139(3,074歳)「思わぬ解決策」
「アリスぅ……私も今世で他ならぬそなたにやられたからよくよく知ってるが、愛に飢えた子供を抱きしめたり一緒に寝たりしてデロデロに甘やかし、心酔させるやり方はホント趣味が悪いぞ!」
「でもでもフェッテン様、私もメチャクチャ悩んだんですよ!?」
「どのくらいだ!?」
「数十年くらい!」
「数十年んん!? ぉ、ぉぉおぉ……ほ、本当にメチャクチャ悩んでくれたんだな!」
あははフェッテン様、嬉しそう。
「あっ、そうだ一妻多夫は!?」
「えぇ……いや一応考えましたけど、嫌でしょう、それは」
「一夫多妻の逆なだけだろう。私はいいぞ!」
「ど、どんだけ……私が嫌ですよ。こ、こここ、子供ひとり産むのだって数年単位なんですよ?」
「じゃ、じゃあ【生命創造】でもうひとりのアリスを創る! 先ほどの報告の中に、魔王が人造物であるとの話があっただろう!? ルキから肉体付き【生命創造】の魔法を学べば、アリスならアリスのコピーを作れるんじゃないか!? 【魔力操作】や【光魔法】だってまだカンストしていないんだろう!? そこにアリスが【生命創造】した魂を入れるのはどうだ!?」
「それも考えました……けど」
「けどなんだ? オリジナルの方をもらえるなら私は嫉妬したりしないぞ?」
「お、おりじなるって……いや、感情論を抜きにしたリスクとして、もうひとりの私も【ふっかつのじゅもん】が使えるようになるわけです。現にアインスちゃんとツヴァイちゃん――フェッテン様を見守ってるAIボット人形ちゃんたち――も使えるので。
で、知能はあっても感情はないアインスちゃんとツヴァイちゃんなら『【ふっかつのじゅもん】は使うな』と命じればちゃんと聞いてくれますけど、感情ありのもうひとりの私だと、やむにやまれぬ事情でセーブ&ロードしちゃうかもしれない。実際私も、身近な誰かが亡くなって、衝動的にロードしたことは数知れずですから……。
それで、セーブ枠10の【ふっかつのじゅもん】持ちふたりがそれぞれ感情のままセーブ&ロードするとか、もう管理しきれませんよ。最悪私が私と対立でもしたら……」
「うぅぅぅ……確かに危険すぎる」
「でしょう? 国と国である以上、外交というか……利害の不一致は必ず起きますから」
「じゃあルキの方には感情なしのアリスを与えてやれば!」
「無茶言いよる……フェッテン様だって感情のないお人形と結婚なんてできないでしょう?」
「そうだな……すまん。いやしかしだな、いったい私が何百年、何千年前からそなたを愛し続けてるか、知ってるだろう!? こればっかりは感情の問題だ。
そうだ! いっそどちらかの国が併ご――」
「それ以上いけない!!」
慌ててフェッテン様の口をふさぐ。
「何てこと言い出すんですか王太子殿下サマ!!」
「……すまん、今のはさすがに失言だった。でもそれほどに、私はそなたを愛しているんだ、アリス」
あー……答えが出ない。
何が正解なのか、分からなくなってしまった。
「…………あっ!」
とその時、フェッテン様が何か思いついたような声を上げた。
「アリスとルキは魔力がカンストしていると言っていたな?」
「あ、はい。寿命がとんでもないことになってそう、とも」
「だったらルキには待ってもらえばいい!」
「……?」
「私が死ぬのを!」
「――あぁ!」
「私も養殖で相当魔力が伸びたが、アリスやルキには遠く及ばない。恐らくエルフや魔族並みに数百年は生きるだろうが、さすがにそこで天寿を全うするだろう。それまでは、アリスは夫婦の営みを私とだけ行う」
「ふ、夫婦の営み……ごくり」
「で、ルキとは形ばかりの結婚をしておき、そういうことは、私が死ぬか衰えた後に始める。どうだ? 早くに夫を亡くした未亡人が、第二の夫に嫁ぐようなものだ。これならアリスの心的負担にもならないんじゃないか?」
「お、おぉぉ……なんかアリな気がしてきました!」
こんな滅茶苦茶な案を『アリかも』と思えてしまう時点で、私やフェッテン様の時間や生死に関する感覚は、前々世の私や常人からは遠くかけ離れてしまっているわけだけど、それでも『私とフェッテン様の幸せをガマンする』か、『多数の魔族の不幸を見て見ぬフリする』かという究極の選択よりは大分マシなように思える。
「あとはルキくんがガマンできるかどうかですね」
「そこだな。けど聞いてる感じ、ルキがアリスに求めているのは家族や母親であって、異性ではないのだろう?」
「今は、ですが」
「そこはもう、のらりくらりとかわし続けてもらうしかないな」
「む、無茶を仰る……」
「最初に無茶を言ってきたのはアリスの方だろう!?」
「ひぇっ、ごめんなさい……」
「というわけで、ルキに会わせてもらおうか」
「えっ、会うんですか!?」
「私からも言い含めておきたい」
「お、お手柔らかに……」
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追記回数:551,551回 通算年数:3,074年 レベル:5,100
次回、フェッテン様 VS ショタ魔王!
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