転生聖賢者は、悪女に迷った婚約者の王太子に婚約破棄追放される。

克全

第1話:なんでこうなる

 教会を、いや、この国の根本を支える存在、それが聖賢者だった。

 聖賢者は、男を愛する男達によって建国されたイートン王国で、男性同士の性交でも教会領のキャベツから子供が育つ奇跡を支えていた。

 聖賢者は男性を認めてくれる神、いや、同じように男性をこよなく愛する五人の男神に、その身体を捧げる事で、キャベツから子供を授かる奇跡を得ていた。


 聖賢者バーンも、こよなく男性を愛していたから、五人の男神に身体を捧げる事は聖なる役目として誇りをもっていた。

 同時に、自分の夢をかなえる事のできる理想の世界に転生できた幸運を、深い喜びを感じていた。

 幸か不幸か、聖賢者バーンは前世の記憶を持っていた。

 そして前世でも生涯男性を愛していたのだ。


 聖賢者バーンの前世はそれほど悪かったわけではない。

 多少の差別があり、男性同士の婚姻は認められなかったが、男性愛者だからといぅって処刑されることもなければ、石もて追われるわけでもなかった。

 だが生物学的に、愛する男性の子供を生む事はできなかった。

 互いの愛の結晶である子供を抱く事はできなかった。

 それだけは絶対に不可能だと、生物学的常識で諦めていた。


 それが、転生したこの世界ならば、男同士のカップルでも、自分の遺伝子を継いだ愛しい子供を抱く事ができる。

 妊娠ではなくキャベツに実るので、遺伝子が伝わっているのか、それとも最悪神がどこかから攫てきたのか分からないが、それは信じるしかない。

 実際に神がいて、魔法などと言う前世の常識では証明できない現象が存在する以上、自分と愛する人の子供だと信じるしかない。


 この世界に転生できて、神に選ばれ、王太子の婚約者にも選ばれ、前世で夢見たプリンセスのような状況に置かれ、幸せの絶頂だった。

 前世で夢だったウエディングドレスを着ることはできないが、愛する人と同じお揃いの正装を着て、国民すべてから祝福されて結婚する事ができる。

 その時が待ち遠しくて、早く王太子と結婚したくて、指折り数えていた。


 だがそれを、周辺国が許さなかった。

 同性愛を汚らわしい異端の行為だと、教え糾弾する神が守護神を務める国が力を持ち、イートン王国に圧力をかけてきたのだ。

 今迄は五人の神が護ってくれていたのだが、五人の神の目に余る乱交が妻の女神達の怒りを買い、守護の力が著しく落ちていた。


 しかたなくイートン王家は女との婚姻を認めるように法律を変えたが、王家や貴族は女に惑わされる国民などいないとたかをくくってた。

 だが、それは大きな間違いだった、一度女の身体を知った男の中には、女の魅力に惑わされる者が結構いた。

 迫害を逃れてイートン王国に逃げてきた者は女に惑わされることはないが、男同士のカップルから産まれた子供は、普通に女を愛するのだった。

 

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