02-013.なぜだか組手をする羽目になりました!

 ――時間は京姫みやことルーンが問答を始めた時に遡る。


 ティナと花花ファファは、組手の準備を始めていた。軽く身体を伸ばし、簡単に筋肉の暖気運転をする。

 その様子を楽しそうに見ているハルは、二人の直ぐ側にあるベンチに腰かけている。京姫みやことルーンがお話に入ったのを見て邪魔をしない様にと、こちらにやって来たのだ。


「うん。この床、滑らないヨ。なら脱ぐヨ。」


 花花ファファは、言うが否や、中国刺繍靴と膝上までのストッキングを脱いで素足となった。

 そうなったらティナも付き合わざるを得ない。格闘向きにスポーツシューズを履いて来たのだが、花花ファファと同じように、靴とハイソックスを脱いだ。


「少し、ひんやりとしますね。ここは床暖房ではなく熱交換素材ですから、床下の温度が低いとあまり温まりません。」

「んー? いう程ヒヤヒヤないヨ。あったかい方ヨ。」


 極寒の中でも早朝から屋外で日課をこな花花ファファからしてみれば、多少の寒暖は誤差の範囲内らしい。今も、トントンと跳ねて調子を見たり、ポスポスとオープングローブの打点にあるクッション材がどのくらい衝撃を吸収するのか確認している。


「このテブクロ、なかなか打撃吸うヨ。」

「……打撃で思い出しました…。花花ファファ。衝撃吸収スーツを着ませんか?」

「何ヨ? そのナンたらスーツ。」

「厚さ2mmのゴム製ダイバースーツみたいなものです。元は軍用の官給品ですが、衝撃の95%がカットできるので体術の鍛錬に向いてるんですよ?」

「ほへ~。便利ヨ~。」


 ティナも格闘系の鍛錬は実家でのみ行っていたため、最近めっきり着る機会が少なくなった半分忘れ去られた衝撃吸収スーツ。

 厚さ2mmのゴムで出来た服を伸ばして着用することで薄く密着し、身体のラインが際立つ装備である。

 このスーツは2重構造となっており、肌に触れる側のゴムは圧力がかかると固化し、外側の衝撃吸収ゴムが力を分散し易くしている。

 手足の先はスーツに覆われておらず袖や裾となっているため、全身タイツとは微妙に違うが、シルエットはこちらの方がエロい。


「これならけい使ても大丈夫ヨ?」

「ムリです! ウルスラから聞きましたよ? 花花ファファ、5代目総受け君を一撃で壊したって。」


 アバター向けの格闘データを取得する際の相手として用意されたダミー人形である通称「総受け君」。彼の身体に纏っている緩衝材は、今回用意する衝撃吸収スーツよりも耐衝撃性は上である。それを素材の芯から再生不能な程ボロボロにした花花ファファけいは、PL法で「人に向けてはいけません」と注意書きが必須になるレベルである。


「そかー。残念ヨ。」

「まぁ、午後からうちの会社でスタッフと顔合わせと契約がありますから。身体にダメージを残すよりはスーツで分散した方が良いかと。」

「うん、そうするヨ。でもティナはパンツ見せるカッコじゃないヨ? イイの?」

「風評被害です! わざとパンツ見せてるんじゃありません!」


 などと騒がしく更衣室へ着替えに向かった。


「ねぇね、かえってきたー。おかえりー。」

「はい、ただいま。ハルはお留守番できる良い子ですね。」

「良い子はナデナデするヨ~。」


 ハルは花花ファファに頭を撫でられて満面の笑みを浮かべる。

 二人とも身体にピッチリの黒いスーツを着ており、まるでボディペイントをしてるのではないかと思うくらい身体のラインが部位単位で細かく判る程である。

 このスーツ、手足の先は専用のごつい系グローブとブーツなるのだが、それは採用しなかった。手首より先は素手となたったため、オープングローブを装着する。脚は踝より下が素足となった。


「さて。ルールはどうしますか? あ、けいは使わない前提で。」

けんで顔狙うトキは寸止めでイイヨ? 蹴りで顔狙てもどうせ受けれるヨ。」


 花花ファファの提案したルールは、かなりアバウトである。相手の力量を読み取っているからこそ、細かいルールは逆に邪魔になると踏んでいる。


「じゃ、始めますか。」

「そうネ。」


 お互いが少し離れ、正面を向き合ってから構えを取る。


 花花ファファは、肩の幅に脚を開き、両手をゆっくり肩の高さまで正面にあげ、その両手は肘を曲げる様にゆっくり卸される。彼女の流派で始める準備の型、起勢チーシーだ。花花ファファは、この時点で既に呼吸を練り始めている。そこそこ付き合いが長くなってきたティナも、花花ファファが大地と一体になる様に気配が流れ、それが重く渦を描くように纏われているのが肌で感じる。


 それに対するティナは完全に自然体。所謂、自護体と呼ばれる全身に満遍なく力が入った状態である。体幹を通して立ってはいるが、一般的に見られるような如何にも構えているという風体ふうていではない。

 だが花花ファファは、構えないことが構えであるとティナの修めた格闘術から推測する。 


「(ダレも知らない森の民の武術、言ってたネ。つまりヨ。何気なく近づいてキュッとネ!)」


 そんな思考をしながら花花ファファは、牽制もなくティナの懐まで一気に詰める。相手が如何様にも対応できる構えであろうと想定するからこそ、真っ向から攻撃を仕掛ける。速度を重視した左右の拳による連撃。ティナの胸元を狙う様に放たれたは、同じく下から左右の手刀にて斜め上に逸らすように流される。まるで、剣でバインド鍔迫り合いする様に腕が交差されている。

 しかし、花花ファファは次の挙動に移っている。顎を狙って右足を振り抜くが、避けられるのは織り込み済だ。ティナは上半身をスウェーしてやり過ごす。花花ファファの蹴りは吹き抜けた勢いで身体ごと空中で後転し、2歩分距離が離れる。一瞬、体勢を崩されたティナでは、この距離の追撃は不可能である。


 格闘で中段以上の高さで蹴りが有効になるのはルールがある競技だけだ。何でもありのストリートファイト、所謂ケンカなどでは、余程の熟達した蹴り技でないと決まらない。それは、脚を掴まれる可能性が高いからだ。そこから倒され、場合によってはマウントを獲られて滅多打ちにされるだろう。例えば剣道の試合がルール無用となった場合、片方が相手の竹刀を掴み滅多打ちにしたり、殴りかかったり出来ると思って頂ければ良い。

 ルールがなければ、武術の型は映画の様に美麗さがなくなり、もっと泥臭くなる。それは、双方必死になるからである。型通りに技を出すことに拘れば負けてしまう。身に着けた技とは、変化する状況の中でも相手へダメージを与えるチャンスを掴むための下地である。武術の技をその型通りに行えるのは、相手との実力差が相当開いているか、荒事をこなしてきた武術家ぐらいではなかろうか。


 この組手、拳による顔面攻撃以外はルールを設けていない。その状況に於いて花花ファファが下からの蹴り上げを行ったのは、ティナが下から手刀を振り上げたため、蹴りの防御に手が使えないことを見越してだ。この蹴りは安全に距離を取るための一手である。


「なんですか、その高速バク転は。へたをすると剣を振るより速いですよ、それ。」

「そうカ? 様子見ヨ、様子見。やぱりティナは、ホンとで戦うの技ヨ。けんを斜め外の上に弾いたのが証拠ヨ。」


 先ほどの攻防、花花ファファの拳はティナの手刀でそれぞれ斜め上、身体の外側方向に流れる様に逸らされた。それは、相手の身体に流れる力の繋がりを崩し、次の技へ入る時間を一瞬遅らせる技術であった。その一瞬があれば、技を掛けられる。しかし、花花ファファの蹴りで防がれる結果となった。


「(あの手の動き、関節技入る動きだたヨ。アブナイ、アブナイヨ。)」

「(さすがに一筋縄ではいきません。あの瞬間で察するなんて、どれだけの練度ですか!)」


 一交差で組手と言うより、試合の様相を呈していることに二人は気付いていない。


「じゃあ、今度は私からいきますね。」

「いいヨ。来るね。」


 花花ファファの返答が終わるか終わらないかの間にティナは動き出していた。

 右脚を軸に左脚で頭部を狙う回し蹴りをしながら一瞬で2歩の間合いを埋めた。膝から先に出し、その後に足先で蹴りを出す。当然、花花ファファはその蹴りに対して防御、この場合はパリイ受け流しにて脚の回転ごと逸らす態勢に入ったのだが、その瞬間、ティナの膝を起点に頭部から胴へ蹴りの軌道が変化した。蹴りと戻しが同じ速度で行われる蹴りである。

 しかし、花花ファファは冷静に対処してきた。頭部で蹴りを受けるために挙げた腕で、ティナの蹴りへ肘を入れる。それと同時に左脚を一歩踏み込む挙動に入り、ティナの軸足となっている右のつま先を踏み抜こうとする。

 衝撃吸収スーツ越しとは言え、肘を受けた脛に鈍い痛みが伝わったが、動きが阻害されるほどではない。ティナは左の蹴りを戻す勢いも足し、器用にも踵で軸の方向をクルリと変えてつま先への踏み抜きを避ける。その時には花花ファファの左腕が伸ばされ、ティナの脇腹にしょうが宛がわれていた。


「!!」

「今の躱す、スゴイヨ。ゼロ距離にヨク反応したヨ。」


 花花ファファつま先を踏み抜こうとした左脚の踏み込みはそのまましょうを打撃として打ち抜くための挙動となる。身体に触れられた感覚からティナは即座に反応し、右軸足の膝から力を抜いて後ろに倒れ込むように回避した。そして、再び二人の距離が離れている。


「なんですか今の! そこはかとなく危険な香りがしました! けいじゃないんですよね!」

けい、違うヨ。純粋な打撃よ。」


 二人は会話をしながら、拳や手刀で打ち合い、逸らし、流し、と繰り返している。合間に小さな下段蹴りが刺し込まれたりするが、お互い防御も固く回避性能も高いため決定打にはならない。

 ティナの力が乗った手刀は受け流されずに花花ファファに受け止められるも、腕を折りたたみながら身体ごとみ込み、肘を下から突き上げる。

 その隙間から花花ファファは反対の腕をティナの脇に入れ、受け止めた手刀の手首を持って肘打ちの方向を身体の外側に流しつつ、たいを捻ってティナの体幹を崩し、コロンと簡単に転ばせる。


 だが、ティナも脇に刺し入れられた花花ファファの腕をそのまま引き寄せ、転んで自由になった両足で左右から首を挟み込むように関節技へ持っていく。格闘技の三角絞めの変形と言える技である。

 中腰の様に前傾となった花花ファファは、首に被さろうとしていたティナの右脚を太腿の裏へ膝を入れて力の流れを阻害し、スルリと身体と腕を引き抜く。そのまま後方へ2歩ほど離れ、ティナが起き上がるのを待つ。


「やぱり、ティナと散打組手して正解ヨ。実力近くないと鍛錬にならないネ。」

「そういうものですか。こちらは決め手がことごとまらないので思うところがありますが。」

まらないはコッチもヨ。やぱりティナは大師ダーシーレベルヨ。やってて楽しいヨ。」

「うーん、あまりうれしくないです。久々に一杯一杯ですし。」


 今度は二人が同時に飛び出す。ティナは、相手の左頭部を外側から狙う様に少し円軌道を描いた右上段蹴りを放つ。それを花花ファファは、相殺する様に右上段蹴りで迎え撃つ。

 両者の上段蹴りが空中でかち合う様に見えたが、それぞれが違う挙動へ変化した。

 ティナは花花ファファの蹴りを捻じ伏せるため、高く挙げた脚を内側へ巻く様に捩じり込み回転を付ける。相手が防御のために出した腕や脚をこれで弾く。

 ところが花花ファファは、脚同士が接触する瞬間に膝をたたんですり抜けた。そのまま蹴りを出した勢いで、体操選手やフィギュアスケーターの様に反時計回りに高速に2回転した。その2回転目は、回転する軸足でしゃがみ込み独楽の様に回る。膝をたたんだ右脚は伸ばし、ティナの軸足を狩りに来る。

 ティナの右上段蹴りは空振りとなることで、身体が反時計回りに回転することになった。そこへ軸足を狙う花花ファファの薙ぎ払う下段回転蹴りに反応し、軸足で小さくジャンプすることで回避を行う。しかし花花ファファは、ジャンプして現れた足の裏に斜め上へ擦る様に蹴り上げた。

 身体の回転がまだ残っている状態で足の裏に力を加えられたことで体勢が崩れ、真面まともな着地すらままならない状況にされた。その時ティナが取った行動は、蹴りが避けられた右脚をそのまま斜めに振り抜く。その反動で身体の回転が加速され、体勢を斜めの状態へ移行させる。右腕で接地し、腕をたわめて衝撃を吸収してから力を込めて肘を伸ばす。その反動と身体の回転を使い、花花ファファの攻撃範囲から離脱した。


あー、ウマく逃げられたヨ。腕でジャンプするナンて、器用ヨ。」

「いやいや、ムチャクチャです! 蹴りを受けるフリして軸脚を狩るなんて、一体どんな鍛錬を積んでるんですか!」

「このくらい出来ないと、大師ダーシー達に手も足も出ないヨ。」

「大師って。なんですか、その修羅の国は…。」


 先の一交差で花花ファファは体勢を崩したティナに両の掌底を打ち出す直前であった。脚を狩った流れでもう一回転しながら攻撃が出来る体勢に移行していた。ティナは弾ける様に逃れたが、それが僥倖であったことは言うに及ばない。

 

 そもそも二人が織り成す技は、技や型を伝える伝統的な武術――競技としても採用される――ではなく、過去から脈々と受け継がれ練られてきた実戦の技である。戦乱のない時代でも暗躍し、絶えず戦いの中で練ってきた。ならばこそ、技が受けられる、返されることも予想の範疇であり、別の技へ繋げる技量は必須である。本来の意味で、あらゆる状況でも対応出来る様、過去から積み上げてきたのである。例え、手足の1、2本を失っても遜色がなく戦える程に。

 彼女達の攻防に、その姿が見え隠れする。騎士シュヴァリエとして戦う際と明らかに異なるのは、競技と実戦の違いだろう。なにせ、ポイントを犠牲にするなどの戦略は使えない。ある意味、真剣で戦っている様なものである。

 故に、技のひとつひとつが競技では危険とされるものであり、それを使うのが当たり前であるかの様に平然と戦うのである。


 それは、彼女達の精神性に寄るところが大きい。


 22世紀になり剣戟を仮想化したことの恩恵は、剣術が特定のルール下で競技として型や技を競い合うものから、伝え受け継いだ型や技を戦場や果し合いさながらに実戦で研鑽を積むことが可能となったことである。術から道へ変わった武道には影響はなかったが、剣術などの武術と呼ばれる競技の様相はガラリと変わった。型や技は本来の用途で用いられることでよりリアルな戦いとなり、競技者が術理をより深く解する切っ掛けとなる。だが、それは競技者が認識する範囲内のことである。


 ティナと花花ファファの修めた武術は、仮想化云々以前に実戦で扱うための技であり、それを実際に行使する胆力と、それによってもたらされる意味を心の奥深くに刻み込んでいる。だからこそ、どの位で人が破壊されるかも熟知しており、お互いが威力の加減を出来ることが判っているのである。



「疲れました…。」


 何度か休息を挟みつつも、午前中一杯続いた組手がお終いになってティナが最初に発した言葉であった。

 弟は、まだ幼いと言うのに長時間二人が戦う姿を楽しそうに見ていた。時たま、わー、きゃーと歓声を上げ、ぴょんぴょん飛んだりパチパチと拍手を打ったりする。今も、すごいすごいと拍手喝采だ。


「うんうん、充実した時間だたヨ。ティナは、たまに散打組手つきあうヨ。」


 ティナのグッタリ顔に比べ、スッキリ顔の花花ファファ


「途中で気が付きましたが、これは組手ではなく試合ではないですか? 普通に戦ってましたし。」

「そうカ? 他流だから別にイイと思うヨ? どうせ技チガウから合わせられないヨ。」

「まぁ、格闘術はアバターで公開しますから、隠す必要もないのでたまになら付き合いますが。」

「イイ返事ヨ! それとこの服とてもイイヨ! 散打組手が遠慮いらないヨ! …どこで買うヨ?」

「ああ、この衝撃吸収スーツは軍用品なので、欲しいなら伝手から取り寄せてもらいますよ。」

「たのむヨ! 2、3着欲しいヨ!」

「わかりました。発注しておきます。お値段はこのくらいです――」


 二人の攻防は、他人が見れば果し合いの現場であると断言する程の激しいものであったが、彼女達自身は全く以って平常運転であった。今も和気藹々あいあいと装備の発注処理から下らない話に繋がっていたりするが、普段も戦闘時も区別はないのである。


 トコトコと音が聞こえそうな足取りで、目をキラキラさせながら弟が二人に近づいてきた。


「ハルもやるー!」

「あら、ハルも組手がしたいのですか?」

「そう! くみてー。」

「ハルはナニできるヨー? 剣カナー? 体術カナー?」

「ハルは、けれるよ!」

「お? 蹴り出来るカー。じゃあ、ワタシが受けるからハルの蹴り見せてヨ~。」


 わかったー、と満面の笑顔で花花ファファの脚に蹴りを出す。まだ5歳の幼児なれど、上から下へ叩きつける様な脚を折るための鋭い下段蹴りが放たれた。


 何気にハルの歩法が武術を習い始めている者のソレであることを花花ファファ京姫みやこは気付いていた。子供らしくウロウロチョロチョロしているが、その動作に芯(体幹)が通っているのだ。


 ミシリ、と音が鳴りそうな鋭い蹴りを受けて、花花ファファは目を見開いて驚いている。驚いたポイントは幼児であることや蹴りの威力ではない。


「ハルはスゴイヨ~、ワタシびっくりしたヨ! ワタシがイロイロ教えてあげたいヨ~。」


 ハルをギュッと抱っこし、頬ずりしながら花花ファファは、そう言った。蹴りを褒められてハルは、得意満面の笑みを浮かべキャッキャと喜びながらクネクネしている。

 おもむろ花花ファファは、ルーンと京姫みやこがいる場所を見て、鍛錬が終わっていることを確認してからこう言った。


阿姨おばちゃんちょっと聞いてヨ! ワタシ、ハルに技を教えたいヨ!」


 その場にいたルーンだけではなく、ティナも京姫みやこもその台詞に驚いた。


 花花ファファが言うには、ハルは纏絲てんしの才能を持っているらしい。天然で纏絲てんしが発動し、蹴りから軽いけいが放たれているそうだ。

 これは非常に珍しいことで、かく言う花花ファファも同じく天然の纏絲てんし使いであった。そして、才能を最大限に生かすため暗部の技を伝授されたのだ。


 その後は少々騒がしく、色々な意見が飛び合った結果、月に数回の割合で花花ファファ纏絲てんしを教えることになった。

 さすがに他流武術を学び始めている幼児へ別の武術を注ぎ込むのは無謀なので、花花ファファは今習っている武術に影響が出ない程度に纏絲てんしの基本的な発動法を教えるつもりだ。その先にあるけいの運用法はハルの武術が形付いてきたところで別途相談する方針に。最低でも学園を卒業するまでの4年間は面倒が見れる。


 皆の話し合いの間、当人のハルは花花ファファが月に何度か自宅に訪れると聞いて、終始キャッキャと喜んでいた。


 幼い時分は、修練が遊びの延長上にあるものなのだ。


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