第27話 荒野、足、傘

 黒蓮高校ゲーム開発部は、文化祭に出すゲームの内容を何にするか決まっておらず、プレゼンテーション大会が催される運びとなった。

 先陣を切ったのは二年の戸次である。


「スキヤキ・ウエスタンをテーマとしたガンシューティングゲームです!」


 一斉に他の部員が眉根を寄せる。


「スキヤキ?」


 これに戸次は憤慨した。 


「イタリアで作った西部劇をマカロニ・ウエスタンって言うでしょ!? それを日本でやったやつ!」


「そうなん」


 けだるげに三年の臼杵が言った。そのまま、


「却下。ガンシューティングは去年やったので。別ジャンルを」


 戸次はショックのあまり口から泡を吐いて倒れた。

 彼女を放置したままプレゼンが進む。


「はい! 一年の大内です! 吉良吉影のような怪人になり、美しい人間の足を集めていくゲー……」


「そうなん、却下。このサイコパス。手よりばれやすそうだし」


 と、けだるげに臼杵が言った。

 大内はショックのあまり口から泡を吐いて倒れた。

 彼女を放置したままプレゼンが進む。

 次の発表者は中堅、二年大友である。


「えー、そのー、なんですか、相合傘を差してゆくゲーム、なんですけど」


「ノベルゲーム?」


 臼杵が尋ねた。大友が応じて、


「あ、いえ、パズルゲーム、です」


「そうなん」


「あ、あの、興味は……」


「それより。君のほうは自信あるの」


「あ、ないです」


 大友はさらっと言った。

 とたんに、


「アアッ!? ザッケンナコラー! 自信のないもの出すんじゃねえ!! 何だお前は!? 部費をドブに捨てる気か!? どんな覚悟だ!?」


 と、それまでけだるげだった臼杵がキレた。

 むっちゃくっちゃ怖い。

 大友は気絶し倒れた。

 臼杵は最後の一人を指さし、


「立花くぅん! 君は、どんなプレゼンをしてくれるのかい!?」


 と言った。応じる立花はプルプル震えつつ、


「あ、あの、何も考えられませんでした」


「……そうなん。正直でよろしい」


「……」


「じゃあ。どうするかな。バカゲーなミニゲーム集にするかな」


「ど、どんな……」


「今までのアイデアを全部乗せ」


「ええっ!?」


「操作はプレイヤーの想像力に任せる」


「えええっ!?」


 こうして臼杵の権力乱用により、黒蓮高校ゲーム開発部はバカゲ―を開発した。

 できたバカゲ―は黒蓮高校デバッグ部に贈られた。

 死んだ魚の目をしたデバッグ部部長は、三日三晩おそるべきバカゲ―をプレイし、生気を取り戻した。



 

 

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