03-025.夢見た景色を望むのであれば両の脚で歩み続けねばならない。そして、その歩みに意味があることを知らねば辿り着くことはない。 Unterrichtung.

 脇を締めコンパクトに最短距離をなぞり、腰を乗せない左ジャブの連打が上へ下へと軌道を変えて降り注ぐ。

 まだ幼さが顔に残る少年は、身長186cm、体重145kgのスーパーヘビー級とも言える体躯を持ち、その大きな身体からは信じられない程の速度があるジャブは、それだけで常人を打ち倒すのに事足りる威力を持つ。その剛腕の半分にも満たないであろう細腕で、それが当たり前である様に止め、受け流し、絡め捕るのは、150cm半ば程の身長しかない少女。

 ティナと武徠ぶらいは、足を止めて互いの殺傷圏でをしている。


 ティナは、武徠ぶらいを簡単に転ばして以降、彼が今現在どこまでの技を使えるのか確認するため、受けをメインにし、好きな様に攻撃をさせている。その結果、打撃技を主体で攻める武徠ぶらいの連撃を捌き、どの様な技術でどの様に組み立てているのか冷静に観察しているティナである。


 攻撃が当たらないどころか、威力を相殺され、且つ全て綺麗に流され、時には攻撃の途中で封じられるなど、実際に戦うことで一枚も二枚も格が上である相手だと体感した武徠ぶらいは、既に遠慮をしていた顔面への攻撃も折り込み始めていた。どの道、躱されるならば、本来の自分が戦う姿を出すことがベストであると判断したのだ。


 この戦いを観戦している八重垣やえがき部屋の力士達は、息を飲んで目の前で繰り広げられる攻防に見入っている。身長差は30cmはあり、体格も倍以上差がある。そんな二人が足を止めて互角に打ち合っているのだ。正確にはティナが打たせているのだが。

 相撲の取り組みでも、小兵力士が体格差の開きが大きい相手に当たることもある。しかし、小兵力士と言えども体重は100kg前後ある。だから立ち合いで当たり負けすることはなく、相撲が成り立つのだ。だが、今戦っている二人の体格差は全く意味が異なる。一人は関取とも互角に戦える立派な体格を持っているが、その相手をしているのは筋肉量など比べるべくもない程少なく、片手で持ち上げられる軽さの少女なのだ。それなのに互角以上に渡り合えるのは、純粋に技量のみで対処している証である。力士達は、技と言うものの奥深さに認識を新たにする。純粋に力だけでは勝てない相手が存在するのだと。初めに彼女が意とも容易く武徠ぶらいを転がす姿に衝撃を受けたればこそ、湧き上がった思いだ。


「(やはり、初手が計算通りに仕掛けられたのが功を奏してますね。周りの方々の観点が変わってくれたようです。)」


 ティナは「自分の武術を披露する」、そう言った手前、見る側に何かを残せないと嘘になる。だからこそ、観客となった力士達が普段では見ることの出来ないもの、それも工夫すれば応用が効きそうな技術を見せたのだ。向上心ある者ならば、この経験から自分の武に広がりを求める様に探求心を掻き立てる受け技を出している。もちろん、関節を個別に回転を掛け体幹でコントロールする、フィンスターニスエリシゥム鏖殺おうさつ術の奧伝を使って威力を底上げしているが、受け流しパリングなど、攻撃の方向を変える様な技術は大抵の武術に存在する防御の基本技と言っても良い。特に、ボクシングは最短距離の軌道で攻撃を繰り出すため、横からの力に非常に弱いと言う特徴を考慮した上で見て判る様な受け技主体に組み立てているのである。


「(とりあえず、目的のひとつは果たしました。さて、後はこちらですか。自分で気付いてくれると良いんですが難しいでしょうね…。)」


 認識と言うものは厄介で、一度覚えたことは時間が経てば経つ程、意識下の中に固着してしまう。それは日常の一部として溶け込んでしまう。そうなった場合、自分で気付くことは難しい。何故なら、既に意識することがない事項であるからだ。



 ――おもしろいほど当たらない。

 武徠ぶらいに去来するのは畏敬の念である。たとえ牽制の意味も含んだジャブであっても、それなりの威力を誇る攻撃だ。スウェーやダッキングで躱されのではなく、真っ向から封じられるのである。簡単に威力を削がれ、見たことのない技で腕が巻かれる様に弾かれる。タイミングをずらしたとて、そう在るのが当然と言わんばかりに問題なく捌かれる。


 自分に同じことが出来るであろうか。


 ――否である。

 それだけ隔絶された技量を見せつけられている。だが、焦る必要はない。いずれそこまで辿り着けば良いだけだ。

 今は一挙手一投足、見逃してはならない。まばたきすら惜しい。彼女はまばたきの間に行動が起こせるのだ。


 最初にティナから開示されたのは速度と技。だから、追いていかれず速度に対応出来る技として武徠ぶらいはボクシングを選んだ。

 ボクシングの拳技で、ジャブは牽制の他に相手を崩すための一手である。ボクサー同士では相手もジャブを使えるため、拳の繰り出しと同じ速度で戻し、即座に防御を行い隙を減らす挙動が含まれる。そして、相手に隙が出来た時に威力のある拳をジャブを行っている反対側の腕から放つのだ。


 タイミングを見計らい右のストレートを繰り出す。


 ――その技を出すことすらティナにコントロールされているのを判りながら――


 力の乗った拳が当たと思われた瞬間にはティナの左肩の上を通過していた。もし、当たれば一撃で沈めれる威力を持っていたことだろう。しかし、ティナは瞬きもせず体幹による数センチの移動で拳をやり過ごす。

 背筋が凍ったのは武徠ぶらいの方だった。避けられるだろうとは思っていた。しかし。伸ばした腕が

 武徠ぶらいの腕は伸び切ったところで二の腕を掴まれていた。そして、腕の外側から肘関節を巻き込みながら螺旋の様にティナの腕が絡まり、その手は胸板に触れる位置まで来ている。もし、道着や上着を着ていたら、そこを掴まれてのだろう。


 今の状況は、ティナの首を支点に肘の関節を極められているのだ。力を入れれば折れる直前で止められているのである。

 あの攻防の最中さなか、微細なコントロールをしてのけたことに驚けば良いのか、打撃の立ち合いで関節技を仕掛けられる技量に驚けば良いのか武徠ぶらい一体如何程のものか思考を巡らす。しかし彼は、思考すべき点が違っていることに気付いていない。


「三つ目。? いつまで様子見をしているんですか? それとも何もしないまま終わるつもりですか?」


 腕の拘束を外し、双方の射程外まで離れるティナ。その真剣な目は問いかけの回答を待っている。


 喉元まで出かけた声を押し込めた武徠ぶらい。確かに、相手の速度と技に対してボクシングの技を用いることで速度が如何程か、或いは封殺出来るか様子を見た。結果、こちらの攻撃は全て防がれ、その気になれば反撃を容易くされてしまう事実を突き付けられた。

 何かがおかしい。格上の相手が態々わざわざ問うてくる意味は何なのだろうか。判っているだろうと言う言葉の掛かる部位が違うのではないか。よぎる疑念が解決されないまま言葉が出ずにティナを見つめるだけになった。

 武徠ぶらい自身は気付いていなかったが、その表情に色濃く浮き出ているのは困惑。それを見たティナは、何かに気付いたが、それが何かはまだ判っていないのであろうと判断する。


「んー、そうですね。それでは、こちらからしますよ?」


 そう言いながらティナは武徠ぶらいと拳で撃ち合いをした距離にそのまま詰めて来る。疑念があれども、戦いに身を置く武徠ぶらいは、すぐさま臨戦態勢に入った。

 その瞬間、ティナは両の拳を軽く握り、手の甲を相手に向ける様にこめかみ辺りで構える。ボクシングで言うところのピーカーブースタイルである。そして、トントン、と軽く跳ねる様なフットワークを使いだした。ボクサーの歩法に似ているが、森の民――Waldヴァルトmenschenメンシェン――が起伏の激しい森林深くで小刻みに足場を確保しながら安定した攻防を行うために編み出された歩法である。


 上下動がなく左右にティナの頭が揺れた瞬間、左のジャブが連撃で放たれた。さすがに武徠ぶらいも即座に反応し受け流しパリングを行うが、その時にはティナから右のジャブが2連発放たれる。受け流しパリングの2発目。引き戻される筈であった拳の位置でティナがピーカーブーの構えになった様に見えた。その瞬間、左肘が武徠ぶらいの顎を掠め、脳を揺らされ崩れ落ちる。ティナは2発目のジャブと一緒に身体を捻じ込んできていたのだった。


 まだ脚の動作が回復せずに、立膝から身体が起こせない武徠ぶらいに向かってティナは淡々と語り出す。


「これで四つ目です、武徠ぶらいさん。ここまでで四回、致命的な攻撃を受けたことになります。」

「稽古の様子から複数の身体運用が見れました。少なくない数の武術をかなりのレベルまで鍛錬しているんではないですか? ならば、あなたの強みは複数の武術を使えることですよね?」

「私はと言ったんですよ? 少なくとも私の攻撃は目で追えてますよね?」


 武徠ぶらいは最初にを突いた攻撃以外、ティナの技は目で追うことが出来ている。高速に回り込まれた時は、身体の反応が追い付かなかったがティナの移動位置もしっかり把握はしていた。

 今のジャブによる攻撃も受け流しパリングしており、打ち合いは対応出来ていた。


「なのに、に固執するんですか?」


 やっと身体の制御を取り戻し、立ち上がった武徠ぶらいの眉がピクリと動く。


「腕を極められた時、手首より先は自由でしたよね? なぜ私の髪を掴むなり、襟を引くなりしないのですか?」

「いや、さすがにそれは反則だろう。ボクシングで掴む行為は禁止されてるもんだ。」

「ボクシングではないのに? この戦いでルールなんて決めてないのに?」


 そう言われて武徠ぶらいも、はたと気が付いた。一番最初に攻撃を貰った際に出した技は、抑え込みとバックハンド(捕まえに行く手技)は西洋古式のマーシャルアーツ。そして今はボクシング。そもそも、どの武術を使うなどの決め事などはなかったのだ。だが、用いた武術は一区切りが着くまで切り替えてはいない。


「判りました? 武徠ぶらいさんの欠点は、まず複数の武術を使えるのに状況に合わせた組み合わせが出来ていないこと。」


 手を前に出し、指折り数えるティナ。


「そしてもうひとつは、使っている武術に引きずられて切り替えが出来ないこと。」


 その答えはティナがここまでの中で体現している。立ち技の打ち合いで関節を極め、ボクシングの技術を模倣しながら肘打ちを出したのだ。

 状況により最善の手を使うのは当然であろう。上を目指すならば、むしろ必然とも言える。しかし、使えるカードを使うべき時に切れるかは、その者に依存する。

 ティナの様に、世界を見据えて戦う騎士シュヴァリエならば必ずと言っていい程、他流と戦う術を持っている。対峙する相手に合わせて持っているカードの組み立てを替えることを普通に行う。それは騎士シュヴァリエの剣技に限った話ではない。


「だからせっかくの長所を殺すことになってます。」

「そうか…。オレは気付かない内に自分で戦いの幅を狭めていたのか。」

「それが判ったのなら後は鍛錬するだけです。進むべき道が見えたなら後は進むだけでしょう?」


 頭では理解しても、長年染みついた習慣は中々変わらない様に、武徠ぶらいの技術がこなれるのは当分先の話であろう。少なくとも1年、2年単位はかかると容易に想像できる。何せ、今までの常識を覆す訳だからだ。


「と、言う訳で。今度こそ本気を出してくださいね。」

「オレは本気で戦っていたぞ?」

「私への頭部攻撃ですか? それは受けられる、と安心してたから出した技ですよね。」


 ――どうせ当たらない――

 その思いがあったからこそ、いつも通りに技を繰りだした。そこを見抜かれていたのはある意味当然のことだろう。ティナが受けに徹し、攻撃をさせていたのだから。


「稽古の時、たびたび殺気が漏れてましたよね? そちらが本当の武徠ぶらいさんでしょう?」


 明らかに武徠ぶらいの表情が険しくなる。

 自身の本質、武術を武術が持つ意味通りに扱うこと。つまり、相手をたおすための技を奮うことを厭わず、身命を賭すことも辞さない。

 平和な時代では理解されない、牙を砥ぎ戦いに赴く者が持つ矜持。

 それを見せろと少女が言った。

 それを使えと少女が言った。


「遠慮がいらないことは証明しましたよ?」


 畳敷きの縁台から二人の戦いを見ていた黒将灘親方も、ティナの言葉を聞いて声を上げようとする。

 が、マルレーネに遮られる。


「へーきへーき。ティナのこと、単なるChevalerieシュヴァルリ競技が強いだなんて思ってたら大間違いだよ。伊達にカレンベルクは1500年も続いてないって。」

「しかし…、危険じゃないのかい? 武徠ぶらいのアレは稽古なんかで出すものじゃない。」

「危険なんてナイナイ。ホラ、彼氏はやる気になってるみたいだし。息子がこれから経験することを終わるまで見てやるってーのも親の務めじゃない?」


 渋々ではあるが、マルレーネの言葉に従うことにした黒将灘親方。そもそも護衛であるクラーラ達が全く意に介してない時点で問題が無いと言えるだろう。彼女達はこれから戦うのが何者であるか知っているから。


 不意に生み出された空白の時間。

 周りを見渡せば、人々の胸中に様々な思いが過ぎっていることが伺える表情が垣間見える。不安、期待、それと恐怖。これから始まるであろう、稽古ではない戦いを予感し息を飲む。


「はは、ははははっ! やっぱり、おもしれぇなぁ。オレじゃあ届かないかも知れんがな!」


 楽し気な言葉とは裏腹に、武徠ぶらいの気配が一気に膨らむ。空気が張り詰め、痛みを感じるかの如く鋭利となる。

 観戦していた力士達も他者が恐怖させる鋭く尖った殺気を浴びて静まり返る。本気になった、と誰かが呟いた。

 そして、武徠ぶらいは一人、わらう。

 獣が獲物を前にした笑みで。


「んじゃあ、オレの全部、受け止めてもらうぜ。」


 たがを外した人間の速度。まるで瞬歩を使った様に一瞬でティナを射程圏に捉え、左の下段蹴りが繰り出される。脚を叩き折るため、上から下に軌跡を通す威力を逃させない脛への蹴り。

 その鋭く威力もある蹴りも、右脚を引かれて躱される。そして、攻撃ポイントを空ぶり、吹き抜けて威力が減退したところをティナの軸足となっているで受けられる。そこから武徠ぶらいの脚を挟む様にティナの右脚が、くるぶしの外側へ降ろされ、左脚を軸に下半身の回転で捻られた。


「くっ!」


 脚に加えられた梃子の力に左脚の関節が悲鳴を上げる。その痛みに思わず武徠ぶらいも声が出た。

 放った蹴りを脚で捕えられ、立ったまま脚で関節を極める技など見たこともない。それも、蹴りを放ち一瞬不安定になる箇所をピンポイントで固定され、姿勢も崩される。

 ならばと、武徠ぶらいは身体がよろめくに任せ後ろに倒れ込みながら、左腕を後ろ手で地面を掴ませ一瞬だけ体勢を固定する。その一瞬は右脚をティナの上半身へ蹴り込むための時間だ。

 倒れながらの蹴りとは言え、相応に威力が乗る攻撃ではあった。しかし、脚を挟み込んだままティナの上半身だけが前に移動し、武徠ぶらいの蹴りは太腿の部分を肩で受けられ完全に威力を殺される。

 そのまま倒れ込む力を利用し、ティナに梃子の力で関節が極められているくるぶしを支点とし、ティナの軸足を刈る様に梃子の力を逆に働かせ関節技を解除させる。

 武徠ぶらいは地面に着いた腕をたわませ、一気に肘を伸ばして身体をティナの元から離れる様に跳ねさせる。その勢いでコロンと後方に一回転し、立膝の姿勢で正面のティナを視線で捉える。

 一瞬でも目を離せば、そこで終わる。その気概を露にして涼やかに佇む少女を見据える。


 そのティナは、いつものたおやかな笑みを浮かべたまま、最初の位置から動かずにいた。


「(驚きました。まさかいきなり武術を組み合わせて来るとは思いませんでした。)」

「(最初のローキックは空手でしょうか。次のハイキックはテコンドーかカポエラでしょうか。姿勢を崩したまま放てるとなればその辺りっぽいですね。)」

「(極められた脚に逆方向の力を掛けて解除したのもポイント高いです。)」


 ほう、と一息いてからティナは少し悪戯心で普段抑えている気配を解放することにした。


「さて。これを受けて、あなたがどう動くか楽しみです。」


 ポツリと言葉を零した後、一瞬で膨大な気配が渦巻いた。

 呼吸を妨げる様に圧迫され密度の高くなった空気。それでいて身を凍らせ、身動き一つとることが出来ない。

 まるで目に見えぬ恐怖と言う言葉が物質化して身体を拘束したかの如く。見えないものが見える形に変化する。


 確殺するために技を奮う、本物の殺気が周囲を支配した。


「…っ!」


 ティナの殺気を正面から受け、武徠ぶらいは声も上げれなかった。自身が戦う時の殺気や、時たま受ける相手からの殺気と比べるべくもない膨大な死の気配。

 初めて受けるその暴虐に、身体が震え、肌が泡立ち、冷汗が止まらない。


 ――これが恐怖か――


 心の奥底から湧き出る感情に身を震わせながら、不思議とわらいが零れる。

 死に物狂いと言う言葉をいつ使うべきか知った。

 そんな相手と戦える幸運を。

 全てを出し尽くしても届かない遥か先をこの身で垣間見る喜びを。

 それは戦うための歓喜を呼び覚ました。


「(ここでわらいますか。うーん、おかあさまと同じタイプですね。)」


 周囲の様子とは裏腹に、ティナの様子は全く変わらない。

 それもその筈である。単に普段から抑えていた気配を解放しただけだからだ。


 ――FinsternisElysium MassakerKünste――

 フィンスターニスエリシゥム鏖殺おうさつ術は、1000年以上の歴史を持つ現役の確殺術である。その技は人間を破壊し、死に至らしめることが目的だ。技を使う精神を持つ者だけが奥義の修得に至る。

 つまり、振るうべき時に、それがティナである。

 森林戦に特化した武術であり、人知れず相手をほふることに長ける。そのため、音や気配を抑える術は、他の武術よりも遥かに高度で精緻な技術である。それを日常で無意識に制御出来る様に技法が練り上げられ、今に伝わっている。

 普段の気配は存在しないかの如く抑えられているが、まだティナも技術を練っている段階だ。奥義を使う際は更に跳ね上がる気配を抑えるところまで到達していない。だから奥義を使う時、察せられる弱点があるのだ。母ルーンなどは戦う時、殺気を漏らしているのだが、技法で抑えられる以上の気配を持っているからである。そんな彼女でも奥義を使う時の気配は変わらない。


「さてと。まだ行けますよね?」

「当然だ。これからがおもしろいんじゃねぇか。」


 最良の回答が聞けたと、ティナは笑みを零す。


 その溢れ出る殺気と裏腹な佇まいは、余りにも現実と乖離しており、あたかも夢の中にいる様な錯覚をさせる。


 まるで、幻想的な風景を垣間見たかの様に。



 そして、少女と少年は互いをたおす技で語り合った。


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