幼稚園児と小学生が書いた小説。

ナノハナ

小学校 中〜高学年

みかん①

 お母さん、はやく帰ってきてよ。

 ずいぶん待った。はやくきて、と念じて今度は時計をみた。

 これはいくらなんでもおそすぎだ。

 私のがまんのげんかいを、母は知らないのだろうか?

「ただいま!」

 ドアの開く音ともに、母の声がした。

 げんかんまでむかえに行って、おかえりと声をかける。

「みかんを買いにいってたの。あなたの大好きな」

 母は手をにぎって、また手をひらいた。

 ひらいた手には、みかんがあった。

 母のこのようなわざは、まるでマジシャン。

「ありがとう」

 私は母からみかんを受けとった。

 私はげんかんからろうかを歩く。母が行ってきた買い物のバッグも、手にかかっている。

 ろうかをまっすぐ歩いて、目の前のドアを開けた。

 すぐ近くにあるつくえのところまで行き、席についた。

「いただきます」

「ねえ、知ってる?」

 豆しばか、どこからか声がした。

「私はだあれ?」

 ごめん、それ、私が一番わからない。

 何なの? この声の主はどこに?

「私は、みかん♪」

 さっきの声が、とつぜん歌声に変わった。

 ずいぶん楽しそうな曲だ。私もいっしょに歌いたくなるような。

「あなたもみかん♪」

 その歌を聞いて、私はどこかに向かって言った。

「この声は、まさか」

 自分でもわかる。びっくりしすぎて声がふるえている。

「みかん?」



「そうだYO わたしはみかんだYO」

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