第3話 私設警察官(賞金稼ぎ)
渋崎コウは大学のだだっ広い学食でいつものように大好きなカレーライスを食べていた。
午前の講義がまだ終わっていない時間ということもあって席もまばらだった。
カレーを一口頬張るたびにコウの顔がにやける。
至福の時は、突然終焉を迎えた。コウの幸せを奪ったのは、今では骨董品となった二つ折りの携帯電話だった。ジーンズのポケットの中で震えてメールの着信を知らせる。
コウは面倒くさそうな表情を浮かべ、携帯電話を取り出した。
届いたメールは東銀河帝国私設警察官用広域指名手配犯探索システムからだった。件名は緊急通知。ハッキングした監視カメラの一台に東銀河帝国指名手配犯と合致した人物が写っているという内容だった。付帯情報としてペンギンの着ぐるみと女子高生が一緒にレストランで食事をしている画像、手配犯に関する情報が添付されていた。
“サラデスク星要人誘拐容疑者二名、氏名不詳、再犯確率不明、西銀河集合体軍兵士の可能性大、武器所持の可能性大、懸賞金額最高ランク、ただし死亡時は半額、撮影場所A市役所前ファミリーレストラン”
二人の発見場所までここからそう遠くはない。
思案の末、午後の講義よりも裏稼業である東銀河帝国私設警察官(賞金稼ぎ)の仕事を優先することにした。二ヶ月ぶりの仕事だった。しかも、懸賞金額は帝国通貨で最高ランクときている。月にある地下都市で日本円に換金すれば卒業まで豪遊してもお釣りがくるほどだ。
残っていたカレーライスを急いで食べ終えると周りを注意深く見回して誰も見ていないことを確認する。そして、手のひらに携帯電話を載せると深く息を吐いた。息に合わせるかのように携帯電話は手のひらの中で光の粒に分解され、代わりにキーホルダーが付いたバイクの鍵が現れる。
コウは食堂を出て通学に使っているオフロードバイクが停めてある駐輪場に足早に向かった。
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