第2話:謀叛
「国王陛下、王配殿下、申し訳ありませんがこれも時代の趨勢です。
大人しく退位していただければ命までは取りません」
私達の目の前で、王位簒奪が行われようとしています。
本当なら聖賢者の私が防がなければいけないのですが、守護神の方々の力が弱まった今の私には、悲しいかなその力がありません。
なす術なく涙を流しながら見ているしかないのです。
陛下、殿下、申し訳ありません。
「さて、次は私の婚約者だった聖賢者バーン殿の処遇だが、この国を生まれ変わらすには、死んでもらうのが一番なのだが……」
まだ私にわずかでも情が残っているのでしょうか、ウィリアム王太子が悩んでいますが、それを邪魔する者がいます。
ウィリアム王太子を唆した雌豚、バフウェル辺境伯の養女ネヴィアです。
王侯貴族だけは絶対に女を受け入れないようにしよう、そう誓っていたのに、率先して女を受け入れた裏切者のバフウェル辺境伯。
その手先となって王太子に近づき色狂いさせた雌豚!
「私は殺してしまった方がいいと思いますよ。
五神がこの状況に気が付いて、女神達の目を盗んで聖賢者に力を貸せば、殿下の運命は閉ざされてしまいますわよ」
どうだろうか、雌豚が言いうような事になるだろうか?
守護神様方が力を貸して下さったら、周辺国の圧力を跳ね返すことができる。
特に王宮にまで兵を入れたセント・ラフス皇国には、断固たる処置をとってくださるだろう。
だがそれも、守護神様方を本気で怒らせた場合だけだ。
あの方々は独占欲と執着心が強いから、私が酷く傷つけられたり殺されたりしたら、正室の女神様方の目を盗んで力を貸してくださるだろう。
「……ならば殺しておくか」
どうやら、王太子には私への情など残っていないようですね。
女がそんなにいいモノなのでしょうか?
心から国を想い民を想って謀叛を起こして父王から王位を簒奪したのではなく、単に悪女に狂って力を見せたくて、心を繋ぎ止めておきたくて、暴挙したのでしょう。
史書に残る典型的な悪女による亡国の兆しですね。
「殺せるものなら殺してみろ、亡国の王太子が!
お前の愚かな行為が、神の怒りを買ってこの国を滅ぼすだろう。
この国を滅ぼしたのは皇国の侵攻ではなく、皇国を招き入れたお前の愚行だ!」
さあ、激怒して私を殺しなさい。
私を殺せは、守護神様方は怒り狂ってお前と皇国を滅ぼしてくださるでしょう。
この国の民を、他に行く当てのない男を愛する男達を護るためなら、この命捨てても惜しくはない!
守護神様方、ご覧あれ、貴男方の愛人バーンの誇り高い死にざまを!
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