138(3,032歳)「前魔王からの求婚についてフェッテン様にご相談」
悩んだ。
『魔の森別荘』でゲーム開発をしたり、狩りをしたりしながら数十年ほど。
こればっかりは人に相談できる問題ではなかったし、女神様に相談するのも筋違い。フェッテン様や陛下に話を上げるにしても、自分の気持ちや考えは整理した上で報告すべきことだ。
悩んだ。
フェッテン様と結婚したい私。
魔王国を無用な混乱に陥らせたくない私。
アフレガルド王国と魔王国を平和な状態に保ったままで天寿を全うせよ、という女神様からの指示。
ルキくんと私が結婚しなきゃ収拾がつかないという、リヴァイアさんの至極もっともな意見。
悩んだ。
数十年間悩み、いろんな案は出したものの、結局、答えは出なかった。
◇ ◆ ◇ ◆
「ということで、わたくし、魔王になりました」
陛下、フェッテン様、宰相様、パパンとママンディータと私のお
「「「「「――はぁっ!?」」」」」
あはは……まぁ、そういうリアクションになるよね。
「いやぁ、前魔王のルキくんを【
「なんともまぁ!」
陛下が引きつり笑いする。
「それと、魔力がカンストした私は、女神様でも分からないくらい長寿らしくて……」
「と、ということは!?」
陛下に対してうなずく。
「はい。終戦。無血開城。ゆうしゃはへいわをとりもどした! ってことになります」
「よくぞやってくれたぁああああ!!」
思わず立ち上がる陛下と、
「さすが父さんの娘だぁああああ!!」
感涙するパパンとママンとお守り組。あ、ディータは澄ました顔してる。
「やったなアリス!!」
そして隣に座るフェッテン様に抱きしめられた。
いつもならここで、フェッテン様吸いのひとつでもキメるところなんだけど、今は素直に喜べない。
「……アリス?」
そんな心境が伝わってしまったのだろう……フェッテン様が首を傾げる。可愛い。可愛いんだけど、重大な問題があるんだ。重大な、重大な問題が。
「じ、実は…………前魔王のルキくんと結婚しなくちゃならなくなったんです」
「「「「「……は?」」」」」
ポカンとした顔の一同と、
「……なん……だと……?」
血の気が引いたお顔の、フェッテン様。
うぅぅ……こんな話、したくない。したくないけど、しないわけにはいかない。
◇ ◆ ◇ ◆
「はぁ~……」
陛下の重い重いため息。
「事情は分かった。理屈も分かった。確かに儂がその宰相――レヴィアタンといったか――の立場なら、そなたに前魔王との婚姻を求めるじゃろうな。
【魔王】の称号と膨大な魔力を持ち、自国民を【
そなたも、魔王国の事情は汲んでやりたいと考えているのじゃな?」
「……はい。私が婚姻を拒んだがために魔王国で混乱が起きるというのは、ちょっと。多少の混乱はやむなしと考えるにしても、魔王国の『魔力至上主義』の実態を知ってしまい、そしてそれを止めることができる以上、放置するというのは……」
「甘ちゃんのそなたにはとてもできんじゃろうな。じゃが、他国の妃という立場から、国の根幹ともいえる根深い風習に手を入れるなど、どれほどの反発が起こるか分かったものではない」
「……はい」
「じゃから――」
陛下がちらりとフェッテン様の方を見て、
「後は感情の問題じゃな」
まったくの無表情で、目の焦点が定まっていないフェッテン様。
とてつもない悲しみと絶望が、【闘気】に乗って漂ってきている……。
「フェッテンとアリス以外は帰るぞ」
陛下の指示により、皆が三々五々と【瞬間移動】で消えていく。
「はぁ~……気持ちの問題、か」
フェッテン様がため息をつく。
「じゃあ気持ちの問題について確認するが、アリスはその前魔王――ルキ、と言ったか――のことをどう思っているんだ?」
「可愛い子供、って感じですね」
「じゃあルキは、アリスのことをどう思っている感じなんだ?」
「ぞっこんラブです。もう、私抜きじゃ生きていけない体になってますね」
「…………詳しく聞かせてもらおうか?」
目が据わったフェッテン様に促され、1週間に渡るルキくん攻略大作戦についてゲロる運びとあいなった。
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追記回数:551,551回 通算年数:3,074年 レベル:5,100
次回、フェッテン様大暴走!
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