みかん②

「運動しんけいいい人って、あこがれるの」

 まみちゃんは、私より勉強ができても、運動はダメだった。

 反対に、私は勉強ができなくて、運動ができる。

「私は、まみちゃんみたいに頭がよくなりたい」

 私が言うと、まみちゃんはちょっとだけ笑って、

「私なんか。全然悪いの。私なんか……」

 まみちゃんの目が少しだけくもった。

 そして、決意したようにこっちをまっすぐ見て言った。

「私ね、お姉ちゃんが一人と妹が一人で、三人姉妹なんだ。でね、私だけ、頭が悪いんだ」

 私はおどろいた。自分より頭のいいまみちゃんが、そんなことを思っていたなんて。

 しならくちんもくが続いた。


『私たち、気が合うね』

 まみちゃんが話しかけてくれた日に言われた言葉。まみちゃんも同じことを思っていたのか、ふふっと笑って、私たちは手をつないだ。

 こんなに気が合う子なんて、はじめてだ。

 幸せな日々。

 まみちゃんの、おかげだ。


「何してあそぼっか」

 今日は、私の家にまみちゃんをおまねきしてあそぶことになった。

 あそびが思いつかない。


「とりあえず、みかん食べようよ」

 私はみかんを二つもってきて、あそぶとき用のつくえに置いた。

「いただきます」

 私が手を合わせて言うと、まみちゃんもはっとして、私につづいて言った。

 二人でみかんの皮をむく。

 テレビでこの映像がながれたら、と想像してみた。


『さあ、二人がみかんの皮をむいています。はたして、どうなるのでしょうか』

 実きょうがながれ、二人がみかんをむいている映像がつづく。

『さあ、はやいはやい。この勝負では、速さ、きれいさが求められています』

 先にみかんをむきおわったのは、私。

『お! もうむきおわった。ただ、きれいさは、ざつなので減点されてしまいます』

 まみちゃんもむきおわった。

『なんということでしょう! あのきれいさといったら。ということで、スピードは少しおくれていましたが、勝者はまみさんです!』

 テーテテテテテテー!!

 そうだいな効果音がながれ、その番組にかかわった人の名前がスクロールされる。だが、それはいっしゅん! (人数が少なすぎ)

『みかん皮むき選手権。また来年、お会いしましょう!』

 実きょうしている人が礼をして、この番組は終了した。


 もうまみちゃんはみかんを食べおわってしまっていた。

「おいしかったです!」

 それだけ言って、まみちゃんは帰っていった。


 




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