたな。身体運用で最適化してるにしても、あの重量物を片手で扱う膂力は脅威だな。」

「そうネ。筋力込みで身体運用を最適化してるからドリルは実際手強いヨ。ティナみたいに技で流すか避けるかが安全ヨ。」

「じゃあ纏めますけど、筋肉で出す物理的な力と、身体運用で出す連動した力は根本的に違うものであると言う結論で良いですか?」

「そうネ。あとは、その身体を運用するための理合をしっかり理解して身に着けることヨ。」

「まぁ、筋力云々の前にスタミナをつけるために走り込みくらいは必要と言えるかな。」

「そんなカンジヨ。」

「で。今までの話からけいは何時でも発動されていると判断しましたが、花花ファファの組手で禁止しているけいは、理合が全く違う認識で良いですか?」

「それでいいヨ。」

「あー、スイカ爆散させたヤツか。」

「前に花花ファファがハルに教えている初歩の鍛錬方法を習いましたが、普通に練習するだけでは何も効果が出せない、と言うより理合いが身に着かないと判りました。」

「アレは天然の纏絲てんし持ちでなければ出来ない基礎ヨ。通常、学生が習う套路タオルーと本質が全く違うヨ。」

「なるほど。技を使える身体がないとダメだと感じたのはそのせいですね。」

「完成すると体内で循環させた纏絲てんしけいを触れるだけでけいで流し込めるヨ。その時は身体一致も必要ないヨ。触れればいいだけヨ。」

「触れてからの体当たりでもないのか?」

「理合が根本から違うよ。人間は7割くらい水分よ。身体の中で練った纏絲てんしの波を伝えるだけヨ。だから水分を伝播して中から全身を破壊するヨ。」

「思ったより危険な技でした! やっぱり組手でけいは禁止です! いえ、人間を壊すレベルの発勁はっけいは禁止です!」

発勁はっけいの受け方教えるヨ?」

「いやいや、それでもだめだろう。多分花花ファファ発勁はっけいはそれも打ち破りそうだ…。」

「…まー、防がれても結構な割合が入ってくヨ。でも暫く病院暮らしで済むヨ!」

「それ、普通に考えて重傷じゃありませんか?」

「呼吸法の身体操作と気の巡らせ方覚えれば、もうチョット入院短くなるヨ!」

「どの道、重傷なのは変わりないんだな…。」


お話で冗長だからティナと花花ファファの組手では省略されている技能が沢山ある。


「これはソコを語れと言うことですか…。」

「とうとう指示が来るようになったな。」

「こういう場でないと出ないハナシだからヨ…。」

「はぁ~。仕方ないですね。」

「実際、二人が組手をする時は見せて貰ったことがある技が殆ど出なかったな。」

「実戦形式ですから技を型通り出せることの方が稀ですよ。」

「そうヨ。身体が覚えた理合で遣り合えば、それがイコール技使てる言ってイイヨ。」

「剣技も同じですよね。京姫みやこだって型通りに技を出せることは少ないんじゃないですか?」

「確かに。型の技を使おうとする場合は大抵、決め技にはならないな。」

「相手は当然、技極めさせないように立ち回るヨ。だから普通は技覚えてから変化と応用を教わるヨ。」

「…二人はその変化と応用も使ってないんだろう?」

「ええ。流派の理合で身体を動かしてますから同じ効果を得る場合でも都度、出し方が異なりますので。」

「さっき言った通りヨ。型の通りならなくても、その理合で動くことが大事ヨ。だからナンの技出したとか言えないヨ。見て判る技出す時は大抵、観客サービスヨ。」

「そういえばティナはドイツ式武術の剣技は型通り使うな。」

Chevalerieシュヴァルリ競技ですから競技の技術を使ったまでです。」

「あれでだまされたヨ。Chevalerieシュヴァルリは競技の技使わないといけない思たヨ…。」

「ドイツ式武術は競技の技か…。しかし実戦で使われてた技だろう?」

「一度、失伝して文献から復古されたものですから。文献自体も基本を知っている前提の玄人向けなので、本来の身体操作部分が抜けていることが多いんですよ。」

「技だけなぞるから競技いうわけネ。」

「技から理合は見えてきますが、それでもその技に至った意味合いや、それを行うための身体操作術が足りないと思うことがありますから。」

「だから割り切って使うと言う訳か。あれ? さっき花花ファファがテレージアは身体操作してるって言ってなかったか?」

「彼女、家伝の技を継いでますけど当時の理合から大剣を扱う様にドイツ式武術から改良されたものだと思いますよ? だからその理合は根本から異なってるんじゃないかと。大剣で騎士剣や片手剣の運用してますし。」

「そうネ。タブン、独自の理合に至ってるヨ。足の裏大地につけたまま震脚してるような動きも身体運用練った結果ヨ。」

「震脚の動きもしてるのか。よく判るな…。」

「脚の使い方は流派の基本だから良くわかるヨ。他で判りやすいは脚から腰に力伝えてる時に腰がキュッと締まってるヨ。あれで内けいが強化するネ。」

「彼女の大剣は同じ振りなのに威力が変わると聞いたことがあるが、その辺りが秘密っぽいな。」

「身体運用が理解出来ればけいはいつでも生み出せるヨ。極端に言うと動きをエネルギーに変えるからチョット動くだけでもけいだせるヨ。」

「へー、おもしろいですね。」

「チョットやって見せようカ?」

「え!? 今日は組手をしませんよ? そんな準備もしてないですし、めんどくさいですし。」

「あれ? いつの間にか指示された内容と違う話になってないか?」

「知ったことナイヨ。」

「従う理由はないですし。」

「それもそうか。」


オイ


「そうネ、ちょっとコレ見るヨ。」

「それは花花ファファが試合でも良く見せる開始の型ですか。」

「確か、預備式と起式と言ったか。」

キョーツケー気を付けから左脚を開くが預備式ユーベイシーヨ。じゃあもう一回やるからワタシの左脚が開かないように二人でしっかりつかむヨ。」

「はい、これでいいですか?」

「何か二人で脚に抱き着いてるみたいだな。」

「しっかり力いれてヨ。じゃ、やるヨ~。」

「うわ!」

「ファッ!」

 ゴロン ゴロン

「あはは、二人ともコロンて! オモシロイヨ~。」

「何ですかコレ!? 全く押えられませんでした!」

「ちょっと待ってくれ! 二人とも弾き飛ばされたぞ!?」

「これがけいヨ。右脚から大地の力踏み上げてけい発生させるヨ。その力、仙骨を少し回して左脚開く力に通すのが基本ヨ。」

「これは驚きです。今までもこんな力が発生してたんですね。」

「型を始める前の姿勢にもしっかり機能が含まれてるんだな。」

「そうヨ。套路タオルー(型稽古)はけい力の発生と運用、呼吸法に気の練り方、重心移動や身体操作の総合鍛錬ヨ。全ての型に意味があるヨ。」

花花ファファは全く力を入れてるカンジがしませんでしたね。」

「突然、重さがかかって押し出されたみたいだった。」

「だって二人が相手したの大地ヨ。ワタシ脱力してその力伝えただけヨ。」

けい、恐るべしです。」


肩甲骨の使い方とは如何なるものか。身体の動きを見るため、三人娘は下着一枚の姿になった。


「ちょっと! どういうことですか! いきなり服が消えてるんですが!」

「みんなパンツ一丁になたヨ…。OH…ファンタジー…ヨ。」

「胸、隠せないんだが!? 腕が上がらないんだが!? どうなってるんだ!」

「…このまま進めろと…。ちょっと花花ファファ、人の胸でナニやってるんですか。」

「おー。下から持つと重いヨ。弾力がテインテインヨ。京姫ジンヂェンもやって見るイイヨ!」

「全く。…どれどれ。あ、これは凄い。中身が詰まってる感がある! 張りがパッツンってなってる!」

「二人ともいい加減にしてください。さっさと終わらせないと何時までもパンツ一枚のままですよ?」

「ああ、確かに。早く終わらせるに越したことはないな。」

「ん? 別にダレもいないからこのままでも構わないヨ?」

「そこは乙女として構うところですって…。」

「で、肩甲骨の使い方? どう見せればいいんだ?」

「肩甲骨を回すとか? 武術をやっていない方は肩甲骨周りの筋肉が固くって殆ど動かないらしいですよ。」

「そうなのか? どのくらい動かないか感覚が判らんな。」

「ソンなコト言いながら二人とも肩甲骨回してるヨ。やぱり可動範囲広いヨ~。」

「まぁ、動かすくらいしか出来ませんから。画像でお見せ出来ないですしね。」

「武器があれば、それを振ると背中がどう動くか説明出来たかもしれないけどな。」

「みんなパンツしかないから仕方ないヨ。いっそ、パンツ振るカ?」

「その絵面はどうかと…。」

「成人指定になりそうだ…。」

「んー、じゃあナニするかネ。…そうヨ! ワタシ、肩甲骨でペットボトル挟めるよ!」

「またニッチなところを持って来ましたね。」

「500mlのペットボトルが床に瞬間移動して来たぞ…。」

「細かいことは気にシナイ!ヨ。ホラ、こうやって挟むヨ。」

「いや、何ですかソレ。放り投げて背中で挟んで受け止めるって。一発芸じゃないですか…。」

「背中の羽根で挟んでるとか言われそうだな。言葉尻は綺麗だけど実態は盛り上がった肩甲骨が手で挟んでるみたいだ。」

「このままコンなこと出来るヨ。」

「うわ~、挟んだまま俯せに倒れますか。」

「凄いな。バッタリ倒れたのに柔らかく着地したぞ。」

「まだまだヨ~。ワタシ、肩甲骨でペットボトル潰せるヨ。ホラ!」

 バシュン ドパッ

「ちょっ、花花ファファ! いきなりやらないでください! みんな水浸しになったじゃないですか。」

「ペットボトルのキャップが見たことない速度で飛んでったぞ。」

「水も滴るイイ女、ヨ!」

「まったくもう。裸じゃなかったら被害が大変でした。」

「確かに。しかし、ペットボトルの姿が無残だな。」

「車に轢かれたみたいにグシャグシャですね。」

「肩甲骨の使い方見たい言われたからけい力込めたヨ。」

「だから水がペットボトルの口から爆散したみたいに弾けたのか…。」

「肩からもけいが出せるんですね…。」

「そうヨ。身体のどこからでもけいは放てるヨ。」

「それでこの威力になったのか。とんでもない身体運用だな。」

京姫ジンヂェン…。パンツ濡れてオモラシみたいヨ。」

「いろいろ台無しだよ!」

「あっ! タオルが出てきました。」

「その気遣い出来るなら服を戻して欲しい…。」

「無理でしょうね。」

「無理だと思うヨ。」

「無理だろうな…。」


服は着たら脱ぐところまでがワンセットだ。


「…。」

「…。」

「…。」


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