第4話
僕は突然のことに声を失った。中学校生活全てを大三島大学附属高校への進学に注いだ僕は、これは受け入れられないものであった。「何でだよ、3年間勉強してきたの父さん見てただろ!!」僕はそう父に言い聞かせた。そしてまた沈黙の時間を経て父がこう僕に尋ねた。「大三島東高校知ってるだろ。」確かに知っている。偏差値が低い で有名な学校だった。「まさか父さん...。」僕はすごく嫌な予感がした。そして父さんはそのまさかの返事をした。「そこに進学しなさい。」父さんはこう淡々と告げて自分の部屋に上がろうとした。「ふざけるな!!俺の中学校生活を何だと思ってるんだ!!死んでも行くものか!!!」そう僕は叫んだ。父さんは全く僕のことなんか考えていない。どうせ学費が高いとかケチをつけてくるんだろう。やっぱり私立なんか視野に入れるものじゃなかったな。そう諦めをつけた。すると父は振り返って話し始めた。「10年前の事件あっただろ。あの犯人の娘が、大三島東高校に在籍しているとの噂だ。」
10年前。僕が小学1年生の時の話だ。学校から帰ってきた僕はリビングに向かうと、ダイニングテーブルに一枚の紙が置かれていることに気づいた。「おかいものにいってきます。 おかあさんより」そう書かれていた。僕はすぐに帰ってくるものだと思っていた。しかし母さんは二度と帰ってくることはなかった。しばらくすると父さんが帰ってきた。あれ、父さん仕事のはずなのに何でこんな時間に帰ってきたんだろう...? そう考えていると父は大汗をかきながらリビングに来た。「ちょっとついてきなさい。」そう言われて僕は何か嫌な予感がした。父さんが汗をかいていることなど滅多にない。しかも仕事の途中のはずなのに家に帰ってきている。小学1年生の僕でも何かが起こっている と言うことは容易に想像できた。
父の運転する車に乗って到着したのは近くの病院だった。そして父は僕の手を引き、1階にあるICUに向かった。自動ドアが開くとそこには数え切れない程の人がベットに横たわっていた。その時の光景は今でも忘れていない。そして父さんは看護師に「裕美はどこですか!?」と尋ねた。裕美とは僕の母の名前だ。看護師は「こちらです。」と案内した。そこにはベットに横たわっている母がいた。人工呼吸器は既に外されていた。
母の向かった「スーパーマーケット和田」では青酸カリが撒かれていた。これによりスーパーで買い物をしていた24名、そして店員の8名は全員死亡した。のちにこの事件は「スーパー和田青酸カリ事件」として世に知れ渡る事となる。犯人は未だ見つかっていない未解決事件として今も迷宮入りしている。
父さんの言っていた"犯人の娘が大三島東高校に在籍している"というのが本当だった場合、これは聞き逃しできない情報だ。そして父さんは僕にこう尋ねた。「復讐する気はないか?」
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