第4話 極上のスープ作りを手伝う(4)
何年ぶりかの蜘蛛のいない生活。キッパータックは
古代遺跡を思わせる砂色をした
『様々な気候区分が複雑に入り交じり、独特の
インターフォンがなかったので呼び出しの番号に電話をかけた。
「鍵はかかってない。自分で門を開けて入ってきてくれ。車は適当にその辺に停めてくれたらいいよ」との返事だった。
門からほど近いところは開けた土地で、案内なしでも彼の待つ住居が見えた。それは実にこぢんまりとしていて、つい先月建ったばかりだ、というように真新しい清潔な印象だった。中へ入ると、六畳ほどのキッチンで主はウェルカム・ドリンクを準備していた。
「オレンジジュースでいいかな? 昨日買い出しに行ったからいろいろあるよ。冷たいミルクとかサイダーも」
「ジュースをもらおうかな」キッパータックは木の椅子に腰をおろした。
テーブルには物がごちゃごちゃと置かれていた。「ごめん、いろいろ整理をしていてね」
ピッポは品物の配置をうまく変えることでキッパータックの為のスペースを作りだし、そこに布製のコースター、次にグラスを置いた。彼は英文がスタイリッシュに描かれたブルーのTシャツにカーゴパンツという格好で、
ピッポは言った。「君はパーティーのとき、料理は苦手だって言ってたね。缶詰の魚が好物なんだって。今日、僕は例のスープを作らなきゃならないんだ。それを君に手伝ってもらいたいと思ってる。といっても、料理自体は全部僕がやる。一緒にやるのは材料集めだ。結構ハードだから手伝いがいると助かるんだ。いいかな?」
「材料集めって、お店で買わないの?」
ピッポはその質問がこの上なくうれしい、というふうに、手に取った調味料の箱をぽんと宙に弾いて華麗にキャッチした。「流通の神は断固却下とのたまうだろうね。僕んちの庭でしか採れず、若干の冒険も
ステンレス台に乗っていた卓上カレンダーを取ると、それをキッパータックに見せた。
「明日は
カレンダーに書き込まれた提供先の名称を見てもわかった。
「予定がいっぱいで、大忙しだね。たしかにすごく美味だった。でもボランティアで出しているなんて知らなかったよ」
ピッポはくるりと背を向け、明かり取りの窓の方を見やった。「そこまでやるのも僕なりに理由があるんだ。僕は四人兄弟の三番目で、一番病弱でおとなしくって、存在感のない子どもだったんだ。空気みたいなやつっていうのかな。それで、人間の
「僕の庭は十八位だったな。下から三番目だ」とキッパータックは言った。
ピッポは
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