8話 果てなき試行


「さてと、早速使ってみるか……」


翌日の早朝、誰もいない訓練場。俺はそこで、手に入れたスキルの効果等を試してみる事にした。


「取り敢えずは金属の類も持ってきたけど、0から作れなきゃあんま使えないよなぁ……」


金属の形を変えるだけのスキルであればハズレもいい所だ。その為、まずは金属を作れるかどうか確認してみる。


「うーんっと……『金属生成』」


虚空に手を出し、イメージを整える為に口に出しながら魔術を行使してみる。すると、そこに歪な形の鉄が現れた。それと同時に、魔力が一気に抜ける感覚を覚える。


「くっ……魔力を食いすぎる」


生成はなるべく控えた方が良いのだろうか。だとしたらかなり辛い。


「次は既存の金属の操作、かぁ」


そして今度は持ってきていた金属塊に手を添え、再び魔術を行使する。


「『金属操作』」


しかし、今度は魔術が発動する事はなかった。


「あれ……?」


まさか……と、嫌な予感が過る。次に先程作った金属塊に手を添え、同じように魔術を行使する。


「『金属操作』」


すると今度は形が変わり、思い浮かべていた形……剣に変わる。その操作にもまた、多量の魔力を要した。どうやら、この能力は金属を生み出し、自らが生み出した金属のみの形を変える能力のようだ。


「これ……実用性としてはどうなんだ……?」


実用的に扱うには、かなりの量の魔力が必要そうだ。しかし逆に言えば、魔力量と技術さえ磨けばかなりの実用性が見込めそうではある。戦闘中に武器を新たに作れるというのはかなり便利だ。


「こればっかしは、繰り返すしかないか……」


より多くの魔力を持ち、より効率的な魔力消費で、より効果的な使い方を模索する。鉄を溶かしては打つのを繰り返すように。


ーー言葉にしてみれば、実に単純だろう。


「さて……やるか」




一日目。


「まずは、魔術の精度を上げないとね」


先日作った金属はあまりに凸凹で、到底武器としては扱えない。より綺麗な物を作らねばならない。


「ふぅ……表面は滑らかに、硬度は硬く。『金属生成』」


再び、魔術を行使する。それをじっくり眺めると……昨日よりは、心なしか綺麗になっただろうか。


「流石に、一昼夜で改善はされないよね。まぁ、多少はマシになったって事で……次は、武器に変えないと。より鋭利に……『金属操作』」


金属塊が形を変え、剣となる。これもまた、昨日よりは若干マシになっただろうといった所だ。


「細かい形にはまだ早いかな。ひとまずはこの工程を練習しよう」


その後は魔力が尽きるまで、金属塊を作っては剣に加工する作業を繰り返していった。





一週間後。


「『金属生成』……『金属操作』……よし、大分良くなってきた」


生み出される金属は凹凸がかなり減り、十分武器として扱えるほどになってきていた。試し斬りもしてみたが、それなりの剣と同等の斬れ味にはなっている。


「次は……生成で、直接剣を作れるようにしようかな。後はもっと精密な形も作れるようにしなきゃ」


いざという時に、金属塊を作ってからと言うのではあまりに遅すぎる。咄嗟に剣を生み出せた方が良いだろう。


「『金属生成』」


今までただの塊を脳裏に浮かべていた生成の魔術。そのイメージを、今度は剣に挿げ替える。


「ふぅ……まぁ、悪くはないかな?」


今までの反復が功を奏したか、それなりの精度で剣を生み出せた。次は、より複雑な形に。


「『金属操作』」


次に作るのは、太刀だ。これが上手く作れれば、俺としてはかなり有難い。何せ、最も得意と言える得物なのだから。


「『金属操作』」


そうして作られた太刀は、少し歪みが目立つ物だった。やはり、緻密な物にはまだ難がある。


「よし……更に試行を繰り返していこう」


俺の探求はまだまだ終わらない。全力で、尚且つ貪欲に、力を得ていこう。そう決心した。

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