143 異世界帰還者の胎動 08


「さあ! ついに始まります。クラン『王国』主催。最強女王杯異世界帰還者挑戦試合です。

 試合会場はここ、ドームトーキョー。

 実況は私、清野景樹。解説には北陸新潟を中心に活動するクラン『北風』のマスター・茶畠多喜次さんにお越しいただいております。

 まずは試合の流れの説明をしたいと思います。

 挑戦者は十二名。

 今回の主役である封月織羽はこの十二人全員と順番に戦うことになります。

 順番はこの後、くじによって決められます。

 試合形式はサドンデス。一日の合計試合時間はおよそ三時間。本放送時間内のみとなります。その時間内で最大で六戦、二日間をここドームトーキョーで行う予定になっております。時間をオーバーした場合にはまた後日、試合会場と時間を確保することになる予定です。

 また、封月織羽が敗北した時点で全ての試合が終了となり、勝者に賞金五百億円が渡されることとなります。

 試合会場内は大変危険な状態となるため、審判は安全な場所からカメラによって行われます。また、審判はクラン『北風』『太陽』『侍』から選出された方々によって行われております。

 試合のルールの説明となります。

 対戦相手に使用するスキルでの制限は原則ありません。

 武器、防具の制限もありません。

 ただし、観客にまで被害が及ぶような行為は禁止とされております。

 こちら、観客席は結界というもので守られております。透明であるため、素人の私にはあるのかどうかはわかりませんが、こちらに影響が及ぶと虹色に光るそうです。

 そうなった場合、審判から警告が下されます。警告が三回に及んだ場合は失格となります。また、結界を破壊することになった場合は即座に失格です。

 多少の出血で試合が止まることはありませんが、眼球、急所の破壊、四肢欠損などの重大な損壊に及んだ場合、試合は一時停止し、試合の続行を選手に確認することになります。選手が続行を望んだ場合、回復魔法によってそれらは癒されることになり、また同様の回復魔法を相手選手も受けることになります。

 ……スリリングなルールです。普通の格闘技では考えらえないことですね。

 まだ続きます。

 外部からの援助が許可されております。直接攻撃や回復系統スキルの使用、デバフと言われる対戦相手の能力を下げる行為は禁止されますが、バフ……味方の能力を向上させたり、能力を授ける行為は許可されています。

 相手が戦闘不能状態での追い打ちは禁止です。

 またこのルールの特性上、わざと戦闘不能状態を演出することも禁止となります。

 姿を消すスキルは10カウント以内のみで有効となります。

 勝敗の決定は相手の敗北宣言か、10カウントダウンによって決まります。

 ルール説明は以上となります。

 ショッキングな映像をお見せすることになる危険があります。そのための深夜枠放送でもあります。どうか、ご視聴中の保護者の皆さんには未成年者に対するご配慮をお願いいたします。

 では、挑戦者たちの登場です」


 というわけでドームトーキョーに十二人の挑戦者が集う。

 頑張って作った特製リング……リングっていうのかこれ? 形的には天下一武道〇の舞台みたいな感じだ。硬いぞ。

 ドームのグラウンド内には客を入れず、かなり広めに作った。

 余ったスペースには結界用の魔道具とか、観客向けのモニターとか、補助担当のサポーターが入る空間とかを設置しているので余裕はない。

 なるべく無人を心がけているのでカメラマンも観客席から撮るか、ドローンで頑張ってもらう。


 で?

 俺はどこにいるかって? もちろんこれから登場だ。

 舞台に並んだ挑戦者の前にドーンと玉座付きの【魔甲戦車】を召喚。秋葉原でブイブイ言わせたこいつの登場に観客席がどよめく。

 さすがに挑戦者連中は動じていない。

 そこに俺が降り立つ。別にドームの天井で待ってたわけじゃない。控室から【転移】してきたのだ。


「よく来た挑戦者の諸君」


 王錫っぽく改造したマイクを手にパフォーマンス開始だ。


「いずれも腕に覚えのある者たちばかりだろう。そしてその実力がこの俺を超えていると信じている者たちばかりのはずだ」


 そして俺はにやりと笑う。


「楽しいな。その過信をこれから次々と折ることになるのだから」


 おっとさすがにこの挑発には何人かが心動いた。

 殺気が広いグラウンドに満ちていく。

 不可視の気配に当てられて、勘の良い何人かが気分を悪くしている。

 うんうん。こんなところに来てるんだからそれぐらいはしてもらわないとな。


「トーナメントにして一人とだけ戦うのはつまらない。だから全員と戦うことにした。……いまからその順番を決めてもらう」


 俺の合図でラウンドガールな格好になってもらったクランの女の子に番号くじが入った箱を持ってきてもらう。

 仕掛け?

 箱そのものにはしてないよ。

 だけど、ラウンドガールが登場するタイミングは霧に指示してもらっている。

 もちろん、刎橋貴透はメインディッシュだ。

 二日目の最後に相手してやる。

 番組の枠は三時間取ってある。

 一日六人だから一人三十分……休憩とかCMとかも考えたら精々二十分ってところだな。

 そんなにいらないかもだけど、楽しませてもらおうか。


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