第8話 月、歌う、店舗
【前回までのアフター・イン・ザ・ルナティックス】
人狼化妄想症に罹患した妹アリスを救うべく、ウォルターは嫦娥地区にある漢方薬局へ向かう。
しかし、そこにはウォルターに恨みを持つアウトロー、トントン・マクートが待ち構えていた。
トントン・マクートは機械の体と悪魔の体のハイブリッド化を果たし、これ以上無いかと思われるほど自己改造を終えていた。
ウォルターに勝ち目はあるのか。そしてアリスは救われるのか。
【本編Aパート】
「バン! バン! 蛮族! ヴァンダル族も大満足!」
「バン! バン! 蛮族! ヴァンダル族も大満足!」
「バン! バン! 蛮族! ヴァンダル族も大満足!」
「バン! バン! 蛮族! ヴァンダル族も大満足!」
「バン! バン! 蛮族! ヴァンダル族も大満足!」
騒々しい広告トラックが歌い走る。
しかし、ウォルターの心は静かだった。
トントン・マクートの強さはおそらく何倍にも、いや何百倍にもなっているだろう。
それがどうした?
一度は倒した相手。それも奥の手も見せずに叩き潰した相手だ。
奴に欠けているものはたった一つ。
肉体を強化したところでなんとなるわけでもない。
「シュコー……シュコー……」
トントン・マクートの呼吸音があたりに響く。
ウォルターの一挙一動を観察しているのだろう。
途端にニイッ、と口の端を釣り上げて、
「ディアーボルス・エクス・マキナ!!」
トントン・マクートは攻撃を開始した。
百万の拳がウォルターを襲う。
アスファルトの破片、コンクリートの破片、鉄くず、生ゴミ、猫だったもの、犬だったもの、ありとあらゆる破砕片が辺りに飛び散る!!
「アーギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!」
哄笑を上げて拳を振るうさまはまさに機械じかけの悪魔である!
おお、見よ! この地獄的メカトロニクスの凄まじい破壊力を!
「――それで終いか?」
「アーッ!?」
読者の方々に思い出してもらいたい。
先程、トントン・マクートが破砕した物体の数々を挙げた。
そこにウォルターだったものは含まれていたか?
否! 否である!
彼は敵の後ろに立っている。
「十四で上級祓魔師になった僕を舐めるな。機械と悪魔を組み合わせたのは悪くない。だが、それだけで僕を倒せるとでも?」
「シュコーッ! オノレーッ! シュコーッ! ヴォルダーッ!!」
「神は
『我が印を以て剣を打て。
我が敵を討ち滅ぼせ。
汝の敵を討ち滅ぼせ。
汝は許されている。
我によって、汝の行いによって。
我が印の剣を奮うがよい』
顕現せよ、祓魔剣フランマ!!」
叫ぶトントン・マクートが振り向いたその瞬間、ウォルターの高速祈祷が終わっていた。
燃え盛る炎の刃が既に敵を切り裂き焼き払っていた。
「!?!?!?!?!?!?」
「いつ、何が起きて、何が原因で敗けたのか、お前にはいつまでもわからない」
ウォルターの眼前には、既に完全な灰しか残されていなかった。
トントン・マクートの生命反応は既になく、死という現実が彼を包んでいた。
【CM】
「(ドアの開閉音)
『アリス、今日の夕飯は?』
『兄さん! 今日はビーフシチューよ!』
(謎の怪光線)
『やったー!!』
ウォルターも大好き! ホーエンハイムのビーフシチュー!!」
「『神は
君も今日から上級祓魔師!
祈祷書を持って悪魔退治だ!
『ウォルターの祓魔祈祷書』
ヴァンダインから!」
【本編Bパートはこのあとすぐ!】
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