第30話 鍾乳洞、コメディアン、結婚式

 えー、本日もお日柄が良く。

 まあこういう言葉の続きは他のお方々がおっしゃるんで、ワタクシ米出猪太郎こめでいたろうは別の話をば、いたしましょうかねえ。

 さてお集りの皆々様、本日が何の日かご存じで?

 おっ、そこの坊や、『結婚式!』だって!?

 うんうん、手をピシーッてあげてねえ、こうも正しい答えだされちゃあワタクシ黙らなくちゃいけませんや。

 とはいえ黙ってしまったら夕飯はコンビニおにぎり一個も買えやしない。

 ここは一つ、別の答えを出しましょうか。

 四月十八日は発明の日だと言われております。

 ああ、あとお香の日でもありましたねえ。

 おっと! 一つどころか二つ答えてしまいましたよ。

 こいつはワタクシ、尋常小学校に行ってくる必要が……。

 なに、坊や? 『尋常小学校ってなに?」って?

 それはお父さんかお母さんに聞きなさいよ。

 あっ、いやお父さんもお母さんも知らないか。

 ならお父さんのお父さんかお母さんか、お母さんのお父さんかお母さんかに聞きなさい。

 もしお父さんのお父さんかお母さんか、お母さんのお父さんかお母さんかに聞いてもわからないなら、お父さんのお父さんのお父さんかお母さんか、お父さんのお母さんのお父さんかお母さんか、お母さんのお父さんのお父さんかお母さんか、お母さんのお母さんのお父さんかお母さんかに聞きなさい。

 それでももしわからないなら、お父さんのお父さんのお父さんの……えっと、どうなりましたかや?

 お父さんの、お父さんの、お父さんの、お父さん。

 んで、そのお父さんの、お父さんの、お父さんの、お父さん、の、お父さんかお母さんか。

 それで……頭痛くなってきちゃったや。

 ええ、こういうとき祖父祖母、曾祖父曾祖母、曾々祖父曾々祖母って言葉を知っとけば便利なんですよ。

 なんで使わなかったのかって?

 そりゃあ、これからお話しする内容にもかかわってくるんですがね。

 ま、ともかく、ワタクシども、あっ、いけない、お客さまを『ども』なんて言ったら!

 あ、いや、失礼! そちらのご婦人、そう怒らないで!

 鍾乳洞みたいな口をお開けになってしまわれて!

 入れ歯が、入れ歯が外れそうですよ!!

 とっ、ともかくお鎮まりくださ……なんだ欠伸ですか、びっくりしました。

 ……えー。

 とにもかくにも、ワタクシたち人間……人間に限らず生きとし生けるものはすべてご先祖がおります。

 先ほどつらつら述べましたように、一人の人間には、そう、坊やも例外でなく、二人の親がおります。

 その親も人間であるなら一人につき二人の、合わせて四人の人間と交わりがあるのですよねえ。

 さらにその方々……つまり父方母方のご両親、つまり坊やにとってはおじいさん、おばあさんになる人たちも人間ですから、まあ人間じゃなかったら安倍晴明とかそういうことになるんでしょうけども、やはり一人に二人のご両親が。

 つまり、曾祖父曾祖母の、ひいおじいさん、ひいおばあさんの代には、十六人近くの人間が一人の人間を生む条件になってくる。

 こう、あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し話になってまいりましたが、ともかく!

 人は一人で生まれるという言葉があるものの、実際のところあなたは宇宙の中で孤独ではない。

 人間が生まれるには必ず何かの縁がある。

 それが必然か偶然か、それは神様仏様МCハマーしかご存じない。

 あっ、МCハマーは古いか。あと知ってるかどうかも怪しいな。

 ま、いいとして、孤独だと思うときはご先祖様を思い出してごらんなさい。

 そしてご先祖さまやご両親、まったくの他人でも優しくしてくれた人の手を握ったときの感触を思い出してごらんなさい。

 手と手を握るとどうなりますか。

 手のひらのシワとシワがくっつくでしょう。

 シワがシワとくっつく、シワとシワが合う。

 つまり、『シワ合わせ』、『幸せ』、そういうことなのですよ!

 ただ、関節と関節も一緒に合うことは忘れてくださいませ。

 関節と関節が合う、ふしふしが合う、『不幸ふしあわせ』、そういうことになったら困りますからね!

 お、それでは新郎新婦のご準備が整いましたので、皆様、後ろをご覧ください!

 

 

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