　不死鳥には炎の中で死に、再び誕生するという伝承がある。

　A073種においては事実であるが、H901種においては全く当てはまらない。

　H901種に関しては、火炎が発生する高温度帯ではなく、氷雪が長時間解けずに残るような低温度帯でなければ再生できない。

　また、成長も低温度帯においてのみ、ゆっくりとしたスピードで進む。

　このため、H901種は限られた地域でのみ確認できる。

　H901種から得られる血清、およびワクチンは効果が安定し即効性があり、副反応も少ない。

　このため、百以上の国家がH901種の飼育を目指しているが、成功に至っているのはわずか三カ国である。

　この三カ国においても、成長と生殖の緩慢さに頭を悩ませているため、H901種の血清、およびワクチンは非常に高価であり、これを巡って様々な争いが生じている。

　特に長期の独裁政権がある発展途上国においては、H901種のワクチンは噂があるだけでも政権内での激烈な対立へと発展しうる。

　事実、十二の内戦が上記のことがらを原因の一つとしている。

　これゆえに、国際議会ではH901種の医療利用を禁止する法案が出された。

　可決されるか否決されるかは、あと一時間後にわかるだろう。

　否決された場合、我が社の警備隊が突撃する予定だ。

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