第2話
「あんっの野郎まじで送りやがったあああああああ!!!!しかもなんだよここ……!」
異世界に送られ、状況を把握するべく辺りを見渡すと、そこは……
「だだっ広い草原じゃねえかああああああ!」
草原だった。
「せめて街に送れよ!こっからどうやって生きていけばいいんだあああああああ!!!」
俺は、生きてきた中で一番と言ってもいいくらいの大声で叫んだ。
俺が送られた場所は雲一つない空とギラギラと照りつけ、水分を奪う太陽の下。そして、木ひとつない草原だった。
「ハァハァ‥‥マジでどうしよ。この近くって街とかあるかな‥‥ハァ‥取り敢えず動くか。ここにいても状況は変わらないしな‥」
こうして、田中実の異世界生活が始まったのだった。
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【探索1日目】
……異世界に送られ、探索を始めて30分くらい歩いたのだろう。一向に街が見えてこない。それどころか木や動物すらも見ていない。少し広すぎないだろうか。
……さらに30分くらい経っただろう。景色が全く変わらない。草原広すぎない?何?嫌がらせかな?
……もう歩き始めて2時間は経っただろう。太陽は今ちょうど真上にあり正午を迎えていた。………そう、暑さが今、頂点に達しているのだ。おそらく気温は40度くらいだろうか。
……喉が渇いた。
そう夏の気温の中、ここ2時間ずっと歩いていれば当たり前だが喉が渇くのだ。さらに昼飯を食べてないし、お腹も空いた。いつもならお昼を食べている頃だろうか。
…しっかし、本当に街が見つからない。というか川も木もない。
……俺早々に死ぬんじゃね?だから嫌だって言ったのに……
本当にあの駄女神は一体どこに送りつけてくれたのだろう。今度会ったら地獄に落ちてもいいから十発くらい引っ叩いてやろう。喉の渇きと飢えで心身が限界を迎えかける中、そう胸に誓うのだった。
………夜になった。いまだに街は見つからない。というかこの方角で合ってるのだろうか。目印がないため適当に前に前に進んでいたが、本当は前に斜めに横になど、知らず知らずの間に元の場所に戻ってきたりしたのではないのだろうか。そんな考えがよぎる。
……だめだだめだ!そんな事考えてたら気がおかしくなりそうだ!
「家に帰りたいなあ………」
ふと、口から漏れた言葉に俺は頭の中で何度もリピートする。今日はあの駄女神以外、誰にも合ってないし食事もできていないから、気が滅入っているのだろう。まだ異世界一日目だし、もう高校生なのにホームシックになっている。
……泣きそう…
【探索2日目】
夜が明け。日が登り始めた頃、目が覚めた。
「………全く寝れなかった…夜の草原暑すぎるだろ……。ちょっとは風あるかなあとか思ったりしたけど無風だったとは……。お腹空いたし喉渇いたなあ……。はあ、探索再開するかあ………」
これだけ暑いと本当にイライラするしクラクラする。イライラは暑さのせいだろうが、クラクラは脱水だろう。本当に早く水分を補給しなければまずい。
探索を再開するべく重い体を起こし、尻を地面からあげ、また探索を再開した。
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探索を再開して数時間、ついに……ついに………!
木を発見した!!しかも一本どこじゃない!何十、何百、も連なっている!
これは………!絶対に森だ!!!
森を見つけた俺は喜びのあまりどんどん森を突き進んでいた。木を見つけるだけでこんなに喜ぶ日が来るとは………
さらに奥に進むと……!
木の実を発見した!!久しぶりの食事だ!
久しぶりの食事は、今までで一番美味しく感じた。それと共に食事のありがたみも感じた。
いつも食べ物を作ってくれている農家の人たちに心の底から『ありがとう!!』と叫んだ。いや本当にありがとうございます。
木の実で水分を少し接種することができたとはいえ、やはり喉は渇いている。
水を求めてさらに奥にへ進む。
数十分経っただろう。ついに……!
川を発見した!
………なんか濁ってるけど……
本来なら濁った水なんて飲みたくないが生きるためだ仕方あるまい。腹壊した時は壊したでその時に考えよう。
俺は道中集めていた食糧を広げ、川の近にあった大きめの岩を尻の下に敷き、宴を始めた。
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食事を終え、喉を潤し、腹も膨れた頃、ふと冷静になり、ある事を思い出した。
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時は遡り数ヶ月か数年前。日曜日のある番組でコメンテーターか専門家か知らんがこんな事を言っていた。『森にうかつに入ってはいけない。熊などの危険な動物がいるからね』っと、
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……そういや森って熊とか出るらしい危なくない?
………oh my god……やっべえ、やらかしたあ……
しかし、気づくのが遅かった。後ろの茂みからガサガサという物音がする。
その瞬間、俺の体が命の危機を警告し、全身から汗が噴き出し、息が荒れ、心臓が未だかつてないほどにドクンッドクンッと大きな音を立てている。
しかし、食後だったからだろうか、頭はクリアで、比較的冷静に対処できる気がする。
後ろを振り向き、音を立てずにゆっくりと立ち上がり、後退る……
ドクンッドクンッ……
ドクンッドクンッ……
ドクンッドクンッ……
音がした場所から10メートルくらい離れたその時、大きな影がその茂みから飛び出してきた。
「うわあああああああああああ!?」
「きゃあああああああああああ!!!」
その影は女性のような高い声をあげながら、俺を襲ってきた。
その影の足か何かは分からないが体の一部が見事なまでに俺の股間にクリティカルヒットした。
声にならないほどの激痛の中、俺は後ろ向きに倒れてしまった……
「………………………」
また、あの時のように世界が揺れている。思考ができない。辺りがどんどん暗くなっていく。
……ああ、俺はまた死ぬのか……だから嫌だって言ったのに………
そこで意識は途絶えた。
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