その四、フィクションです
<ボケ>
はい。どうも。
この前、ホワイトデーってあったでしょ。
<ツッコミ>
あったね。男子から女子にお返しする的なアレでしょ?
どうしたんですか。発情した猫みたいな顔して。
良い事でもあったん?
<ボケ>
いや、逆。
その逆、嫌な事が発覚したんですよ。
<ツッコミ>
嫌な事?
デブにヘッドロックかけられて痛いっていうより臭かったより嫌な事?
<ボケ>
はい。嫌な事。
次の日も仕事なのに終電逃したと思ったら始発だったよりも嫌な事です。
<ツッコミ>
だからか。
水木先生が描く初期のネコ娘って顔してるもんな。今の君、心底、怖いわ。
で、なにがあったんよ。話してみい。
<ボケ>
彼女からね。
ホワイトデーだから、これあげるって、あるものをもらったんですよ。
本物と偽物の二つをね。
君は、この話聞いてピーンとこないですか?
<ツッコミ>
いや、全然、ぴーんとこない。
てか、本物と偽物ってなんですか。二つももらえて幸せじゃないですか。
ただ、思ったんですけど、彼女からですよね。
普通、ホワイトデーって言ったら男性から女性に贈り物を贈る日ですよね。
逆じゃないですか。
<ボケ>
まあ、そうですね。
ただ、僕の彼女特別仕様ですから。
<ツッコミ>
特別仕様?
ああ。あれですか。例によって彼女がオカマとか言うやつですか?
彼女が男なら、それもありえますからね。
<ボケ>
オカマじゃないですよ。
正真正銘の女性ですよ。
逆に凄く格好いい子なんですよ。俺についてこいみたいな。
<ツッコミ>
ほう。
お前がなよっとしてるから、そんな彼女だったら丁度いいですね。
<ボケ>
なにせ、オナベですから。
<ツッコミ>
オナベか。
行き過ぎですやん。行き過ぎ。
電車さんが止まるべきホームを行き過ぎて次の駅ホームに止まるくらい行き過ぎですやん。お昼過ぎまで午前中指定でも忘れてましたか? ネコちゃん。
<ボケ>
確かにベッドではネコですね、彼女。
受け。
<ツッコミ>
やっぱりネコかッ!
てか、オナベなのにネコって……。
男のお前がタチなんですね。どういう関係なん。複雑過ぎるわ。
<ボケ>
まあ、いいですやん。
人間、生きてれば色々あるんですよ。
でね。話を戻すと……。
そんな男前のネコな彼女からホワイトデーだって言ってもらったものがあるんです。
<ツッコミ>
なんだろう?
<ボケ>
はい。
ねこぢるうどんをもらったんです。
<ツッコミ>
ねこぢる? うどん?
なんかヤバい香りしかしないものなんですけど。
ネコが鍋で煮込まれてて……。
いかん。
いかんわ。これ以上は俺の口からはよう言わん。
可哀想過ぎて泣きそうですよ。
<ボケ>
嗚呼、ネコの出汁がよう効いてて美味いわ。このうどん。
やっぱり出汁はネコに限るな。
グッハッ!!!
<ツッコミ>
最後のグッハッ!!! ってなんですかッ!?
ヤバイですよね?
てか、悪人か、彼女。もう、俺、泣いちゃうよ。
<ボケ>
って、違うわ。
君、なに考えてんですか。漫画ですよ。漫画。
<ツッコミ>
漫画?
本当に?
でも、まあ、漫画か。ほっとしたわ。ビビって損した。
<ボケ>
そうですよ。正真正銘の漫画。
ビビり過ぎですよ。ちょっとばっかり怪しいですわ。
<ツッコミ>
怪しくないよ。なんにも。
てか、怪しいのは君。
裏でネコから出汁とか取ってそうだもん、君。
それで、うどん作って売ってそうだもん、君。
濃厚背脂うどんとか言って屋台とかで出してそうだもん、君。
<ボケ>
君、君、うるさいわ。
てか、なんですか。濃厚背脂って。
ラーメンじゃないですか。
うどんだったらギトギトしすぎて逆に不味いわ。
てか、人をマスクの転売で儲けた人みたいに言わんで下さいよ。
人聞き悪いわ。
<ツッコミ>
知ってるよ。
<ボケ>
なにを?
<ツッコミ>
その悪どそうなつらでね。
真っ黒なガーゼマスクを目に被せてさ。
目の部分だけ穴を開けた仮面でね。
医療用マスクの転売宣伝をするユーチューバーがいた事をね。
<ボケ>
な、なんですか。
その仮面系ユーチューバー?
待てよ?
もしかして、名前、マイエルですか?
アメリカンショートヘアーの名前みたいなマイエルなんてやつじゃないでしょうね。
<ここで真っ黒なマスクを取り出しボケが目にあてる>
<ピース>
<ツッコミ>
お前だよ。お前。
知ってますよ。
お前のユーチューブチャンネル。
チャンネル登録者数が一匹のマイエルチャンネルだろうが?
<ボケ>
てか、匹ってなんですか。
匹って。
<ツッコミ>
お前が捕まえてきたネコだろう。
ネコしか登録してないんだろう。お前のチャンネル。
で、その一匹で出汁を取るんだろう?
<ボケ>
だから、俺は出汁をとらんわ。
むしろ出汁をとるのは、お前。
そこから離れい。
違います。
ねこぢるうどんっていう漫画をもらったんです。
<ツッコミ>
そっか。
で、そのねこぢるうどんって漫画、オモロイの?
<ボケ>
オモロイよ。
可愛い顔して残虐でね。
行列してるアリを笑顔でプチプチ潰すの。
そのアリが小さいおっさんでね。
働きアリを潰すッ! みたいな。
<ツッコミ>
うわぁー、聞きたくなかった。
ある意味、ネコの出汁よりも、ヤバいわ。
<ボケ>
でね。
日本の漫画ってクールジャパンって言うでしょ。
彼女が言うわけですよ。
クールでしょってね。
<ツッコミ>
クール過ぎるわ。クールにも程がある。
いかん。
それはいかん。
そんなものが日本の文化って外国に思われたらいかん。
いかん。
<ボケ>
でね。
彼女が熱く熱く語り出すんですよ。
クールとはこうなのだ。
クールとはこうあるべき。
断固、クールを保守すべしとね。
僕、もうついていけないんですよ。ドン引きで。
そんな彼女をクール新選組って呼んでます。
<ツッコミ>
クール新選組(新鮮組)って、ありそうな名前だけどもさ。
れいわ新選組みたいに言うな。
てか、クールを熱く語ったら本末転倒じゃないの?
俺が爆弾でも送ってやろうか?
もちろんクール便で。
お前んちに。
<ボケ>
まあ、クロネコですよね?
<ツッコミ>
そうだよ。
ここまできたらネコを推すわ。
<ボケ>
でも、知ってるんです。
<ツッコミ>
なにを?
なんか、その顔怖いわ。獲物を狙うネコ科の猛獣みたいで。
背筋がゾクッとするのは俺の気のせいですか?
<ボケ>
最初に言ったでしょ。
悪い事が発覚したって。本物と偽物をもらったって。
<ツッコミ>
なんの事?
なにが言いたいの、君。本当に怖いよ、その目つき。
<ボケ>
僕の彼女とね。
彼女と親密になったクール新選組の組織員がね。
漫画じゃないねこぢるうどんで、僕の毒殺を謀ったって発覚したんですよ。
すき焼きパーティーを装ってね。
<ツッコミ>
そう言えば、この前、お前んちですき焼きパーティーしたよな。
ホワイトデーだったな、あの日。
もしかして、あれ……。
<ボケ>
ねこぢるうどんです。本物の。
<ツッコミ>
マジか。
俺、偶然だけど腹が痛くて食べなくてよかった。セーフ。
<ボケ>
いつまでもネコかぶってとぼけるんじゃねぇよ。
お前だろ。僕の彼女、寝取ったんわ。この泥棒ネコがぁぁぁッ!!!
<ツッコミ>
うわぁぁ、バレてたぁぁぁッ!!!
<ボケ>
もう付き合いきれんわ。
ありがとうございました。
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