第10話
「相変わらず既読なしか」
日曜日。
俺はベットに寝転がりながら、メッセージアプリを開き、同級生からの既読がついていないことに嘆息した。
誘いのメッセージを送ってから2週間。だというのに、返事はおろか既読すらつかず。そしてそれを皮切りに俺は同級生とまともに会話すらもできていない。
以前ファミレスで会って二言、三言、言葉をかわしたが、あれは会話をした内にははいらないだろう。
同級生とは長年の付き合いだからわかるのだが彼女がここまで無視してくるのは珍しい。
アイツは怒る事はあっても人を無視するなんて事はしない。寧ろ真正面から向き合って怒りをぶつけてくるやつだ。
だから、彼女から無視されるというのは余程の事をしたというわけで。
そして困ったことに余程の事が一体なんのことなのか、俺には皆目見当もつかずにいた。
そしてもう一つ。俺を悩ませる出来事があった。
それは、
シュポン、シュポン。
立て続けに来る二つのメッセージ。会社の同僚と高校の頃の先輩からだ。
どういうわけかここ最近、同僚と先輩からのメッセージが頻繁に来るのだが、その送られてくるメッセージが実にどうでもいいことで、
『今日も天気がいいですね』だとか、『星座占いであったんだけど、後輩君と私の相性っていいんだって』と揶揄いのメッセージを送ってきたりと、だからどうしたと問いたくなる内容ばかりだ。
どうせ今日もそんな他愛もない内容なんだろ。
てきとうに返事を返そうと、まず同僚からのメッセージを開く。
同僚とは以前出掛けた時に、メールアドレスを聞かれ、教えていた。
『問題。私は今どこにいるでしょーか? じゃーんサプラーイズ』
そんな内容と共に、写真が一枚添付されている。写真に写っていたのは、見覚えのあるアパート。俺の住んでいるアパートだった。
「why?」
頭の処理が追い付かず、カタコトの英語が口からついて出ていた。
いや待て。ちょっと待て。本当にwhy? だ。
「なんで同僚が俺の住んでいるアパートを知ってるんだよ!」
連絡先は交換したけど、住処を教えた覚えはないぞ!?
果たして俺の疑問は次に送られてきた同僚からのメッセージで解決した。
『あっ住んでいる場所は部長から聞いたので安心してください』
どこに安心できる要素があるんだよ! なんで部長は俺の住処を教えてんだ! 俺のプライバシーどこにいったの!?
『今日のお昼はハンバーグですよ。ふふ楽しみにしてて下さい』
メッセージと一緒に買い物袋が写った写真が添付される。
まずい。アイツここに来る気満々だ。
部屋の中をぐるりと見渡せば、床に転がった雑誌に、結んで膨らんでいる何かが入った買い物袋となかなかに汚れている。
同級生なら、別に気にしないだろうけど、これを他の人に見られるのはマズイ気がする。恐らくひかれる。
俺がとる道は一つ。同僚を部屋に入れないように食い止める事!
そうと決まれば、早速行動だ。
スマホをポケットに捻り込み、俺はアパートのドアを開ける。
しかし、この時俺は重大なミスを犯していた。送られたメッセージは同僚からだけではなかったのだ。
あともう1人ーーいた。
「やぁ来ちゃった」
ドアを開けた先には、長い髪を後ろで括り、気さくに手をあげる彼女。高校の頃の先輩がいた。
何故か片手には買い物袋が握られている。
なんで先輩が。
その声が出るよりも先に、ドサっと何かが落ちる音がした。
「あ、あのその人は?」
「およ?」
聞こえた声に先輩が振り返れば、そこにいたのは会社の同僚。
二人はお互い視線をかわし、互いに指をさすと、
「「彼女さん?」」
まるで息を合わせたかのようなタイミングで2人同時に聞いてくる。
うん。とりあえず、そこに転がっている買い物袋から飛び出した、人参や牛肉ミンチのパックを拾おうか。
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