130(2,999歳)「魔王に決闘をふっかける」
四天王筆頭、リヴァイア・ド・ラ・レヴィアタンに対するリアクションは、前回と同じようにした。
いや実際、店のドアを開けたらいきなりレヴィアタン氏がいて、未来を知っているにも関わらずマジビビりしたよ。
――そして、今。
私は魔王の目の前に
そして、魔王の手の中には【
首輪が嵌められ、次の瞬間、魔王――魔王様に対する強い強い尊敬の念が沸き上がり、魔王様のことしか考えられなく――
――嫌だ!
私の所為で血まみれのボロボロになっていたフェッテン様の笑顔を努めて思い出す。
バチンッという音ともに、【
「なっ……レジストされた、だと!?」
とたん、周囲の魔族たちがニードル系魔法などを生成して私に向けてきた!
「すみません!」
私は両手を上げて、
「抵抗するつもりはありません!」
「ほぅ……ではなぜ魔王様の【
私へ小型の杖を向けながら、レヴィアタン氏が聞いてくる。
「わ、分かりませんよ! 私の【精神耐性】と【精神力】が、魔王様の【魔法力】を上回ったからなんじゃないですか? 魔王様の直臣になったら、かなり自由意思を制限されるとも聞きますし……自由に生きたいなぁって思ったらレジストしちゃいました」
「余が魔法神様より賜りし【魔法力】を上回る、だと?」
魔王がその可愛らしい顔で眉をひそめ、
「素晴らしい!」
レヴィアタン氏が歓声を上げた。
「その力、ぜひとも魔王様のために尽くして頂かなければ! 改めてアリソン様、魔王様の直臣として働くお考えはございませんか? 何ならあなた様に四天王筆頭の座をお譲りしても良い。あなた様、私、ベルゼビュート、バフォメットの4人で、魔王様とこの国をお支えしようではありませんか」
さりげなくいなかったことにされる四天王最弱のアデスさん。アデスさん強いのに……。
「いやぁ、できれば今のようにゲーム開発とかITコンサルで好きに楽しく生きていければな、と。それにこう言っては何ですが、わたくし、選別の儀から逃げ隠れていた非国民ですよ?」
「それはご家族の方針であって、あなた様は選別の儀のこともご存じなかったのでしょう? もとよりこの国は『魔力至上主義』。素晴らしい魔力に加え、極めて優れた【精神耐性】と【精神力】までお持ちのあなた様は、ぜひともこの国のナンバー2の座に座るべきお方だ」
「うーん……」
「ならば『魔法決闘』といきましょう。よろしいですか、魔王様?」
「……ああ」
前回の時から思ってたけど、物事のほとんどはレヴィアタン氏が決めたり動かしたりしているっぽいね。摂政っていうのかな? まぁ魔王は4歳だから妥当なんだろうけど。
……うん? じゃあ私が節制を敷いてアフレガルド王国と講和結んだらゲームクリアなのでは? あーでも女神様からは『後顧の憂いがないよう、魔王を【
「アリソン様もそれでよろしいですね?」
もとよりこの国で、『魔法決闘』から逃げるのは日常生活も苦しくなるレベルの不名誉。逃げるという選択肢はない。
「はい。ですが私が負けた場合、そちらは私に何を望むので?」
「それはもちろん、魔王様の直臣として忠義を示し、四天王筆頭として勤めて頂くことです」
「でも魔王様は私を【
「不本意でしょうが、【奴隷契約】で魔王様の奴隷になって頂くしかないでしょう。奴隷にして国家ナンバー2……歴史に永遠に名を残すでしょうな」
「あ、あはは……なるほど。あと、『魔法決闘』の方法は私が決めてよろしいので?」
「無論です。挑んでいるのはこちらですので」
「そちらのメンバーはどなたになるんですか?」
「決闘の内容にもよりますが、魔王様と小生以下、魔法に秀でた貴族を全国からかき集める所存です」
「ふむ……じゃあ、ちょっと手荒い方法になりますけど、頭部破壊以外は何でもありの模擬戦はどうです? 頭部と胴体が一回でも離れた人は負け判定ってことで。こちらの陣営は私ひとりです。あとできれば【パーフェクト・ヒール】使いをたくさん用意してください。それと、【飛翔】と【瞬間移動】は解禁してください」
「……ずいぶんと自信がおありのようですが、ご自分が死ぬ可能性を考慮しておられないので?」
「あはは」
笑って、私は【闘気】を乗せた右の手刀で左手を斬り飛ばす。
「「「「「なっ――!?」」」」」
「【パーフェクト・ヒール】」
そして即座に生えてくる新しい手。
新しい手で、滞空中だった古い手を掴み、
「飛んだ血液と、手の中の血液をすべて【アイテムボックス】!」
自分の古い手をぷらぷらと見せびらかしながら、
「この通り、治癒魔法は得意なもので」
「「「「「――…」」」」」
レヴィアタン氏以下、血の気を失うお貴族様方と、
「良いな」
ただひとり、昏く微笑む魔王。
「そなたの力、人族殲滅の悲願のために、ぜひ欲しい」
◇ ◆ ◇ ◆
「ただいまぁ~」
「「「「「アリソン様!!」」」」」
魔王国のお店に戻ってきたら、心配顔のデボラさん、サロメさん、クロエちゃん、フォーメさんとベルゼネさんに出迎えられた。
「大丈夫でしたか!?」
代表でベルゼネさんが質問してくる。
「来週、魔王様と『魔法決闘』することになっちゃいました」
「「「「「えぇぇえええええ!?」」」」」
絶叫する5人に、お客様や店員の皆さんが不審そうに見てくる。
「と、とにかく今は業務優先! 詳しい話はまた夜に!」
「「「「「ははっ!」」」」」
「じゃ、私はちょっと自室で用があるから。入ってこないでね」
5人はこのこの場の意味を知っている。
『アフレガルド王国に行ってきます』という意味を。
◇ ◆ ◇ ◆
「フェッテン様ぁ~!!」
王城、フェッテン様部屋横の『アリス部屋』に【瞬間移動】すると、フェッテン様が転がり込んできた。
「上手くいったんだな!?」
「おかげさまで! 途中ちょっと魅了されかかったんですけど、私にボコボコにされた死にかけのフェッテン様のお姿を思い出したらラブパワーでなんとかなりました!」
「言い方! まぁでも、良かったよ……本当に、本当に」
私はフェッテン様に抱きしめてもらいながら、フェッテン様の胸板吸いをキメた。
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追記回数:551,551回 通算年数:2,999年 レベル:5,100
次回、アリス、養殖のし過ぎで、ついにMPがカンストする!!
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