132(3,032歳)「決闘」
そして運命の日がやって来た。
魔王城の一角にあるグラウンドっぽい空間で、私と魔王側の精鋭が相対する。
私の装備は、オリハルコンで編み込んだ鎖帷子の上に、魔王国で購入した野戦服。さらには胸部・肩・膝・脛・ひじ等の急所その他にもオリハルコン製のプロテクター。
首はノーガード。頭部と胴体が切り離されたら死亡判定ってルールだから。
で、剣はおなじみエクスカリバー! 成長限界突破のおかげで、【片手剣術】素レベル10 + 3の合計レベル13! 強い!
対する魔王軍――軍でもないが――は魔王、レヴィアタン氏以下32名。
配置を見る限り、王将・魔王、副将・レヴィアタン氏、3つの小隊? 分隊? って感じ。小隊――この国の軍のことはよく知らないけど、便宜上『小隊』と呼ぼう――はライ○セイバーによる剣士系と魔法銃っぽい武器を持った人、無手の人――恐らく何らかの魔法特化――が均等に配置されている。
そして、私たちを大きく取り囲む、【パーフェクト・ヒール】使い21名と、さらそれを取り囲む、治癒係への【
いやぁレヴィアタン氏、私の要望通り、この1週間で集めに集めてくれたらしい。すみませんねまったく。
さてこの戦い、いつもの私なら【敵集団ごとアイテムボックス】とか【首狩りアイテムボックス】とかを主体に戦うんだけど、その戦い方はどうも、VS アデスさんとその軍勢の時に魔物の『視界共有』越しに見られてるっぽいんだよね。
なので、それらの手を使うと私が【勇者】だと――少なくとも人族だと――バレる。だからフツーにエクスカリバーで首を狩って回る必要がある。
くれぐれも、相手の脳みそを傷つけないように気をつけないとね。万が一殺しちゃったら【ロード】するけどさ。
「じゃ、『魔法決闘』の前に【魔法決闘契約】書を交わすとしましょう」
【魔法決闘契約】書はこちらで用意するとあらかじめ言っておいた。
私が【アイテムボックス】から取り出した机の上に置いた【魔法決闘契約】書を、レヴィアタン氏がじっくりと精査する。
勝負内容は『武力勝負。頭部と胴体が斬り離された人は死亡したものとみなす』というもの。
そして勝者が得られるものは『敗者を従属させる権利』と記載している。
レヴィアタン氏がうなずき、魔王と私が【魔法決闘契約】書にサインする。
「お預かり致します」
審判役として連れてこられた、王都で一番武力と魔力両方に優れたベテラン冒険者さんが、【魔法決闘契約】書を受け取る。
机を【アイテムボックス】へ収納し、私は魔王陣営から少し距離を空けたところまで歩く。魔王とレヴィアタン氏は魔王陣営のど真ん中、みんなに守られるような位置に鎮座した。
「それでは――」
やや離れた上空で【飛翔】している審判役のひとりが声を上げた。
「――はじめッ!!」
【思考加速】1000倍、【闘気】全開、【未来視】オン。
フライングだと難癖つけられるのもイヤなので、合図の言葉をしっかり聞いてから0.5秒間待機し、こちらへ駆け出しつつある剣士組をじっくりねっとり【探査】する。
――ヨシ!
【闘気】を乗せたエクスカリバーをその場で3回振るう。次の瞬間、剣士組10名のうち3名の首が飛ぶ。
【片手剣術】LV11以降、【闘気】を衝撃波のように飛ばす、『飛ぶ斬撃』が出せるようになっちゃったんだよね!
初対面の時のアデスさんも使えてたそうなんだけど、魔力に限りがあることと、使うまでもないとの判断からお披露目はしなかったそうな。
って治癒役の人、治癒遅いよ1秒経過しちゃう!
【パーフェクト・ヒール】!
私の聖級治癒魔法により、首ちょんぱされた剣士3名の首から下が再生する。
当然すっぽんぽんだ。悪いね。
「治癒係の方々! 治癒魔法遅いですよ!」
いったん【思考加速】を切り、【物理防護結界】と【魔法防護結界】を前面に展開しつつ、大声でそう告げる。
数秒経ってから結界へ魔法銃の弾や魔法組のニードル魔法等がぶつかるが、その時にはすでに、私は【瞬間移動】で彼らの後ろにいる。
「後ろだ!」
【探査】が得意らしい人がそう叫ぶ。
ふむ。さすがに【思考加速】なしの舐めプは止めといた方がいいな、【思考加速】1000倍!
そしてエクスカリバーを4回振るう。魔法職っぽい人と魔法銃使い4人が首ちょんぱされ、私は彼らの上空へ【瞬間移動】。
0.5秒後、治癒役の【パーフェクト・ヒール】によって彼らが死なないレベルで再生し始めたことを見届け、【極大落雷】の威力を最小限にした非殺傷雷魔法【エリア・スタン】を眼下の人たちに叩き込む!!
――バチン!!
「ぎゃっ!?」
と、これは私の口から出てきた悲鳴。いつの間にか私が【魔法防護結界】で囲われてる!? 【エリア・スタン】で自爆したってことか。
だけど甘い! 【瞬間移動】でさっさと逃げるよ!
模擬戦場の隅っこの方に【瞬間移動】し呼吸を整えようとした次の瞬間、背後に生体反応! 【探査】すると剣を持った誰かが私の首へ強烈な一閃を浴びせようとしているところだった。
【瞬間移動】で逃げ――ってあれ!? 【瞬間移動】が発動しない! やばいやばいとにかくこの剣は受けないと!
エクスカリバーと左腕で首をかばい、切断はまぬがれたけど体を跳ね飛ばされた!
もう一回【瞬間移動】! 模擬戦場の上空への転移に成功。落ち着いて【探査】すると、先ほど私に一閃を浴びせかけたのはなんとレヴィアタン氏だった。剣もイケる口なのか。強いね!
そしてヤバいのは、さっき魔法の発動を阻害された謎の術。
魔法を阻害された場所の魔力反応を【探査】し、先ほどの感触を【おもいだす】しつつ【鑑定】!
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【魔封じ】
神級闇魔法。
思念を乗せた魔力を相手にぶつけることで、
相手の魔法の発動を阻害する魔法。
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神級ってことは魔王かレヴィアタン氏しか使えないと見た!
とりま魔王が使ったと仮定して戦おう。
眼下、魔王の方を見ると、無感情な魔王とバッチリ目が合った。
わざと大げさに手を掲げ、非殺傷の【ウォーターニードル】を生成すると、魔王の方から強大な魔力反応。そして脳裏に『ざりっ』という異音のようなものが響いたかと思うと、【ウォーターニードル】がただの水に変わって崩れてしまった。
ちょうど多数の魔法銃の弾や攻撃魔法が飛んできてるところだったので、【瞬間移動】でまた逃げる。
ふむ。やっぱり【魔封じ】の連発はできないようだね。
続いて、模擬戦場の至るところを魔王の【探査】が追いつかない速度で【瞬間移動】し続け、その間に【魔法防護結界】を張る。
そこからあからさまに魔王の目の前に【瞬間移動】!
魔王キュンは驚いたような表情をするものの、冷静に【魔封じ】を放ったらしく、私の【魔法防護結界】がボロボロと崩れ去る。そして、結界内であらかじめ練っていた【ウィンドカッター】は、魔王を護衛するように立っていた剣士さんの首を刎ねた。
――ヨシ!
やはり同時に2つ以上の魔法は阻害できないらしい。
なんてことをやってるうちに、また生存判定な方々の猛攻が私に殺到しつつあったので、【物理防護結界】を展開してから上空へ【瞬間移動】。
【物理防護結界】の方は阻害されたけど、それは織り込み済み。
そして上空から、大量の海水(塩抜き)を【アイテムボックス】から放水!!
眼下が大混乱に陥っている隙に、【フルエリア・探査】!
からのぉ、【フルエリア・アンリミテッド・
【探査】すると、魔王とレヴィアタン氏以外の戦闘員は魔力枯渇で全員気絶した。もちろん治癒係へ誤爆するようなマネはしない。
そして、大量の海水は地面に到達する前に【アイテムボックス】へ収納。
魔王の背後に【瞬間移動】すると、目の前にレヴィアタン氏が【瞬間移動】して来た。
エクスカリバーでレヴィアタン氏と斬り結びながら、魔王の目の前に無数の【アースニードル】を生成、猛回転させる。
魔王が眼前の【アースニードル】を【魔封じ】するのに手一杯になっている間に、私は【闘気】LV99&【片手剣術】LV13のゴリ押しでレヴィアタン氏の首を刎ねた。
さぁていよいよ本丸、魔王キュン4歳だ。
【アースニードル】への対処に手いっぱいで私のことに気づいていない魔王キュンの首筋へエクスカリバーを振るうと、
――ガィィィィイイイインン!!
首だけになったレヴィアタン氏が発動させたらしき【物理防護結界】に跳ね返される!!
ちょっとちょっと、首だけになった人は死亡判定だから仕事しちゃダメでしょ。
まぁいいよもういっちょ!
再び魔王の首筋に、今度は【闘気】をまとわせたエクスカリバーを叩きつけ、【物理防護結界】を叩き割り、そのまま魔王の首を刎ねた!
エクスカリバーを【アイテムボックス】へ収納し、ボールのように飛び上がろうとする魔王の首を両手でがしっと掴み、魔王とレヴィアタン氏へ同時に【パーフェクト・ヒール】。
レヴィアタン氏の裸体は見たくないので目をそらしつつ、私に吊り下げられる形の魔王キュン4歳のおへその下を思わず見ると、
「……あらやだ」
魔王キュンの魔王キュンが、恐怖のあまり縮こまっていた。
……か、可愛い。
男の子のを見たのなんて、1,500年以上前にディータをお風呂に入れてた時以来だよ。
……ん? あの時のディータは、おぼろげながら前世の記憶を持っていた。
記憶を持ちながらにして愛しい
今度聞いてみようかしら。
なんて考えながらニヤリと微笑むと、
「――ヒッ!?」
魔王キュンが悲鳴を上げた。
あらあらあら。そんなに怯えなくっても、悪いようにはしないから。
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追記回数:551,551回 通算年数:3,032年 レベル:5,100
次回、アリス、ショタ魔王の従魔化を試みる。
アリス「ぐふふふ……私は光源氏。そしてキミは紫の上」
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