君からもらった言葉

ハル

プロローグ

 朝、内山樹(うちやま いつき)はいつもの時間に勤務先であるS大附属病院の精神科の診察室で本日のスケジュールを確認している。

 S大附属病院は都内から最寄り駅まで30分、そこからバスに乗り換えて目の前のバス停まで10分という利便性があり、小児外科で最も有名な病院だ。そして、樹が務める精神科にはストレス社会の中で精神疾患を抱えた患者や、入院患者の精神面のフォローをしている。近年は社会的にストレスを抱えやすいのか、通院患者の数が増加の一途をたどっていた。

 3年前に精神科にそれまでいた激務の科から逃れたいという理由で転科をした樹は最初の頃はあまりの多忙に面を食らったほどだった。樹の他には彼と同い年の娘を持ち、精神科を創設してから樹が来るまで1人で患者を診ていた桐山美佐子(きりやま みさこ)教授のみだ。午前中から診察受付時間までみっちりと入った予約の他に、フォローを頼まれた場合は入院患者の元に赴いたりしていた。休憩は昼食と診察時間が終わり業務終了までの間だけだった。それまでは患者さんと会話をして彼らの心を診て最善のフォローを考える時間だった。それに戸惑いながらも患者とのコミュニケーションを図り関係を築きながら、樹は3年何とかやってきた。

 そして、樹は精神科医として4度目に入る梅雨が目前に迫っている。

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