太陽で世界を照らせ!!

しばごん

第1話


「あっはははははは!!ひーひー………ぷっ!うひゃゃゃゃゃ!!!」


 現在の時刻は午前10時00分、毎週日曜日に楽しみにしている番組『世界の果てまでいってらっしゃい』を見てドツボにハマっていた。

 いつもなら20時00分からリアタイで見ているが先週、部活の試合で疲れ、寝てしまったため、現在録画をしていたものを見ていた。


「ひーひーひーひー。ぶっっ!!ははははははははははははは!!!なんだこれ!?!ふっ!!面白すぎんだろ!あっはははははは!!!!」


「あれ?…なんだ急に?視界…が……」


 笑いが止まらない中、急に世界がねじれ出した。そして辺りは真っ暗になった……


────────────────────


 気が付き、当たりを見回すと、そこには、体育祭などでよく使われている机と椅子が並べられ、ホワイトボードが一つ置かれていた。そして机を隔てた向かい側の椅子に、女の人が座っていた。目が合うと彼女は話しかけてきた。


「ようこそ死後の世界へ。田中実さん、貴方は不幸にも、16歳という若さにして亡くなってしまいました。貴方の生は終わってしまったのです。」


 知らない人に唐突にそんな事を言われたのにあまり不思議に思わない。ここが死後の世界だからだろうか。

 ……ん?死後の世界って?えっ?はっ?えっ?死後の世界ってホントにあったの?じゃあ目の前にいるのは女神様なの?えっ?

 驚き、疑問に思った俺はもう止まっているであろう心臓をドックンドックン言わせながらも平静を装い彼女に質問をした。


「あ、あのーすみません、ここって本当に死後の世界なんですか?」


「えぇ、本当に死後の世界ですよ。」


 本当に死後の世界なのか………俺の死因ってなんだったんだろう。テレビ見てただけのはずなんだけど………


「すいません、俺の死因ってなんですかね?」


 「貴方の死因は………ぷっっ、あっはははははは!!笑い死にだって!!ぷっ、イヤ失礼、、ぷふっ!笑い死になんて、ふふっ、滅多に聞かないから!」


 笑い死に!??確かにドツボにハマって大笑いしてたけど!笑い死に!!?つかこいつ笑いすぎだろ人が死んでんだぞ!?


「笑すぎだろお前!人が死んでんだぞ!」


「いや、失礼。本当に滅多に見ないからつい………。ぷっ!」


 ………こいつ!!


「思って無えだろ!!」


「思ってます!思ってます!」


「おっほん!!そういえば自己紹介がまだでしたね。私は太陽神アマテラスと申します。以後お見知りおきを。」


 ………あんなに人が死んだの笑ってたくせに、こいつ女神だったのかよ!しかもアマテラスって日本の神じゃねえか。イメージと全然違うんだが!?詐欺だろこれ!??


「嘘つけ!!お前が神な訳あるか!」


「ええ!?本物ですよ!?信じてないのは笑ったからですか?そのことは謝りますから信じてください!じゃないと話ができません!」


「信じられるかボケ!!むしろ人の死を笑ったやつの何を信じろってんだ!!」


「すいません!すいません!本当にごめんなさい!ふふっ。……すいませんすいません!思い出し笑いを…ぶっ!」


 こんのやろう……全く反省してやがらねえ。……ぶん殴っていいかな。つか殴ろう。うん。そうしよう。


「わーー!!待って待って待ってください!拳を握らないで!!静かによってこないでえええ!!」


 なんか目の前のやつが言ってるが俺は歩みを止めない。

 そして、その自称女神の目の前で止まり勢いをつけるべく二歩下がり、拳を構える。


「ねえ……冗談ですよね…?まさか神を殴ったりしないですよね?そんな事をしたら天罰が降ひますよ??ねえ…ねえってばあああ!??」


 ドゴッ!!バタッ!!


 鈍い音が会議室に響いた。


 その鈍い音の正体は………


 俺の拳と体が床に当たる音だった。


「ぷっ!あっははははは!!ははははははは!!」


「イッッッッ!!!」


 そう、俺は見事に空ぶったのだ。勢いをつけようとしたのが仇となり、足が絡まり、拳を振ったことにより体に回転がかかり、器用に、自称女神の目の前で倒れてしまったのだ。


「ぷふっ!!天罰よ!天罰!!!女神を殴ろうとするから天罰が下ったんですよ!!!」


 くっそお!!最悪だ。恥ずかしくて死ねる……。すでに死んでるけど……


 怒りより転んだ恥ずかしさが勝ったため、顔を赤くしながら座っていた席に戻る。


「しかし、あなた運がいいですね。殴ってたら地獄行き確定でしたよ。」


 おいマジかよ。空ぶっといてよかったー。

 しかし、恥ずかしいものは恥ずかしい。


「で?話ってなんですか?」


 今の一連の行動をなかったかのように俺は話す。


「今の話を逸らしたって無駄ですからね!でも、メインの話が進まないから今は触れないであげます。」


 クッソ……


「ひとまず、私を女神と信じてくれなきゃ話が進まないので信じてください!」


 仕方がない。信じたくないが話が進まないのは困るので信じてみよう。


 おっほん!と咳払いをすると話を始めた。


「田中実さん貴方には選択肢があります天国に行くか、生まれ変わるか、異世界に行くか、です。しかしこれは言えと言われてるので言っているだけで、個人的には異世界に行ってもらいたいです……理由をお話ししますと、現在、魔王と呼ばれる者を筆頭に魔王軍と呼ばれる組織が人類の土地を略奪しようと侵略を行っているのです。そして、その世界で死んだ人の大半がまあ、その、、魔王軍に殺されてるわけで、転生させようにも案の定あんな世界嫌だ!またあんな風に死ぬのは嫌だ!って怖がってしまい、このままでは赤ちゃんが生まれなくなり、、。さらに極めつけは魔王軍に魔物って後先考えないから生態系が壊れかけていて、星として、大ピンチなんです!そこで神総出でどうしたらいいか考えたのです。その結果『地球とかから若いうちに死んだやつとか送ればいいんじゃない?ちょうどライトノベル?なるもので流行ってるんだろ?ちょうどいいじゃん』ということになったのです!お願いします!魔王を打ち滅ぼし、世界を救ってください!あっ、もちろん即戦力になってほしいので体はそのままで、チート能力もお渡ししますよ?言語もお気になさらず、チートと同時に言語を理解できるよにしますから。」


 異世界転生!?そんなことができるのか・・・・異世界転生とチートという言葉に一瞬胸が弾んだ。しかも言葉も覚えなくていい!チート能力があれば活躍して、それはもうモテモテだろうし、富と名声が貰えるだろう。だが冷静になろう。天羽を倒せって言ってたから魔王はもちろん、その部下とも戦わないといけないんだろ?んでもって、チート能力があったとしてもそういった戦いで死ぬ可能性があるわけだ。………うん!天国に行こう!これ以上死ぬのはごめんだ。天国で下界でも眺めながら過ごすとしよう。


「すみません、天国に行きたいです!」


 俺の言葉を聞きアマテラス様は「えっ!?」っと言い驚いていた。驚き方的に今までここに来た人のほとんどが行ったのだろう。


「だって異世界ってモンスターとかいるんでしょ?いくらチートをもってしても戦って死ぬかもしれないんでしょ?しかも、よくあるじゃ無いですか。力が強大過ぎて恐ろしいから魔王討伐後人類に裏切られて殺されるみたいな。俺、死ぬようなことや、死ぬのは人生で一度でいいので。」


 俺は基本的に危険な事はしない事をモットーに生きている。まぁ、もう死んでるけど。そんな俺が一瞬、ほんの一瞬!だけ惑わされたが、死ぬ危険がある異世界には行けない。死ぬの怖いし。


「天国と言っても何もないですよ?仕事もなけりゃ娯楽もない。魂がふよふよ浮いてるだけの世界ですよ?ついでに言えば、生まれ変われば、生前の記憶は無くなりますし、記憶を持った状態で、異世界に転生する方がいいと思いますよ?」


 ふむ、そうなのか………なら生まれ変わろう!何もしないのは苦痛だしな。


「生まれ変わりでお願いします!」


 アマテラス様はまた「ええっ!??」と驚いていた。


 そんなに異世界転生以外を選ぶのはおかしいのだろうか。


 そして、アマテラス様は最終手段なのだろうか、上目遣いで言ってきた。


「あの〜異世界〜です、よ?今流行りの異世界転生ってやつ、です、、よ?沢山の人が羨ましがる『異世界』、『転生』、ですよ?」


 クソっ、こんな手段に出るとは、性格はともかく、容姿だけでいえば完璧だ。めちゃくちゃ可愛い。よっぽど異世界に行かせたいのだろう。少し気持ちが揺らいでしまった………


「そうですね、でも怖いので行きたくないです。」


 そう言った俺に、アマテラス様は上目遣いに+して涙を浮かべて言ってきた。


「人が苦しみ悲しんでいるんですよ?」


 くっ……可愛い!

 ………しかし救ってくれと言われた時に予想できてたがやっぱり苦しんでる人がいるのか……

 ………そう言われるとなー・・でも死ぬのはやだし………


「そう言われましても……じゃあ聞きますけど俺がモンスターと戦ったとして,死んでもいいと言うのですか?」


 アマテラス様は目頭を赤くし目を潤ませ縮こまり顔を下にむけて呟いた。


「そういう訳では………」


 そんな顔をされると罪悪感が凄いのですが・・・


「そんな顔をされても……さすがに二度も死にたくないので………」


「それなら………よいしょっっと!これを見てください!」


 と少し出ていた涙を拭き、人の頭くらいの大きさの水晶玉を出してきた。多分、俺を送ろうとしている世界なのだろう。その世界の一部分を見せてきた。


「これが今の異世界の現状です!民は魔王や魔物に怯えてくらし、騎士たちも戦いで疲労が蓄積されたり怪我を負ったりしているんです!これを見ても行く気になりませんか!?」


 ……うん………余計に行きたくなくなった………


「いやいや無理でしょ!?俺、死にたくないって言いましたよね!?めちゃくちゃ死にそうな所じゃないですか!?」


 ずっと行かないの一点張りの俺にアマテラス様は痺れをきらし、とうとう怒鳴ってきた。


「こっちも仕事でやってるんです!!!先輩の神が『とりあえず、死んだ若者全員異世界に送ってね、天国に行く手続きとか対応とかめんどくさいから、じゃないと上の人にあることないこと言いつけるから』って言ってくるんです!パワハラしてくるですよ!怖いんですよ!分かります!?分かったらさっさと行ってくださいよ!」


 ………完ッ全ッに!私情じゃねぇーか!人が苦しんでる云々のくだりとかはどこ行ったんだよ!


「完全に私情じゃねえか!!ただ自分が怒られるのが怖いだけじゃん!!何が『人が苦しみ、悲しんでる。』だっ!」


「人が苦しんでる云々の話は本当です!確かに私情はほんの少しだけ本当に少しだけありますが……」


 じゃあなんでどんどん声が小さくなっていってんだよ!!?


「とにかく!さっさと行ってください!」


「嫌って言ってるじゃねえか!」


 それから数分間に渡って言い争い……とうとうアマテラス様が強行手段に出てきた。


「ええい!もういいです!」


『門よ開け!』


 アマテラス様がそう叫ぶと俺の後ろに少し灰色がかった、がらも何もない門が出現した。異世界と通じている門なのだろう。


「おい!お前それでも神か?!そんな強行手段に出て!天罰が下るぞ!!」


 そんな俺にアマテラス様は……


「私は神なので天罰なんて下りませんー!寧ろ神に敬語を使わない無礼者にこそ天罰が下りますー!」


 などと、屁理屈を言っていた。


 おいおいマジかよ。しょっぱなから敬語使ってなかったし俺まずくね?


 そんな事を考えていると。とうとう門が開き俺は吸い込まれていく。そしてふと気がついた。うっそだろこの神、チートくれてねぇじゃん。


「待って!チート!チート!だけでも渡してくれーーーーーー!!!」


 アマテラス様は忘れてたとでも言いたそうな顔で「あっ‥」と言い、オロオロし始めた。そしてその様子を最後に俺は異世界へと送られた──

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