第2話パン屋のバイトで女神様

 二、パン屋のバイトで女神様


「おはようございます。本日の予定は…」

 どこの会社でもやっている朝礼、正直言ってめんどくさい。

 自分も就職したら、毎朝朝礼に出なきゃいけなくなるんだろう。そんな事を思いながら聞いていた。

 今日の俺の作業内容は、決められた容量になるよう、計量カップでボウルに入れていく簡単な作業で、すぐに飽きてしまいそうだ。最初こそなれず遅れていたが、段々コツを掴み遅れていた分も取り返していた。俺がやったらこんなもんでしょと、多少調子に乗っていた。この調子に乗ってしまうというのが、俺の唯一の弱点と言っていいだろう。

「そこ、もっとしっかり、慎重に量って!

少しのミスで製品が台無しになるんだよ!」

 注意がすぐに飛んできた。何もこんなに大勢の前で言わなくてもいいじゃないのと思いながら、少しふて腐り気味に、ちゃんとやればいいんでしょ、ちゃんとやればという気持ちで仕事をしていたら、また、しっかり、と再度声が飛んできた。

 なんやかんやでやっと午前の仕事が終わった。また、早川に一杯食わされたか、そんな事を考えながらコンビニ弁当を持って食堂へ向かった。俺は何故か会社の食堂が嫌いだ。食事をするというより、させられている感が強い。田舎で祖父母が養鶏をしていた。鶏が狭いスペースに頭を出して餌を待っている。

餌が運ばれてくると、コツコツという音をさせて、一斉に食べ始める。その時の光景が浮かんでくるのか、食堂というものがなかなか好きになれない。

 空いた席に座りコンビニ弁当を食べようとした時、

「ここ、空いてますか」

 という声が聞こえてきた。

「どうぞ、空いてますよ」

(わざわざ横に来なくても、他に座るとこあったんじゃないの、あまり狭苦しのは好きじゃないんだよね。ま、後何時間か仕事をすれば、早川の頼みを訊いた事になるわけだし、ま、いいか)

 どんな人が横に座るのか、ふと顔を見てみた。見た瞬間(鐘?鐘が鳴ってる?自分の耳を疑った。)

 キンコンだかカンコンだかは覚えていないが、確かに鐘が鳴っていた。

 三角巾で覆われていたが、セミロングを少しカールさせたポニーテールの似合う、可愛い女の子だった。何を血迷ったか、俺は急に立ち上がり、女の子を見ながら

「俺、木村 薫 二十二歳」

 周りにもはっきり聞こえるような声で、その女の子に向かって言っていた。周りの吹き出す音や、クスクスと笑っている声や、視線に気付き、首まで真っ赤にしながら慌てて座った。

(また、やっちまった…これじゃ、彼女もできないか)

 自分に呆れながら弁当をたべよとしたら、

「私、佐伯 由紀 二十二歳」

 と聞こえてきた。

(ん?俺に言ってるの?)

 と、横を向くと

「よろしく」

 と返ってきた。

(超ラッキー)

 それからの俺は、締まりのない顔で、機関銃のように喋り、今迄で最高の食事時間をすごしていた。








 三、君は何処?


 楽しい食事の後には、また退屈なお仕事。でも、もう少し、頑張ればと手を進めた。そして終業のベル、やったー終わったー。

 着替えの最中に、俺は大事な事に気が付いた。彼女は?着替えを済ませ慌てて出口に向かい彼女を探したが、何処にも居なかった。

(やべえー連絡先を訊いてなかった。これじゃもう会えないじゃないか、どうしよう)

 後日、早川に頼んで再度バイトをさせてもらったのだが、彼女に会うことは出来なかった。

(あ~俺としたことが、連絡先を訊かなったなんて、馬鹿野郎だな)

 その後悔で毎日、毎日、ため息の連続で腑抜けのような生活が続いていた。

 そんなある日

(ん?確か彼女学校が青百合とか言ってなか

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