第35話 ヤドカリ、母、夜
風邪を引いた佳代ちゃんはお母さんにお話を聞かせてもらっています。
お母さんが語る物語はどれも面白く、佳代ちゃんは次から次にお話をお願いするのです。
そのうち、夜になりました。
お母さんは掛け布団を佳代ちゃんにしっかりかぶせると、
「さあ、もう寝ましょうね」
「えー、ママ、もう少し聞きたい! 聞きたい!」
「九時になったら寝る約束でしょ? 我慢して、明日しっかり元気になれるようちゃんと休むのよ」
「でも……」
佳代ちゃんに寝る気配がないので、お母さんは短くため息を吐きました。
「そうね、じゃあ最後に一つだけよ」
「やったあ」
お母さんは話し始めます。
* * *
ある南の島にカ・ネフレンという悪い魔法使いが住んでいました。
どのくらい悪いかというと、言葉に尽くせないほどです。
とにかく、カ・ネフレンはみんなから怖がられるどころではすまず、困りごとの原因ですらありました。
みんなで力を合わせてカ・ネフレンを追い出そうとしたこともありましたけれど、たいていうまくいかなかったので、諦め気味になっています。
そこへガブリーという妖怪が現れました。
ガブリーは人間の姿をしていますが、もともとはヤドカリです。
海の神様からおいしいお魚を盗んだ罰として、人間にされてしまったのです。
人間の格好をしているだけなら問題はないでしょう。
しかし、ヤシの木を三つ縦に並べても足りないほど、とてもとても大きいのです。
その上、いつもお腹を空かせていて、島の大地さえ食べでしまうのでした。
ガブリーとカ・ネフレンという、この二人の悪党に島のみんなはおびえきってしまいます。
ここで、ドゥクドゥクという名の賢い精霊を呼び出すことにしました。
ドゥクドゥクはとても変な姿をしていて、普段は恥ずかしがって出てきません。
しかし、島のみんなが心からお祈りを捧げたので、ドゥクドゥクは知恵を出してあげることにしました。
まずドゥクドゥクはガブリーに言いました。
「カ・ネフレンの肉は食べるととても美味しいだけでなく、とても腹持ちがいい」
そしてドゥクドゥクはカ・ネフレンにも言いました。
「ガブリーの肉は食べるととても美味しいだけでなく、最強の魔法使いになれる」
ガブリーとカ・ネフレンはドゥクドゥクの嘘を信じ込み、お互いを食べようとしました。
そのためには、相手をやっつけなくてはいけません。
二人はお互いが死んでしまうよう呪文を唱えました。
カ・ネフレンが、
「ズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガ」
と唱えると、負けずにガブリーも、
「ダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガダズグガ」
と唱えます。するとカ・ネフレンも、
「ズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガズグダガ」
と、呪文を唱え……
* * *
お母さんが佳代ちゃんを見ると、彼女は寝てしまっていました。
あんまり呪文が長いので眠たくなってしまったのでしょう。
微笑んで、掛け布団をしっかりかぶせると、お母さんはストロングゼロ文学を読むことにしましたとさ。
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