極上のスープ作りを手伝う(5)──いよいよ試食
河原には、ごつごつとした岩を選ばなくても向こうへ渡っていけるように数か所、橋代わりの板が渡してあった。二人の足はそれを伝い林を抜け、ある空間に出た。盆地のような場所であった。背後だけ林、あとはぐるりと崖が囲んでいる。ピッポが、地面に適当な距離を取って置かれている鉄製の箱を指した。
「あれが郵便受けってわけ。全部で五つある。中にきっと『かたらぎ』っていう木の葉っぱが入ってると思う。それを回収すれば終わりさ」
二人はそれぞれ別の箱へ向かって歩き、手に取った。レイノルドもぴょんぴょん跳ねてついてきた。キッパータックが拾ったのはステンレス製の箱で、前面上部が手紙を差し込めるよう開口していて、本物の郵便受けに見えた。
葉を回収したら箱は元の場所に戻していたので、キッパータックもそうした。全部を開け終わって、二人は盆地の中央で落ち合った。
ピッポは両手に掴んだ葉を眺めた。「嵐があったからかな、結構な量が回収できたね。一つの箱には演奏家虫も
「ええっと、」キッパータックはピッポに葉を渡してから言った。「この葉っぱ、風で飛んできてあの箱に入ったってことだよね?」
「そうだよ。だから『風の郵便』ってわけ」
「葉を集めたいなら、もっと大きなザルとか、そういうものを置いた方がいっぱい集められると思うんだけど」
「チッチッ、」ピッポはこれまでの作業で少し汚れて黒ずんだ人さし指を振った。「ザルなんかで受けちゃったら、雨に濡れるし、ゴミの付着も
「ったく、」レイノルドが
「僕は鳴らない楽器じゃないからね」ピッポはレイノルドにもタクト代わりの指を振った。「心に楽譜が浮かんでいるのに歌わないでいることはできないんだよ、
珍奇な宝物を抱えて、電動立ち乗り四輪車で再びプライベート・ケーヴに戻った。五つの材料――
「今日、君と採取した分は月末のイベントに出すスープに使う。君にごちそうし、明日のバザー用に使うのはこっちだ。……じゃあ、家へ帰ろうか」
「さっきコロッケの皮って言ってたけど、それって揚げ衣のこと?」とキッパータックは訊いた。
レイノルドが答える。「そうだ。あんなうまいものはない。おれの一番の好物なんだ。ときどき、
「半人半馬地区の会社⁉︎」キッパータックはひどく驚いた。
「おい、おれが日がな一日あの洞窟にいるとでも思ったのか? おまえの想像力、すさまじく貧困だな。おれは結構行動派でね、顔が広いのよ」
「でも、街では鳥の
「おれを一般的な鳥と一緒にするな!」
リムの幅広い真っ白な皿がキッパータックの目の前に置かれた。浅い
「五十嵐さんちのパーティーで飲んだのよりずっとおいしい気がするな。あのときは具がいっぱい入ってたけど」
「野菜だけっていうのもいいだろ?」ピッポはパンをちぎって立ったままもくもく食べていた。
レイノルドはかりかりに焼かれたチキンの皮をもらっていた。そして贅沢にも用意してもらった自分用のスープにときたま浸してはくちばしを天井へ向けて飲み込んでいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます