第4話

「元気そうだね、康雄くん」

「まあ、生きているよ」


そういえば、彼女はファーストネームで読んでいたな。


彼女の名前は、佐藤理沙

当時は、名を知らないものはいなかった。


「今は、結城彩。芸名にしたんだけど、気がつかなかったみたいだね」

「うん。全く」

「相変わらずだね。康雄くん。まあ、らしいけど」


こういう場で、プライベートな話をしていいのか?


外見もかつらをしていたとはいえ、面影がない。

でも、声を聞くと、あの彼女に間違いない。


「康夫くんは、住所は・・・」

「変わってないよ」

「じぁあ、お手紙書くね」


ですから、いくら旧友でも、こういう場でプライベートな話は、不味いですって。

周囲の視線が突き刺さる・・・


と、思っていたが、割れんばかりの拍手。

なんなんだ?


後日、彼女から手紙が届く。

声優に転身した理由や、他のみんなは元気かなど、書かれていた。


そして、最後に・・・


『ずっと好きでした。今も君への想いは変わりません。

よろしければ、お返事ください』


それから数年・・・


僕は彼女には、手紙を出すことはなかった。

彼女からは、何度か手紙が来たが、放置しておいた。


彼女はもう、僕とは完全な別世界の存在。

関わらないのが吉。


彼女の幸せを、成功を、ひっそり見守ることにした。

かっこつけているわけではないが、それが特別な気がした。


テレビをつける。

女の子が野球をしているアニメがやっている。


主人公のエースの女の子を演じているのが、彼女だ。

彼女の活躍は凄い。


どの世界も実力主義だが、その中で第一線で活躍する彼女は、尊敬する。


心の中で、エールを送り、テレビを消した。


さてと・・・

行きますか。


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今の君、今の僕 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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