02-002.花花のお見送り、からの懐石料理に舌鼓です!
2156年3月24日 水曜日
直近では、
「やっぱり、今の時分に契約を持ちかける企業は目先しか見ていないところの様ですね。多分、数年で業績が落ちると思いますよ?」
先日、
ティナの実家の事業では、イメージキャラクターを
そのため、
「そうそう、ヘッドフォンのシリーズ名ですが、私達の二つ名を採用することになりそうです。その点、問題はないですか?」
「私達の二つ名が!? 私の二つ名は鬼姫だぞ? 商品名として問題ないのか逆に不安なんだが!?」
「いいネ、いいネ! 舞椿が有名になるヨ! 私の二つ名の商品ウレシイヨ!」
二人の性格が良く表れている台詞である。
実際、商品のイメージキャラクターとして、認知度の高い有名人を起用する手法は物を売る際に有効である。特にイメージキャラクターに
「ティナのおうちにお泊りヨ。楽しみね~! 弟いるヨ、あそぶヨ~」
「本当に1週間も滞在して問題ないのか? ご家族の迷惑になるのでは…。」
「遠慮は不要ですよ。むしろ住んで頂いてもよろしいくらいです。
「誘ってもらって申し訳ないが、
エスターライヒの国民はフレンドリーなのでそこまで気にすることはないのだが、
ヨーロッパでは
エスターライヒではオースタンの月曜日までが休みなので、4月3日土曜日から4月12日の月曜日までの10連休となる。4月13日火曜日以降は平日にあたるため、二人の契約手続きや、カメラテストを行う手筈となった。国による祝日の差異が、今回は都合の良い方へ働いた。
「それでは、4月12日の昼過ぎに宿泊施設エリアへ車でお迎えに来るよう手配しますね。
「ザルツブルグは、ローゼンハイムと気候は殆ど変わりませんから、普段通りのお召し物で問題ありません。」
「あとは、学生証と身分証明書になる証書をご用意ください。まぁ、追って必要なものについてメールを送りますので。」
あれよあれよという間に、物事が決まっていく。自分の二つ名を定着させるため、裏から表から色々と画策してきた姫騎士さんは、この手の業務も手慣れたものである。
木曜、金曜で荷造りを終えた
大きなアタッシュケースと
この時代、手荷物は様々なセンサーなどで所在を詳細に追うことも可能となっており、ひと昔前の様に手荷物が輸送の最中に盗難されることも少なくなっている。
「それじゃ、行ってくるヨ。おみや買ってくるヨ。」
「いってらっしゃい、
「いってらっしゃい。気を付けて。
手を振り、振り返り、また手を振り、搭乗口に消えていく
次に会うのは2週間後の4月12日。元気なトラブルメーカーが居ないと、少し寂しく感じる。
「さて。せっかくミュンヘンまで来ましたから、おいしいものでも食べて帰りましょうか。」
「そうだな。私はこの辺りに土地勘がないから何が良いとは言えないが。」
「実は、行ってみたいところがあるのですが。日本食レストランなのですが、お米がおいしいと聞きまして。」
「へー。ご飯がおいしいのはありがたいな。興味がある。行ってみよう。」
ちなみに、
ひと昔前の旅客機と違い、長距離用の旅客機は3つの異なるエンジンを搭載しており、ターボジェットエンジンでスクラムジェットジェットエンジン発動までの速度を出し、スクラムジェットエンジン発動後マッハ10程度まで加速、高高度まで到達後にロケットエンジンを点火して成層圏まで飛び立つ。もちろん、垂直に飛ぶのではない。そして、弾道飛行にて約2時間程度で北京に到着する予定だ。そこからが乗り換え、次いで乗り換えと、結構な時間がかかるので疲れが出てしまわないかが心配である。しかし、国土が広いこともあり、2、3時間の移動は近場であると言い放っていた
それはさて置き。
ティナと
和服の女中さんに、庵の様な畳の小部屋へ案内され、まずは出されたお茶を飲む。
「あ、すごく美味しいです。」
「ほんとだ。深い味にキレがある。水も違う。少し温度を下げた淹れ方も素晴らしい。たくさん空気を含ませている。」
「空気ですか?」
「ああ。空気を含ませると口当たりが良くなるんだ。暫く沸騰させて湯冷ましに器へ移してから、ゆっくり細く急須に注いだんだろう。お茶の先生が淹れてくれた味に似ている。」
懐石ではあるが、リーズナブルなお値段で料理を楽しめる、海外では珍しい日本食屋だ。店の造りと言い、店主のこだわりを感じる。
最初に炊き立ての白米と、汁物、
「ああ、米が柔らかく炊いてある…。久々の味だ…。」
その理由。
ここの米は軟水で炊いてあるのだ。米だけではなく、料理全てを軟水で作られていたからだ。
ヨーロッパの硬水で米を炊くと、固く炊きあがる。その代わり、肉などは煮込むと柔らかくなるのだが。
そして、椀盛り(野菜の煮物)、焼き魚と順に出され、箸洗いである小吸い物、八寸(人数分の酒肴を四方盆に乗せたもの)と続き、香の物、
出てくる素材は、どれも旬の物。ドイツならではの食材もあるが、素材の味を生かしている。
元々、懐石料理は、茶会で出される濃茶を空腹で飲むには刺激が強いため、小腹を満たすための軽い料理である。客を見ながら一番美味しく食べられるタイミングで旬の素材を生かした料理を出す。その持て成しは茶の湯の心を反映している。
この店は、正に懐石料理であった。日本食レストランとは一味も二味も違う。
「大変美味しゅうございました。繊細なお味でとても満足です。」
「ごちそうさまでした。まさか、ドイツで本物の懐石料理に出会うとは…。」
二人とも小腹を満たす程度のつもりで入った店が大当たりだった。
しかし、ヨーロッパ人の口に懐石料理は合うのだろうか。食文化の違いから味覚は違うと思われる。多分、万人向けではなく、この味が舌に刺さった一部のファンが足繁く通う隠れた名店なのだろう。
お会計。おひとり様40
それでも若い娘さんが入店するには尻込みするお値段だが、二人とも割と稼いでいるので多少の贅沢と思う程度だ。特にティナは、社長である父親より今年の年収は上だったりする。スポンサー2社の看板を背負っているのは伊達ではない。
機会があったらまた来よう、そう自然と口に出る二人。笑顔がほころぶ。
帰りはミュンヘンで有名な市場であるヴィクトアリエンマルクトに立ち寄り、良さげなチーズ(ドイツは世界でチーズ生産2位)とクロイツカム(老舗の洋菓子店)のバウムクーヘンをこれでもか、と言う程買ったのだった。
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