140(3,074歳)「王太子殿下と前魔王の両方から求婚される」
ってことでフェッテン様を連れて、魔王城の執務室へ【瞬間移動】。
「あっ、ママぁ!」
私の席――というかちょっと前まではルキくんの席だった、執務室の椅子――に座って携帯ゲームをしていたルキくんが椅子から飛び降り、私に抱き着いてきた。15歳相当の私の体によじ登ってくる。
【飛翔】を使えば一瞬で肩車スタイルにもなれるのに、わざわざよじ登ってくるのは、ルキくんなりのスキンシップだ。可愛い。
「――…」
そして、その様子を能面のような表情で眺めるフェッテン様……。
「……なるほど。だいたい、分かった」
冷たい声色で絞り出すフェッテン様と、
「ねぇママ、こいつ、だれ?」
フリーダムなルキくんと、
「なっ、えっ……!?」
突如現れた人族に対し、どう対処していいか判断しかねているリヴァイアさん。
「あー……リヴァイアさん、見ての通り私の身内なので心配ご無用。あと、もし手出ししようものなら、アデスさんならともかくリヴァイアさんなら瞬殺ですからね? この御仁は、私が【アイテムボックス】と【
マジである。
私の剣の養殖会場では、成長限界突破したアデスさんとほぼ互角に斬り結ぶレベルにまで成長していた。まぁパパンも同じくらい強くなってたけど。あれはもう、スキルとかレベルとかを凌駕した、『勝負勘』や『技量』ってやつだね。
ってことで、私が【軍勢ごとアイテムボックス】と【四天王や魔王すら
「つよいの、こいつ?」
「強いよぉ~」
無事肩車配置についたルキくんの手を撫でながら、答えてあげる。
「この人はね、私の未来の旦那様なの」
「『だんなさま』って何?」
「なっ!? 魔王様!?」
理解していないルキくんと、ショックを受けるリヴァイアさん。
「リヴァイアさん、魔王国のこともちゃんと汲んだ上でのお話です。口を挟まないと誓ってくれるのなら、話を傍聴してもらって結構です」
「ははっ!」
礼を取るリヴァイアさん。執務室の壁際へさささっと移動し、背景と化す。
「で、お前がルキとやらだな?」
しょっぱなから【威圧】全開のフェッテン様。
「ちょちょちょフェッテン様! 相手は生後2ヵ月の赤ちゃんが無理やり言語と知識を詰め込まれた見た目4歳児ですからね!?」
「あ、あぁ……すまん」
「ま、ママ……こいつ、何?」
フェッテン様の大人げない【威圧】に当てられ、肩車スタイルから転げ落ちて私の膝裏にしがみつくルキくんから、震える声。
「ええとね、この人はフェッテン様って言って、私の結婚相手なの」
「『けっこん』!?」
ルキくんが、『このよのおわり』って感じの顔で私を見上げる。
「僕もママと『けっこん』したい! ママと家族になりたい! こいつ、僕からママのこと盗るの!?」
とたん、ルキくんからとんでもない量の魔力が乗った【威圧】があふれだす!
ちょちょちょルキくん、【威圧】スキルなんて持ってなかったはず――って、あぁ、これは【闘気】の方か! にしても、LV1にしてなんちゅう威力!
執務室に暴風が荒れ狂い、置いてある書類やら調度品やら何やらがぐわんぐわん踊り狂っている!
「盗らない!!」
その時、フェッテン様がルキくんに対して、大声でそう言った。
とたん、ピタリと止む暴風。
「…………?」
ルキくんが、『妙なこと言ったら消し飛ばすぞ』的な視線をフェッテン様に向けながら、可愛らしく小首を傾げる――いや、状況が怖すぎて、全然可愛くないんだけれども。
「アリス、いやアリソンだったか――お前の『ママ』が、そう望んだんだ。私とお前は、『ママ』を取り合ったりはしない。私は、『ママ』の願いを決して
「――…」
ルキくんの魔力がだいぶ落ち着きを取り戻す。
「ただひとつ、順番は守ってもらう」
「……?」
「私が生きている間は、アリス――アリソンと『夫婦』でいるのは私だけだ」
「!?」
「だが同時に、アリソンはお前の『ママ』であり続ける」
「…………??」
だいぶ混乱してきている様子のルキくん。
「とにかく、これから数百年の間、アリソンはお前の『家族』だし『ママ』だ。それなら何も問題ないだろう?」
「……?」
ルキくんはしばし考え込みながらうんうんと首を傾げ、からのぉ、
「うん」
「「――ヨシ!」」
思わずハモってしまった私とフェッテン様。
ルキくん、可哀そうに……この一言が、禁欲地獄の始まりになるとも知らずに……。
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追記回数:551,551回 通算年数:3,074年 レベル:5,100
次回、最終回!!
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