第3話

「越智くん大丈夫?顔色悪いよ。」

きっと考え込みすぎてたんだろう。友達の加藤が声をかけてきた。加藤は僕と同じ 大三島大学附属高等学校への進学を目指している。いうならば僕の「相棒」のような人だ。家族がたとえ崩壊していたとしてもこういう友達がいるって幸せだなってしみじみ感じた。

授業を終え家路に着いた僕は何だか嫌な予感がした。家の電気がついていたのだ。家を出る前にちゃんと消したことを確認していたため自分の不手際ではないことは分かっていた。おそらく 父さんが家に帰ってきているのだろう。僕よりも先に家に帰ってきてるなんか今までで一度しかなかった。その一度というのは 母の「あの日の事件」の時だった。まあ今はそれどころではない。玄関を開けると少しだけリビングの戸の向こうに父の影がチラッと映っていた。リビングに向かうと父はキッチンの隣にあるダイニングテーブルにいた。そして僕は小声で「ただいま」と言うと、父は「そこ座れ」とそっけない態度で僕に話しかけた。久しぶりに父が話したことに僕は驚きつつも言う通りダイニングテーブルの椅子に腰を下ろした。そして10秒ほどの沈黙を経て父がこう口を切った。「大三島大学附属高校への受験、諦めなさい。」

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